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退引
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のっぴき
ふりがな文庫
“
退引
(
のっぴき
)” の例文
退引
(
のっぴき
)
はできませんから、寄るとさわるとこれが行末と、これからその結着ということに座談が落ちて行かないということはありません。
大菩薩峠:40 山科の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
ツル子が無理に引止めて戸若に夕飯の御馳走をしたのがキッカケとなって、二人は
退引
(
のっぴき
)
ならぬところへ陥込んでしまった。
衝突心理
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
気を長くして機嫌を取り取りとうとう
退引
(
のっぴき
)
ならぬ義理ずくめに余儀なくさしたのが明治三十九年の秋から『朝日』に連載した『
其面影
(
そのおもかげ
)
』であった。
二葉亭四迷の一生
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
そして、私にとっては長い間のような気がするが、実は僅かに昨日の午後からの短い間に、事情は他の方面で、
退引
(
のっぴき
)
ならない方へ進展してしまった。
或る男の手記
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
天才少女の名を
轟
(
とどろ
)
かした頃はシューマンとの間に美しい愛情が芽生え、それが
退引
(
のっぴき
)
ならぬ状態にまで生長していった。
楽聖物語
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
(著)
▼ もっと見る
と
退引
(
のっぴき
)
のならんお尋ねを迷惑には思いましたが、此の所で
一言
(
いちごん
)
申しておかなければ、殿様が自分を
他
(
ほか
)
の女中達のように思召して、万一父助七へ御意のあった時は
名人長二
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
最早
退引
(
のっぴき
)
ならなくなった。
如何
(
いか
)
に誠意を以て謝罪しても、此処まで出て了っては駄目なのは明かである。彼は自分の失敗を誤魔化す手段は只一つしかないと思った。
偽刑事
(新字新仮名)
/
川田功
(著)
彼女
(
かれ
)
はだんだんに暗くなってゆく水の色を眺めながら、夢見る人のように考えつめていた。
退引
(
のっぴき
)
ならない難儀を逃れるのには、
寧
(
いっ
)
そここを逃げて帰るに限るとも思った。
黄八丈の小袖
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
事理の
徹
(
とお
)
った
退引
(
のっぴき
)
ならぬ青年の問に、母が何と答えるか、美奈子は胸を
顫
(
ふる
)
わしながら待っていた。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
退引
(
のっぴき
)
ならず二階で、膝詰の
揮毫
(
きごう
)
となる処へ、かさねて、某新聞の記者、こちらは月曜附録とかいう歌の選の督促で一足
後
(
おく
)
れたが、おくれただけ、なお怒ったように、
階子段
(
はしごだん
)
を
白花の朝顔
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「それは団君も
退引
(
のっぴき
)
ならないね。僕の学校にも丁度そんなかゝり合いに遭った男がいるよ」
ぐうたら道中記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
こういう
退引
(
のっぴき
)
ならない場所で人に逢ったら、密入国したことがいっぺんに見ぬかれてしまう。なんとかして天幕を避けたいと思うが、東にも西にも道らしいものは見あたらない。
新西遊記
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
けれども、
退引
(
のっぴき
)
ならざるを得ない場合が、絶対に来ないとは誰しも断言出来ません。
仏教人生読本
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
殊にそれが、先祖の
位牌
(
いはい
)
を譲り受けた戸主にとっては
退引
(
のっぴき
)
ならぬきずなであった。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
恥どころか
退引
(
のっぴき
)
ならぬ証拠を握られるのだ。
一寸法師
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
お絹はわざと、お松に
猶予
(
ゆうよ
)
と口実を与えないかのように見えました。そうして
退引
(
のっぴき
)
させずにお松を自分の居間へ連れて来てしまいました。
大菩薩峠:15 慢心和尚の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
ところがこの頃
退引
(
のっぴき
)
ならない事情があって沼南に相談すると、君の事情には同情するが金があればいいがネ、と
袂
(
たもと
)
