諒解りょうかい)” の例文
「そうだろう。きっとそうにちがいない。よろしい。お前の身分や考えはよく諒解りょうかいした。行きなさい。わしはムムネ市の刑事だ。」
私に諒解りょうかい出来ないのだが、何かその臭気や大ぜいの女の色彩や電燈の光が交って私の心をときめかすだけの役には立ったと思う。
めでたき風景 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
で、あなたとの御交際をこれ切りで打ち切らなければならないことも諒解りょうかい出来ました。しかしここで僕に少しく云わして頂き度い。
母子叙情 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
と云い交わす折の近いことを、殆ど互いに諒解りょうかいし合っていたから、この日は兄妹にとって心から待たれるものだったのである。
足軽奉公 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
今の世の中に、そんなバカなことが! とお笑いになることなく、私の意のあるところを諒解りょうかいして下さるならば、幸い、これに過ぎません。
棚田裁判長の怪死 (新字新仮名) / 橘外男(著)
はっきりそう云う諒解りょうかいを得たのではなかったけれども、何となく、永久に大阪に定住出来るように思い込んでいたのであった。
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
内蔵助は、吉田忠左衛門、小野寺十内、原惣右衛門などの長老と膝ぐみして、何か、自身の処置について、諒解りょうかいを求めていた。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼は諒解りょうかいに苦しんだ。彼の鼻の先に男や女がとおるのである。それにもかかわらず、誰もこっちを向いてくれない。こんななさけない話はなかった。
見えざる敵 (新字新仮名) / 海野十三(著)
お松が、与八に相談なしにする仕事はあっても、与八から一応、お松の諒解りょうかいを求めないということはないことになっている。
大菩薩峠:31 勿来の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
私は自分のアジトを誰にも知らせないことにしていたが、うえの人との諒解りょうかいのもとに一人だけに(太田に)知らせてあった。
党生活者 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
県として直接皆さんの御諒解りょうかいを得ておく方がいい、という事情もありますので、私共もこの席に顔を出さしていただくことになったわけであります。
次郎物語:04 第四部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
そういう人は、作者の意図がすぐ説明によって諒解りょうかいされることを喜ぶものである。私はそういう人にはくみさない。
俳句への道 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
(それにしても、このお金は母には思いがけない金なんだもの、私がとにかく借りて使っても、後で新子ちゃんの諒解りょうかいさえ得れば、それでいいんだわ)
貞操問答 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
だが、この誓言は、その後間もなく互いの和議を持って諒解りょうかいした。——二人が学校を出て(七郎丸は水産講習所)間もない頃の、印象の鮮やかな僕の記憶である。
吊籠と月光と (新字新仮名) / 牧野信一(著)
だが、その憂国の志を実行にうつすに当っては、自分らと志を同じゅうする幕僚将校の諒解りょうかいや支持はえたいとした。前でこりたから将官は避けて、佐官を選んだ。
いやな感じ (新字新仮名) / 高見順(著)
その時になって外人も備前藩の兵でないだけは諒解りょうかいしたが、しかしこの地の占領を解くことを断じてがえんじない。長州兵はやむを得ないで奥平野おくひらの村の禅昌寺ぜんしょうじに退いた。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
夫人がようやく自分の希望を諒解りょうかいして、それに答える言葉を考えているように見えたからであった。
かねふちから綾瀬あやせを越して千住まで通うのは、人力車でもかなり時間がかかる上に、雨や風の日には道も案じられるので、やがてお邸の諒解りょうかいを得て、引移ることになったのです。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
ぼくは周囲の女性達をみるなり、坂本さんが、ぼくにまかして、立ち去ったのが、すぐ諒解りょうかいできました。美醜びしゅうはとわず、とにかく、その頃の言葉で、心臓の強いお嬢さん達でした。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
そして家主にも諒解りょうかいを得てもらった上、問題の借家の台所口につくと、おかみさんを帰して、明智はただ一人、相手に悟られぬよう注意に注意して、ソッと屋内に忍びこんで行った。
人間豹 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
一応田舎いなかのハルミの叔父おじ諒解りょうかいをも得なければならないことだというので、その青年を加えて、間もなく三人でハルミの郷里を訪れ、ハルミの叔父や姉婿あねむこなどにも立ち会ってもらって
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
彼は諒解りょうかいした。女の歩いてきた方角には、公衆便所のある小公園があるのだ。
待っている女 (新字新仮名) / 山川方夫(著)
この点あらかじめ読者の諒解りょうかいを得ておかなければならないのである。
西鶴と科学 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
たとえば「如何なる意味の戦争も絶対に否定する」とか、「たとえ国亡ぶとも平和を」とかいう議論は、右に説くような宗教の立場なら諒解りょうかいできるが、しかし政治の立場では認めることはできない。
政治学入門 (新字新仮名) / 矢部貞治(著)
そしてとうとう、私達の最後の諒解りょうかいが成立した。
諒解りょうかいになりましたか
……話というのはこの事だ、貴公に打明けたうえなんとか父に諒解りょうかいを求めて貰おうと思って、幾度も口まで出かかったまま云いそびれていたのだ
