もろ)” の例文
おなごほど詰らんもんおへんな、ちょっとええ目させてもろたとおもたら十九年の辛棒や。阿呆あほらし! なんぼぜぜくれはってももう御免どす」
高台寺 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
「このお座敷はもろうて上げるから、なあ和女あんた、もうちゃっと内へおにや。……島家の、あの三重みえさんやな、和女、お三重さん、お帰り!」
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「そやけど、お京はんは、聯合組の親分衆や、会社のえら方に贔屓ひいきにして貰わんならんよってに、いっぺん逢うてもろとくが、ええのやがな」
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
「『湯豆腐』は日本にいるねん。カタリナは『湯豆腐』に姉さんにてた紹介状書いてもろうて、それを持ってひとりで行くねん」
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「八時頃から行きまへうかい。わたへが行きにお家へ寄つて、竹さんを連れて行きますさかい、竹さんに支度さして待つててもろとくなはれ。」
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
『繁ちやん、それアおも一緒にいち行きね。た方がいゝが、……土産物みやげもんどんもろちよつたちつまらん。それア行たほがよつぽづいゝが……』
金比羅参り (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
二年も三年も泣尽なきつくして今日といふ今日どうでも離縁をもろふて頂かうと決心のほぞをかためました、どうぞ御願ひで御座ります離縁の状を取つて下され
十三夜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
お前もお父つあんが苦しんでるのんを、傍から見てるのんはつろうてどんならんやろけど、言や言うもんの、わいにもわいの考へがあつて、来てもろたんやぜ。
聴雨 (新字旧仮名) / 織田作之助(著)
「知らん、阿呆なこといえ、お父つァんはもう嫁さんもろうてござるぞ、どうする、ん?」と叔父は覗き込んだ。
(新字新仮名) / 横光利一(著)
翌年韓原の戦に負け掛かった時、去年馬を食い酒をもろうた者三百余人来援し大いにちて晋の恵公をとりこにした。
「カヤノ、お前太郎兵衛たろべどんまでてな、おすえさんに一かせだけあげるせにいうてあともろてこい。フサエがな、売るもんを知らんとあげたんじゃせにいうてな」
(新字新仮名) / 壺井栄(著)
はじめ巡査が一通り原籍年齢などを取調べ、それを記入した紙片をもろうてからも、負傷者達は長い行列を組んだまま炎天の下にまだ一時間位は待たされているのであった。
夏の花 (新字新仮名) / 原民喜(著)
貴様の親切はかたじけないが、人に罪を背負しょうてもろうては此の文治の義理が立たない、控えてくれ、お役人様、恐れながら申上げます、全く此の文治の仕業に相違ございませぬ
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
村の人にもろうた蕎麦もあいにくに尽きてしまいました。木の実でよろしくば進ぜましょう。
くろん坊 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
日清にっしん戦争に琵琶びわを背負っていって、偉く働らいたり琵琶少尉の名ももろうたりしたが、なんやらそれで徹したものがあって、京極流も出来上ったが、あの人は、なんであんなに
朱絃舎浜子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
大事の切符をもろふて甲板に上り炊事場に行けば兵卒はあたりに満ち満ちて近よるべくもあらざりけり。この炊事場といふは二坪にも足らぬ処にて両方の入口は二尺ばかりあるべし。
従軍紀事 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
「おとう、あの仏壇ぶつだん抽出ひきだしに、県庁からもろうた褒美ほうびがあるね?」と尋ねました。
少年と海 (新字新仮名) / 加能作次郎(著)
お嬢様たちはいつもわたしたちはあすこが一番好きだから、死んだらあすこへ埋めてもらうのよ! と口癖のようにいってなさっただから、今度警察の許可をもろうて、とむれえ直すことにしただ。
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)
眼の前い十円札出して、紙に包んで、「いえ、いえ、いつもいつももろてばっかりしてまんのんに」と辞退するのんを
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「高いとこで寢るのが厭なら、あの蒲團を下へ敷いてもろたげるよつて、今夜は阿母さんと一所に寢よう、なア竹。」
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
桐野利秋きりのとしあきに囲われた妾とか、乃木将軍にツリ銭をもろうた草鞋わらじ売りとか、喋々すると同様、卑劣めいた咄だ。
「善は急げ、ちゅうことがあるけんなあ、気も変りやすまいけんど、使いをもろたら、じき、やって来た」
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
ここでの話やけどな、うちの恋人新聞記者やけど、月給四十円しかもろてへんねん。情けない話や。うちあんたの知ってるように月一円五十銭の回覧雑誌とってるやろ。
わが町 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
なにわし種々いろ/\な物をもろうのはいやでございます、どうかまア悪い奴と見たら打殺ぶっころしても構わないくらいの許しをねげえてえもので、此の頃は余程悪い奴がぐる/\廻って歩きます
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
別れた、女も別れる言うてますとうまく親父を欺して貰うだけのものはもろたら、あとは廃嫡でも灰神楽はいかぐらでも、その金で気楽な商売でもやって二人末永すえなご共白髪ともしらがまで暮そうやないか。
夫婦善哉 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
あんたも息みなはれ、定はんが居るらしいよつて、あの子に病人を番しててもろたらえゝ。
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
そのてい南方先生外国で十五年仙人暮しで大勉強し、ロンドン大城の金粟如来こんぞくにょらいこれ後身と威張り続け、大いに学者連にあがめられたが、帰朝の際ロンドン大学総長からもろうた金を船中で飲み尽し
「まあ、それにしたかて、一遍自動車帰ってもろうたらどうやねん」
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「ええか。この落語はなしはな、無筆の片棒いうてな、わいや他あやんみたいな学のないもんが、広告のチラシもろて、誰も読めんもんやさかい、往生して、次へ次へ廻すいうおもろい話やぜ。さあ、笑いんかいな。」
わが町 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
「当分蘆屋あしや中姉なかあんちゃんとこに置いてもろうてまんねん」
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
ええか。この落語はな、『無筆の片棒』いうてな、わいや他あやんみたいな学のないもんが、広告のチラシもろて、誰も読めんもんやさかい、往生して次へ次へ、お前読んでみたりイ言うて廻すおもろい話やぜ。さあ、続きを
わが町 (新字新仮名) / 織田作之助(著)