から
蟇口
(
がまぐち
)
を出して
逆
(
さか
)
さに振って見せて
三十年前の島田沼南
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
実は
退引
(
のっぴき
)
ならぬ二人の間の
蟠
(
わだかま
)
りの晩を、この
献立
(
こんだ
)
てで、一挙に片付けようとしたのも無理のない成行でした。
銭形平次捕物控:237 毒酒薬酒
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
ズバリと
度胆
(
どぎも
)
を抜いて頭ゴナシの短時間に
退引
(
のっぴき
)
ならぬところへ
逐
(
お
)
い詰めてしまわねばならぬ。
冥土行進曲
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
それが今夜はまだ見えないので、どうしたのかと思っていますと、唯今この速達便をよこしまして、
退引
(
のっぴき
)
ならない用向きが起って、今夜は残念ながら出席することが出来ない。
慈悲心鳥
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
ただ、大金で
退引
(
のっぴき
)
ならず身を
購
(
あがな
)
われ、国主という大権力者の前に引き据えられて是非もなく、できるだけその権力者の歓心を得ようという、切羽詰まった最後の逃げ道に過ぎないのだ。
忠直卿行状記
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
琴子は昏睡したまま、とうとう覚醒しなかった……兄は琴子を殺したのは自分だと思いこんでいるもんだから、君代に
退引
(
のっぴき
)
ならない弱点をおさえられて、思いどおりに振廻されることになった
肌色の月
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
「お玉さん、
退引
(
のっぴき
)
ならねえ行きがかりで、俺もその人を
匿
(
かくま
)
っているんだ、誰にも知られてはならないが、お前は別だから連れて来たんだ」
大菩薩峠:06 間の山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
平次は八五郎の後ろから、穏かな調子で——が
退引
(
のっぴき
)
ならぬ問いを投げかけました。
銭形平次捕物控:174 髷切り
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
(それにしても、必死的な
退引
(
のっぴき
)
ならぬ電報の文句を!)と、圭子は考え出した。
貞操問答
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
いよいよ
退引
(
のっぴき
)
ならない
羽目
(
はめ
)
になって、わたくしも困っているところへ、この二日の晩に宗兵衛のおかみさんが駕籠で乗り付けて来て、ここの家にあずけてある蝋燭をかえしてくれというのです。
半七捕物帳:47 金の蝋燭
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
退引
(
のっぴき
)
ならぬ義理もあるのだろう、乗りかかった船で、ぜひに及ばぬ羽目になっているのだろう、ここは一番、拙者が肌をぬいでやろうかな
大菩薩峠:19 小名路の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「はア。」
退引
(
のっぴき
)
ならず、新子は真実の先端を、チョッピリ夫人に打ち明けた。
貞操問答
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
平次は、これも祭の
扮装
(
なり
)
のままの長吉を、明神下の自身番に引入れると、暑いにも構わず、表の油障子を締めさして、こう当ってみました。物柔かいうちにも、
退引
(
のっぴき
)
させぬ手厳しさがあります。
銭形平次捕物控:017 赤い紐
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
それはそうでもあろう、貴殿の
諫言
(
かんげん
)
に従って思いとどまるのが道理かも知れないが、今はもう
退引
(
のっぴき
)
のならぬ事態になっている。
大菩薩峠:33 不破の関の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
平次の言葉は親切でしたが、
退引
(
のっぴき
)
させぬ強いところがあります。
銭形平次捕物控:036 八人芸の女
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
自分で
退引
(
のっぴき
)
ならぬ羽目に自分を追い込んで行くような気がした。
貞操問答
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
もしや、
心安立
(
こころやすだ
)
てに
面
(
かお
)
を合わせることが
緒
(
いとぐち
)
となって、
退引
(
のっぴき
)
ならぬこんがらかりに導いた日には、取っても返らないではないか。
大菩薩峠:27 鈴慕の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
昔なら、
退引
(
のっぴき
)
ならぬお声がかりの婚礼だぞ。どうだ、天野氏!