(新字新仮名) / 山本周五郎(著)
と云うならそれもうなずけないことはないが、そうならそのようにあらかじめ親類の口やかましい方面へ相談をし、諒解りょうかいを求めるべきではなかったろうか。
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
正木署長はドクトルに事情を話して諒解りょうかいを乞うた上で、なおドクトルが夜の動物園で何をしていたのかを鄭重ていちょうに質問した。
蠅男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
何のために、欧羅巴ヨーロッパの諸国王が、また師父ワリニヤーニなどが、大名の子弟らを、さまで熱心に欧州見学に連れてゆくのか。文化的意志は諒解りょうかいする。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この作業にあたって、駒井が最初から、勘定奉行の小栗上野介の諒解りょうかいを得ているというのは、ありそうなことです。
大菩薩峠:28 Oceanの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
大体、浄るりというものが、何をしゃべっているのか、少しも諒解りょうかい出来なかったけれども、ただその音律の物悲しいものである事だけが私の心へ流れ込んで来た。
めでたき風景 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
今、急に季の事を申したところで、それを諒解りょうかいするまでには相当の年月を要するでありましょう。第一歳時記というようなものはフランスにはないのであります。
俳句への道 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
彼は、私が大体それを諒解りょうかいできても、ぐさま承認出来ないで黙っているのを見て取ってこう云った。
河明り (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
一日を廿八時間に働くということが、私には始めよくは分らなかったが、然し一日に十二三回も連絡を取らなければならないようになった時、私はその意味を諒解りょうかいした。
党生活者 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
彼は銀子との結婚について父の諒解りょうかいを得たいと思い、遊びすぎて金にもつまっていたので、手術料などで相当の収入みいりがありそうに見えても、いざ結婚となると少しまとまった金も必要なのだったが
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
モグラ下士は、その合図を諒解りょうかいして、相手の怪人たちに知られないように、おそるおそる、中尉の方へっていった。
二、〇〇〇年戦争 (新字新仮名) / 海野十三(著)
最近奥畑が妙子との結婚問題について諒解りょうかいを求めに一二回蘆屋あしやへ現れたこと、幸子が会って見たところでは、表面真面目まじめらしい態度を装っているが
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
だが旦那は依然として身動きせず眠っている、——平之助が習俗の異端者であり常識の謀反人であると申したわけを今こそ読者は諒解りょうかいされたであろう。
風流化物屋敷 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
この熱心な発明慾が周囲の誰にも諒解りょうかいされないのみならず、それに冷笑と詬罵こうばとが注がれたことは、古今東西の発明家が味わった運命と同じことでありました。
大菩薩峠:32 弁信の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
心の生活は深くたたえたるうしおであり、詩は表面の波であるともいえる。『句日記』は私の生活の表面に現れた波であって、善読せらるる方は、この波を透して私の生活をよく諒解りょうかいせらるるかも知れない。
俳句への道 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
追い追い弟子に跡を譲ることにして、自分は洋裁の方で立って行きたい、それには姉さん達の諒解りょうかいも得て、半年か一年ぐらい仏蘭西フランスらしてもろて
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「スミスさん、この、なぞのような文句を諒解りょうかいすることができないが、どうもこれはうっかり進めないらしいよ」
海底大陸 (新字新仮名) / 海野十三(著)
竜之助は、諒解りょうかいを得た意味にとって、その銀壺の水を傾け尽そうとして、早くも満腹になりました。
大菩薩峠:32 弁信の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
こう申上げれば、察しの早い読者には大助が悲運の公子であることを御諒解りょうかいなさるであろう。
若殿女難記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
その時になったら本家の諒解りょうかいを得るために雪子ちゃんにも一と骨折ってもらわなければ、———と、云うように話して雪子の顔に現れる反応をうかがったが
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
司令官もよく諒解りょうかいせられ、明日にでもなったら、頃を見て話をしてやれといわれた。——なあ、長谷部大尉。
浮かぶ飛行島 (新字新仮名) / 海野十三(著)
この故障というのは、もとより官辺から来たのではない、官辺は上に述べたる如き諒解りょうかいがある。
大菩薩峠:28 Oceanの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
杢助はほぼ諒解りょうかいした。村の娘たちの中にはそれとなくほのめかす者もいるし、もっと大胆に、積極的に誘惑する者もあった。およそ見当はついていたので、彼はふきげんにそっぽを向いて云った。
似而非物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
そして他日適当な時に、妙子母子を三好の方へ引き渡すのは勿論もちろんのこと、二人の結婚も承認しようし、本家の方の諒解りょうかいが得られるように尽力もしよう。
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)