あと)” の例文
さうするとむきつたあとまめ陸穗をかぼかつしたくちつめたいみづやういきほひづいて、四五にちうちあをもつはたけつち寸隙すんげきもなくおほはれる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
其隙そのひまに私はかおを洗う、飯を食う。それが済むと、今度は学校がっこうへ行く段取になるのだが、此時が一日中で一番私の苦痛の時だ。ポチがあとを追う。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
常に馴れたる近隣の飼犬のこの頃は余を見ても尾を振りもせずあとをも追はず、その傍を打通れば鼻つらをさしのべて臭ひをぐのみにて余所よそを向く
二葉亭余談 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
そは土器表面し付け模樣もようの中に撚りを掛けたるひもあと有るを以て推察すゐさつせらる。撚りの有無とつる強弱きよじやくとの關係は僅少の經驗けいけんに由つてもさとるを得べき事なり。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
名所圖繪をひもときても、其頃はみち嶮に、けいあやうく、少しく意を用ゐざれば、千じん深谷しんこくつるの憂ありしものゝ如くなるを、わづかに百餘年を隔てたる今日こんにち棧橋かけはしあとなく
秋の岐蘇路 (旧字旧仮名) / 田山花袋(著)
「上様は可愛がってくださいました……紗のような天蓋が蔽うていて、忍びやかに匂う香料においものの、薄い煙りの漂う中で……でも上様のおかいなにも、そうして妾の腕にも、刺された銀の針のあとが、赤くついておりましたわねえ」
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
あとをつけてくのも知らずに。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
もいたましき傷のあと
小曲二十篇 (新字旧仮名) / 漢那浪笛(著)
で、母が来いと云うから、あといて怕々こわごわ奥へ行って見ると、父は未だ居る医者と何か話をしていたが、私のかおを見るより、何処へ行って居た。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
現に稍々やや大なる石材せきざいくだきて漸次ざんじ目的もくてき形状けいじやうとせしあとみとむるを得るなり。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
それまではお勢の言動に一々目をけて、その狂うこころあとしたいながら、我もこころを狂わしていた文三もここに至ってたちまち道を失って暫く思念のあゆみとどめた。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
何処へ何しにくのだか、分っているような、分っていないような、変な塩梅あんばいだったが、私は何だか分ってるつもりで、従弟いとこあといて行くと、人が大勢車座になっている明かるい座敷へ来た。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)