仇討禁止令
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
なるほど、
誂
(
あつら
)
えて
対
(
つい
)
にこしらえさせたと思われる装束が、早くもお雪ちゃんの枕許にちゃんと並んで催促している、こうなっては
退引
(
のっぴき
)
がならない。
大菩薩峠:35 胆吹の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
勝平は、熱心に、
退引
(
のっぴき
)
ならないように瑠璃子に云った。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
先方が、いよいよ恭謙であり、礼儀正しくあることによって、兵馬は自分で浅ましいと思いながらも、ここまで来ては
退引
(
のっぴき
)
のならぬことですから
大菩薩峠:18 安房の国の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
仮面
(
めん
)
を取ってしまいたいのだが、まずもって吉原の信心家へ招かれて、
退引
(
のっぴき
)
のならなくなったのが小面倒の起りです。
大菩薩峠:20 禹門三級の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
いや、こいつは本物だ——と七兵衛が
退引
(
のっぴき
)
させられぬ思いをしたのは、顔面の左の部分にちらと認めた傷のあとです。
大菩薩峠:38 農奴の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
その切込みはまだそんなに深くはありませんでしたけれど、
退引
(
のっぴき
)
ならぬ破牢の
極印
(
ごくいん
)
であることは確かであります。
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
狼狽はしたけれども、こうなってみると、七兵衛は退却する必要もなく、また
退引
(
のっぴき
)
はできない羽目になっている。
大菩薩峠:38 農奴の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
ああして、あの人が、ああ折入って頼んだのは、よくよくのことに相違ないが、自分として、ああまで言われてみれば、全く
退引
(
のっぴき
)
はできないではないか。
大菩薩峠:32 弁信の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
退引
(
のっぴき
)
ならずお目にかからなければならないようになったのも浅からぬ御縁というものじゃなくって——浅間の温泉では、ずいぶん失礼しちゃいましたわね。
大菩薩峠:36 新月の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「落ち行く先は、九州
相良
(
さがら
)
……というわけではないが、肥後の熊本まで、
退引
(
のっぴき
)
ならずお供を仰せつかりそうだ」
大菩薩峠:32 弁信の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
その挙動は、主人をして
退引
(
のっぴき
)
させぬ
手詰
(
てづめ
)
の
催促
(
さいそく
)
に見えます。ここに至るとお君はどうしても、すべての危険を忘れてムク犬を信用せねばならなくなりました。
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
その時、検視の役人が二三、こそこそと額を
鳩
(
あつ
)
めました。まもなく、右の小さい尼は、別な人に促されて、
退引
(
のっぴき
)
ならず
数珠
(
じゅず
)
を納めて縄をとりあげたものです。
大菩薩峠:32 弁信の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
こういう
退引
(
のっぴき
)
ならぬ場合の避難の意味で用いたひっかかりが、生涯この一人の女性の面倒を見なければならない負担として引きずられる、ということになってみると
大菩薩峠:38 農奴の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「第一、おれに食われるような娘じゃねえ、お邸奉公を勤めていた娘で、堅いことこの上なしだ、友達の義理で
退引
(
のっぴき
)
ならず預かってはみたものの、おれも実は心配なのだ」
大菩薩峠:10 市中騒動の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
その接近があまり急激に来たものですから、接近した時はもう
退引
(
のっぴき
)
することができません。見まいとしても、その全体を見なければならないところまで来てしまっていた。
大菩薩峠:31 勿来の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
当然、自分は、その安達の黒塚の鬼の
棲処
(
すみか
)
へ送りつけられて来たものだ。もう
退引
(
のっぴき
)
がならない。
大菩薩峠:37 恐山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
退
常用漢字
小6
部首:⾡
9画
引
常用漢字
小2
部首:⼸
4画
“退”で始まる語句
退
退屈
退治
退出
退嬰
退儀
退潮
退却
退去
退散