摺附木マッチ)” の例文
そのまた中を合乗で乗切る心無し有難ありがたの君が代に、その日活計ぐらしの土地の者が摺附木マッチはこを張りながら、往来の花観る人をのみながめて遂にまことの花を観ずにしまうかと
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
「はい、」と潤んだ含声の優しいのが聞えると、ぱッ摺附木マッチる。小さな松火たいまつ真暗まっくらな中に、火鉢の前に、壁の隅に、手拭のかかった下に、中腰で洋燈ランプ火屋ほやを持ったお雪の姿を鮮麗きれいてらし出した。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
部屋は真のやみ。手探りで摺附木マッチだけは探り当てたが、洋燈ランプが見附らない。大方お鍋が忘れてまだ持ッて来ないので有ろう。「鍋や」と呼んで少し待ッてみて又「鍋や……」、返答をしない。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)