寸燐マッチ)” の例文
「はあい。こうやってたきぎを切っては城下じょうかへ持って出ます」と源兵衛は荷をおろして、その上へ腰をかける。煙草入たばこいれを出す。古いものだ。紙だかかわだか分らない。余は寸燐マッチしてやる。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
敷島しきしまのさきに付けて吸ってみると、鼻から煙が出た。なるほど、吸ったんだなとようやく気がついた。寸燐マッチは短かい草のなかで、しばらく雨竜あまりょうのような細い煙りを吐いて、すぐ寂滅じゃくめつした。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
何だかかんがえに落ちていっこうつまらなくなった。こんな中学程度の観想かんそうを練りにわざわざ、鏡が池まで来はせぬ。たもとから煙草たばこを出して、寸燐マッチをシュッとる。手応てごたえはあったが火は見えない。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)