ばく)” の例文
又罪過は戯曲のみにあるべきものにして決して小説にあるべからずと言ふ者あらば、吾人は別論としてほ其誤謬ごびうばくせんと欲するなり。
罪過論 (新字旧仮名) / 石橋忍月(著)
その目的はただ古人の確定してばくすべからざるの論説を駁し、世上に普通にして疑いを容るべからざるの習慣に疑いを容るるにあるのみ。
学問のすすめ (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
その後で立った人は、短い顔と多角的な顎骨とに精悍せいかんの気を溢らせて、身振り交じりに前の人の説をばくしているようであった。
議会の印象 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
文三は何とばくして宜いか解らなくなッた、唯ムシャクシャと腹が立つ。風が宜ければさほどにも思うまいが、風が悪いので尚お一層腹が立つ。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
これを崇拝する者乳を与うるのだとばくし置いた(一九〇九年『ノーツ・エンド・キーリス』十輯十一巻、一五七—八頁)。
ばくするものは言ふ。芸者したものはいもあまいも知つてゐるはずなり。栄耀栄華えいようえいがの味を知つたもの故芝居も着物もさして珍らしくは思はぬはずなり。
矢はずぐさ (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
僕は君のばくした文の中にも、「清閑を得る前には先づ金を持たなければならない。或は金を超越しなければならない」とちやんとことわつてある筈である。
解嘲 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
しかし、貞盛の冷然たる横顔の微笑を見ると、さすがに、憤然と、曠野に燃えた怒気がそのまま口を迸って、貞盛のウソと、こしらえ事をばくし立てた。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ここにまた、唯物論者は必ず拙者の所見をばくして、「因果の規則は物質上に存するも、精神上に応用すべからず」
通俗講義 霊魂不滅論 (新字新仮名) / 井上円了(著)
さらに手塚君の説をばくさねばならん、手塚君は英雄は個人主義である、英雄は民衆を侵掠しんりゃくしたといった、侵掠か征服かぼくはいずれたるかを知らずといえども
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
西村先生、西先生の説をばくしていわく、皮、側、川のごとき三字同訓、その混雑を如何いかんせんと。しかれども文章、談話ともに前後照応あり。かならず一語にしてとどまらず。
平仮名の説 (新字新仮名) / 清水卯三郎(著)
ちょうど適切な例だからサラギ蛇穴の問題に触れるが、決して野村さんの説をばくする意味ではない。
和州地名談 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
何故あれを特に貰わねばならないか分らないなどと思う。そんな事を考えては、娵に貰う女はなくなるだろうと、自らばくしても見る。しかしどうも貰う気になられない。
ヰタ・セクスアリス (新字新仮名) / 森鴎外(著)
○前にもいふた南岳なんがく文鳳ぶんぽう二人の『手競画譜』の絵について二人の優劣を判じて置いたところが、或人はこれをばくして文鳳の絵は俗気があつて南岳には及ばぬといふたさうな。
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
君臣の関係をばくし四民の平等を唱え、主として経済上の進歩を急務としたるがごとし。
近時政論考 (新字新仮名) / 陸羯南(著)
世の中に貧乏人の多いのは生活必要品の生産が足りぬためだという私の説をばくして、貴様はそういうけれども、日本では毎年何千万石の米ができているではないかと論ぜらるるかたもあろうが
貧乏物語 (新字新仮名) / 河上肇(著)
ゲビスは、艦長の言葉をばくそうとして、思わず自分の席に立ち上った。
船医の立場 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
彼はプラトンの説をばくして真理を「天上」から「下界」におろし、「観念」から「実体」に現実させた。彼は実にレアリズムの創始者で、プラトンの詩的ロマンチシズムと相対の極を代表している。
詩の原理 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
こう言って清三は友の巧名心をばくした。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
これを要するに、予は子爵の説をばくせんと欲するにあらず。予はかえって、幽霊談の国家学会の論壇に上りたるについて、深く子爵に謝するところなり。
迷信と宗教 (新字新仮名) / 井上円了(著)
ばくす者を敵視するなよ。おそらくそちの意志ではなく、無根むこん風説ふうせつとわしは信じておるが、柳沢吉保に頤使いしされて、諸方に奔走するなどといううわさも聞く。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
志村知孝これをばくして曰く、この説童蒙のために注しつといえど奇を好める説なり、いわゆる宣王の〈羊を以て牛に易う〉といいしは孟子のいわゆる〈小を以て大に易え
しきりに幽冥の説をばくして、ついには自家固有の陰陽五行論をも喋々ちょうちょうするをむにいたれり。
物理学の要用 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
不折ふせつ鳥羽僧正とばそうじょうの画につきて言へりしに対して茅堂ぼうどうは不折の説をばくする一文を投ぜり。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
僕もまた君のばくした文の中に、「随筆は清閑の所産である。少くとも僅かに清閑の所産をほこつてゐた文芸の形式である」と云つた。これは勿論随筆以外に清閑は入らんと云つたわけではない。
解嘲 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
これを見て或人はわたしの説をばくして、現代の人が祖国の花木に対して冷淡になっているはずはないと言うかも知れない。しかしわたくしの見る処では、これは前の時代の風習の残影に過ぎない。
葛飾土産 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
連載中もよく本願寺関係のひとや篤学家などに社へやって来られて、堂々たる親鸞論を以てばくされるには閉口した。こと信仰にかかわるので読者の投書も痛烈だった。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「……千種どの。これに黙っていては、佞臣ねいしん乱賊の汚名を義貞が自認しているものになる。義貞も一文をばくして内覧に供えたい。そのような前例はどうであろうか」
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こめかみが太くなるほど、それに対しての感情は抱いているが、理をもってばくす才弁は持ちあわせていない。やはり正直者ともいえる部類のひとりに違いなかった。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、大声でばくしたてた。誰かとみれば、相貌端荘そうぼうたんそう魏郡ぎぐんの生れで、審配しんぱいあざな正南せいなんという大将だった。
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その人とりや、ものにとどこほらず、事にちやくせず、神儒しんじゆを尊んで神儒をばくし、仏老ぶつらうあがめて仏老を排す。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
介三郎はばくすことばに窮して口を閉じてしまう。そして、ここでまた、無言と無言の前にもどる。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
というのであって、それには勿論、主戦派の猛烈な論争も火の如くばくされたが、結局、一日戦えば一日呉の地が危なく見えてきたので、孫権もそれに同意する結果となってしまったのである。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ばくしてきたのは、汝南の程秉ていへいであった。孔明はおもてを横に振りながら
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、一方の学僧も、ばくし出すと、負けていない。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、それをばくする者もあった。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、千種の使者をばく
夏侯淵はこれをばくして
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
義貞・ばく
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)