“マッチ”のいろいろな漢字の書き方と例文
ひらがな:まっち
語句割合
燐寸82.2%
早附木2.3%
燧火2.3%
摺附木1.6%
火燧1.6%
燐枝1.6%
燧木1.6%
寸燐0.8%
摺付木0.8%
仕合0.8%
焠児0.8%
憐寸0.8%
洋寸0.8%
燧寸0.8%
燧灯0.8%
蘭法附木0.8%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
軒を連らねて並んでいる燐寸マッチ箱のように小さい、そうして燐寸箱のレッテルのように俗悪に、でも大変綺麗に彩色された娼家が
赤げっと 支那あちこち (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
そうしているうちに、長崎屋が、地袋の棚から早附木マッチをさぐり出してきて蝋燭の火をともす。
顎十郎捕物帳:14 蕃拉布 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
その晩、また昨夜ゆうべのように、燧火マッチだけは枕頭まくらもとへ置いて火の用心にあかりは消して寝たんですが。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「はい、」と潤んだ含声の優しいのが聞えると、ぱッ摺附木マッチる。小さな松火たいまつ真暗まっくらな中に、火鉢の前に、壁の隅に、手拭のかかった下に、中腰で洋燈ランプ火屋ほやを持ったお雪の姿を鮮麗きれいてらし出した。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
火燧マッチ々々、と女どもが云う内に
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
通りがかりに、ちょいとほんの燐枝マッチを買いに入ったばかりで、あんな、恐ろしい、いまわしい不気味なものを、しかも昼間見ようとは、それこそ夢にも知らなかった。
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
遣らねえものは燧木マッチ賭博かけ椋鳥むくどりを引っかける事ばかり。
貧乏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「はあい。こうやってたきぎを切っては城下じょうかへ持って出ます」と源兵衛は荷をおろして、その上へ腰をかける。煙草入たばこいれを出す。古いものだ。紙だかかわだか分らない。余は寸燐マッチしてやる。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
敷島しきしまのさきに付けて吸ってみると、鼻から煙が出た。なるほど、吸ったんだなとようやく気がついた。寸燐マッチは短かい草のなかで、しばらく雨竜あまりょうのような細い煙りを吐いて、すぐ寂滅じゃくめつした。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
あああの中に大切の摺付木マッチを入れて置いたのだが——とあわて出したのは後の祭りであります。
大菩薩峠:25 みちりやの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
それを目の子勘定のように食卓の上に置き並べ、次に取り出したのが新しい摺付木マッチであります。
大菩薩峠:25 みちりやの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
また新橋組と工部と仕合いたることもありしか。その後青山英和学校も仕合マッチ出掛でかけたることありしかど年代は忘れたり。
ベースボール (新字新仮名) / 正岡子規(著)
知る人の区域もはなはせまかりしが近時第一高等学校と在横浜米人との間に仕合マッチありしより以来ベースボールという語ははしなく世人の耳に入りたり。
ベースボール (新字新仮名) / 正岡子規(著)
静にしたりし貫一は忽ち起きて鞄を開き、先づかの文をいだし、焠児マッチさぐりて、封のままなるそのはしに火を移しつつ、火鉢ひばちの上に差翳さしかざせり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
佐「甘糟、焠児マッチを持つてゐるか」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
あわてて憐寸マッチをくわえて煙草をこすろうとしたり—— in a word、どの影法師も困り入ってただやたらにうろうろしている——。
極めて小さな穴だが月野博士は注意してその中を覗いていたが、何を思ったか洋寸マッチを出して火を点ずるとパッと火が付いた。
月世界跋渉記 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
燧寸マッチの箱のようなこんな家に居るにゃあ似合わねえが過日こねえだまでぜいをやってた名残なごりを見せて、今の今まで締めてたのが無くなっているうしろつきのさみしさが、いやあに眼にみて
貧乏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
と黒門の年若な逗留とうりゅう客は、火のない煙草たばこ盆の、はるかに上の方で、燧灯マッチって、しずかいつけた煙草の火が、その色の白い頬に映って、長い眉を黒く見せるほどの内は薄暗い。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そうして蘭法附木マッチで袂に火を放って走りまわりましたならば、そこここから火事になりましょう。火薬庫も破裂しましょう。
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)