郡山こおりやま)” の例文
「いや、さっき郡山こおりやまからのお使が一人見えたっきり、正午前おひるまえのうちは武者修行が三人ほどおいでになりましたが、直ぐお帰りでした」
大和やまと郡山こおりやまの旧城跡、三笠みかさ春日かすがと向き合いの暖い岡に、広い池を幾つも掘って、この中に孵化ふかする金魚の子の数は、百万が単位である。
(はがき)今日きょう越後えちご新津にいつを立ち、阿賀野川あがのがわの渓谷を上りて会津あいづを経、猪苗代いなわしろ湖畔こはんの霜枯れを圧する磐梯山ばんだいさんのすさまじき雪の姿を仰ぎつつ郡山こおりやまへ。
柿の種 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
江戸を出るとすれば池田家の誰が討たんにも限らぬし、郡山こおりやま名代の剣客、数馬の姉むこである荒木又右衛門が助太刀に出ているというから又五郎は危い。
鍵屋の辻 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
四時ごろ、一足さきに帰るというH君を郡山こおりやま行きのバスのところまで見送り、それから僕は漸っとひとりになった。
大和路・信濃路 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
奥州郡山こおりやま八幡宮はちまんぐう祠官しかん安藤筑前あんどうちくぜん親重ちかしげの子で、寛政二年に生れたらしい。十六歳の時、近村の里正りせい今泉氏いまいずみうじの壻になって、妻に嫌われ、翌年江戸にはしった。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
前夜、郡山こおりやまへ使いに行った藤田伝五は、怒りを眉に持って立ち帰って来たが、利三の顔を見るやいな云った。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
八重桜と紅葉もみじにしきと、はりぼての鹿とお土産みやげと、法隆寺の壁画、室生寺むろうじ郡山こおりやまの城と金魚、三輪明神みわみょうじん恋飛脚大和往来こいびきゃくやまとおうらい長谷寺はせでら牡丹ぼたんときのめでんがく及びだるま
福島、特に郡山こおりやまを中心に養蚕や製糸の業が盛であります。川俣かわまた羽二重はぶたえの産地として名を成しました。ですが主に輸出ものでありますから土地の暮しとは深いむすばりがありません。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
奈良県下の郡山こおりやまはわけてむかしから金魚飼育の盛んな土地で、それは小藩しょうはんの関係から貧しい藩士の収入を補わせるため、藩士だけに金魚飼育の特権を与えて、保護奨励しょうれいしたためであった。
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
紀州きしゅう郡山こおりやま彦根ひこねの四藩の力でもこれをしずめるには半月以上もかかった。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
汽車が郡山こおりやま駅に着きました。駅は、たったいま爆撃せられたらしく、火薬のにおいみたいなものさえ感ぜられたくらいで、倒壊した駅の建物から黄色い砂ほこりが濛々もうもうと舞い立っていました。
たずねびと (新字新仮名) / 太宰治(著)
まあ、貴方、郡山こおりやま(町の名)さ芝居が掛りましたぞえ、東京の名優、尾上菊五郎ちゅうふれ込みでない。外題は、塩原多助、尾上岩藤に、小栗判官、照手の姫、どんなによかろう。見たいない。
農村 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
暁霧咫尺しせきヲ弁ゼズ。既ニシテ西風一掃シ碧空ぬぐフガ如シ。近日ノ連雨、今仰イデ天日ヲ見ル。衆欣然きんぜんトシテまゆヲ開キ、覚エズ脚力精進セリ。郡山こおりやまいたルニ朝市マサニ散ゼントシテ日影食時ニ向フ。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
但木たじき三郎右衛門。秋保刑部あきうぎょうぶ。大山三太左衛門。郡山こおりやま七左衛門。荒井九兵衛。里見庄兵衛。境野弥五右衛門。志茂十右衛門。大条次郎兵衛。北見彦右衛門。横田善兵衛。剣持八太夫。上野三郎左衛門。
十七日、朝早く起き出でたるに足いたみて立つことかなわず、心を決して車に乗じてせたり。郡山こおりやま好地こうち、花巻、黒沢尻くろさわじり、金が崎、水沢、前沢をてようやく一ノ関に着す。この日行程二十四里なり。
突貫紀行 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
植田丹後守には子というものがない、ことし五十幾つの老夫婦のほかに、郡山こおりやまの親戚から養子を一人迎えて、あとは男女十余人の召使のみでにぎやかなような寂しい暮しをしております。
甚内の率いる小勢は、平野街道から龍田たつたへ出、その夜は、郡山こおりやまで夜営した。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そこで降りて、二時間プラットホームで待って、午後一時半、さらに少し北の小牛田こごた行きの汽車に乗った。窓から乗った。途中、郡山こおりやま駅爆撃。午後九時半、小牛田駅着。また駅の改札口の前で一泊。
十五年間 (新字新仮名) / 太宰治(著)
郡山こおりやまは金魚の養殖を以て名がありますが、品物としてはその近くに産する「赤膚焼あかはだやき」が世に聞えます。釉薬うわぐすりに一種のおっとりした持味がありますが、これも今出来のものは昔ほど味いを持ちません。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
東は桜井より初瀬にいたる街道、南は岡寺、高取、吉野等への道すじ、西は高田より竹の内、当麻たいまへの街道、北は田原本たわらもとより奈良郡山こおりやまへ、四方十字の要路で、町の真中に札の辻がある。
郡山こおりやま筒井順慶つついじゅんけいは、なお奈良にとどまっておるか、奈良を出た様子か」
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかもその筒井順慶は、これまた中国出陣の命をうけていて、居城郡山こおりやまを発し、装備された軍団をようして奈良まで来ているのだ。時をまたず、いつでもすぐその意志を行動に移す備えができている。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
お国は大和の郡山こおりやま、お高は十と五万石、茶代がたった二百文
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)