赤銅色しゃくどういろ)” の例文
「おめえさん方、鍾乳洞を見物に来ただか。」じいさんは日に焼けた赤銅色しゃくどういろの顔を、しわだらけにして、少年たちに呼びかけました。
妖怪博士 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
それをむりにかせようとする馬子まごも、かみはみだれ、かおから、むねへかけて、やはりあせがながれ、にやけたひふは、赤銅色しゃくどういろをしていました。
道の上で見た話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
それに体格もちがっていた。彼等の肌は赤銅色しゃくどういろで、手足もたくましかった。僕らは、老人もいたし若いのもいたが、概して虚弱な感じの者ばかりだった。
魚の餌 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
あの美しい緑色は見えなくなって、びたひわ茶色の金属光沢を見せたが、腹の美しい赤銅色しゃくどういろはそのままに見られた。
両手で頭をかかえながら、ふとあおむいた燕作の目に、そのとたん! さッと舞いおりた大鷲おおわし赤銅色しゃくどういろの腹が見えた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
赤銅色しゃくどういろに黒ずんだ面に、額から頬までの大創を浮ばせ、それに、笠を飛ばされて台ばかり紐で結えた面構え。
大菩薩峠:32 弁信の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
空には枝を張った松の中に全然光りのない月が一つ、赤銅色しゃくどういろにはっきりかかっている。彼はその月を眺めているうちに小便をしたい気がした。人通りは幸い一人もない。
文章 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
一人は四十を越した赤銅色しゃくどういろに顔のやけたりっぱな老練ろうれんな船のりだった。もう一人は、色の白い青年で、学校を出てからまだ幾月にもならないといった感じの若い技士だった。
幽霊船の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
男は股引ももひきに腹かけ一つ、くろ鉢巻はちまき経木きょうぎ真田さなだの帽子を阿弥陀あみだにかぶって、赤銅色しゃくどういろたくましい腕によりをかけ、菅笠すげがさ若くは手拭で姉様冠あねさまかぶりの若い女は赤襷あかだすき手甲てっこうがけ、腕で額の汗を拭き/\
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
彼は分け目もわからぬ蓬々ぼうぼうした髪をかぶり、顔も手も赤銅色しゃくどういろに南洋の日にけ、開襟かいきんシャツにざぐりとした麻織の上衣うわぎをつけ、海の労働者にふさわしいたくましい大きな体格の持主だが
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
涙はポロポロと、赤銅色しゃくどういろの頬を伝わって、土間の土くれを濡らします。
とまた、忽ちさるごとく甲板にじのぼってきては、同じ芸当を繰返くりかえすのでした。その中に、ぼくは片足の琉球人りゅうきゅうじん城間クスクマぼうという、赤銅色しゃくどういろたくましい三十男を発見し、彼の生活力の豊富さにおどろいたものです。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
顔の色は赤銅色しゃくどういろに染って眼が少しく据っていた。急に立上って
蒲団 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
艇長が、潮風にやけた赤銅色しゃくどういろの頬をほころばした。
秘境の日輪旗 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
赤銅色しゃくどういろの大きなふねが、海上に焔を投げている。
同じこげ茶色のソフトぼうの下に、帽子の色とあまりちがわない、日にやけた赤銅色しゃくどういろの、でも美しい顔が、にこにこ笑っていました。
怪人二十面相 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
二郎じろうは、あてなく、きゅうりの行方ゆくえおもっていたのです。すると晩方ばんがたそられて、かなたにはなつ赤銅色しゃくどういろくもがもくもくと、あたまをそろえていました。
遠くで鳴る雷 (新字新仮名) / 小川未明(著)
厳しいというのは、その尋常な田舎老爺いなかおやじとしてのこしらえに比較してみて言うことで、なるほど、赤銅色しゃくどういろに黒ずんだ顔面の皮膚の下の筋肉は鋭いほどに引締っている。
大菩薩峠:32 弁信の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
と思うと先生の禿げ頭も、下げる度に見事な赤銅色しゃくどういろの光沢を帯びて、いよいよ駝鳥だちょうの卵らしい。
毛利先生 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
藤六は困り抜いた様子で立竦たちすくみました。小屋へ引出されたせいか、髯はよく当っておりますが、三十前後のたくましい顔は、赤銅色しゃくどういろけて、正直そうなうちにも、純情家らしい眼が人をひきつけます。
汐焼した顔は、赤銅色しゃくどういろだ。彼は歩きながら、エヘンと咳払せきばらいをした。
浮かぶ飛行島 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ドンヨリした赤銅色しゃくどういろの太陽が、その水面へ反映はんえいもなく照っていた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
海にはその部落の赤銅色しゃくどういろの肌をした小わっぱ達がバチャバチャやっているだけで、都会からの客といっては私達二人の外には画学生らしい連中が数人
赤い部屋 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
なれない百しょうだな。」とおもって、かれも、まって、そのかお見上みあげますと、赤銅色しゃくどういろけて、角張かくばったかおは、なんとなく、残忍ざんにんそうをあらわして、あちらをにらんで
死と話した人 (新字新仮名) / 小川未明(著)
が、赤銅色しゃくどういろを帯びた上、本多正純ほんだまさずみのいったように大きい両眼を見開いていた。
古千屋 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
頭にはかぶとがのせられ、その下から、赤銅色しゃくどういろのお面のようなほおあてが見えています。
怪奇四十面相 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)