軽々かるがる)” の例文
旧字:輕々
鼓村さんは、自分だけでなら、どんなふうにも弾けるので、癖になってしまってて、困ると自分でこぼして、気持ちが軽々かるがるしたように
朱絃舎浜子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
全部がかねで出来ていたにも拘らず、小川を流れていくどんぐりの皿よりももっと軽々かるがると、り上がって来る磯波の上に浮かんでいました。
かなり裕福な商家であったが、次男坊で肌合の変っていた三四郎は、W大学の英文科をえると、教師になって軽々かるがる諸国行脚の途についた。
寒の夜晴れ (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
それでも革舟コラクルはただちょっと跳ね上って、弾機ばね仕掛のように踊り、鳥のように軽々かるがると向側の波窪へ降りてゆくのであった。
「よく人の説を聞いて軽々かるがるしく自説をはかないところが凡でない。」という。とにかく友人として交わってくれという。
廃める (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
海岸で知り合っただけの、どこのどういうひとかわからない外国人の招待などに、軽々かるがるしく応じないほうがいいということにみなの意見がまとまったこと。
キャラコさん:07 海の刷画 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
農をこの土からかの土に移すのは、霊魂の宿換やどがえを命ずるのである。其多くは死ぬるのである。農も死なゝければならぬ場合はある。然しそれ軽々かるがるしく断ずべき事ではない。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
どうか軽々かるがるしくおしんじなさらずに、一わたくしと法術ほうじゅつくらべをさせていただきとうございます。
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
米を主食という言葉は軽々かるがるしく用いられているけれども、今も全国を通じて米食率はおそらくは三分の二以内、わずか半世紀以前までは、それが五十%を少し越える程度であり
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
『ハハハハハ冬が過ぎればまた春になりますからねエ』と小山はさも軽々かるがると答えた。
小春 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
神職 しがくしに秘め置くべき、この呪詛のろい形代かたしろを(藁人形を示す)言わば軽々かるがるしう身につけおったは——別に、恐多おそれおお神木しんぼくに打込んだのが、森の中にまだほかにもあるからじゃろ。
多神教 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
考えて見るとくうと空とを孕んだ紙の層はいかに高くとも、実に軽々かるがるとしたものにはちがいない。だがあまりの不釣合いではないか。おお、紙の入道雲が歩行あるく歩行く、光り輝く紙の雪山が。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
そのうち余は日本の力士を大きく仁王におうの如く米国水兵を小さく小児しょうにの如くに描き、日本の力士が軽々かるがると米俵を両手に一ツ一ツ持上げたるさまを見て米国水兵の驚愕きょうがくせるさまを示したるものと
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
だが、しかし——鷲そのものは、蛾次郎がじろうを敵ともおもわず、また竹童をかたきとも思うようすもない。軽々かるがると、二少年を背にのせて、そのゆうゆうたるすがたを、南蛮寺なんばんじの空にまいあがらせた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ちいさな、というのに力を入れて、丁度いとの締まった箏を、軽々かるがると坐ったまま、ぐるりと筆規ぶんまわしのように振りかえた便次ついでに、かかえるようにして見せた。
朱絃舎浜子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
雀が小枝に飛びうつる時でもそうは行くまいと思われるほど軽々かるがると、ビレラフォンの傍におりて来ました。
なにをするのか。」とおもっていますと、もう一人ひとりぼうさんは、いきなりそこにすわっている三にんのうちの一人ひとりをそれは軽々かるがると、かごでもつるすようにつるしげて、にわにほうりしました。
人馬 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
と、ばかり軽々かるがる小脇に引っ抱えて馳けだした。
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
クイックシルヴァがこう言うと、彼の帽子がはねをひろげましたので、彼の首が肩から抜け出して飛んで行くかと思いのほか、彼のからだ全体が軽々かるがると空中に持上りました。
それをいた七にん大臣だいじんが、太子たいしさまともあるものがそんな軽々かるがるしいことをなさるとはといって、やかましく小言こごともうしました。太子たいしはそのはなしをおきになると、七にん大臣だいじんして
夢殿 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)