這入はいり)” の例文
ドレ其方そっちの床の間に在る其煙草入と紙入を取ッて寄越せ(妾)なに貴方賊など這入はいりますものか念の為めに見てあげましょう
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
早くお這入はいりといふに太吉を先に立てて源七は元気なくぬつと上る、おやお前さんお帰りか、今日はどんなに暑かつたでせう、定めて帰りが早からうと思うて行水を沸かして置ました
にごりえ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
この砦にお這入はいりになるや否や、城主の席も総ての9270
賤家しずがいえ這入はいりせばめて物ううる畑のめぐりのほほづきの色
曙覧の歌 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
「世の中に這入はいりかねてや蛇の穴」とは古人の句。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
見兼みかねたりけん客人には餘程草臥くたびれしと見えたり遠慮ゑんりよなく勝手かつてに休み給へ今に家内の者共が大勢おほぜい歸り來るが態々わざ/\おき挨拶あいさつには及ばず明朝までゆるりとねられよ夜具やぐ押入おしいれ澤山たくさんありどれでも勝手に着玉へまくら鴨居かもゐの上に幾許いくつもありいざ/\と進めながら奧座敷おくざしき差支さしつかへ有れば是へはみだりに這入はいり給ふな此儀は
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
はやくお這入はいりといふに太吉たきちさきてゝ源七げんしち元氣げんきなくぬつとあがる、おやおまへさんおかへりか、今日けふんなにあつかつたでせう、さだめてかへりがはやからうとおもうて行水ぎやうずゐかしておきました
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
知らない男のかただよ。お這入はいり下さいまし。
正太はくぐりを明けて、ばあと言ひながら顔を出すに、人は二三軒先の軒下をたどりて、ぽつぽつと行く後影、れだ誰れだ、おいお這入はいりよと声をかけて、美登利が足駄を突かけばきに
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
わたしに附いて窮屈な墓へお這入はいりなさい。
正太しようたくゞりをけて、ばあとひながらかほすに、ひとは二三げんさき軒下のきしたをたどりて、ぽつ/\と後影うしろかげれだれだ、おいお這入はいりよとこゑをかけて、美登利みどり足駄あしだつツかけばきに
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ざつとあせながしたらうでござんす、太吉たきちもおぶう這入はいりなといへば、あいとつておびく、おまちまちいま加減かげんてやるとてながしもとにたらいへてかま汲出くみいだし、かきまわして手拭てぬぐひれて
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)