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蝉時雨
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せみしぐれ
ふりがな文庫
“
蝉時雨
(
せみしぐれ
)” の例文
そのうち
毘沙門
(
びしゃもん
)
の谷には、お移りになりまして二度目の青葉が濃くなって参ります。明けても暮れても谷の中は
喧
(
かしま
)
しい
蝉時雨
(
せみしぐれ
)
ばかり。
雪の宿り
(新字新仮名)
/
神西清
(著)
落葉松
(
からまつ
)
の林中には
蝉時雨
(
せみしぐれ
)
が降り、道端には
草藤
(
くさふじ
)
、ほたるぶくろ、ぎぼし、がんぴなどが咲き乱れ、
草苺
(
くさいちご
)
やぐみに似た赤いものが実っている
浅間山麓より
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
鹿ヶ谷のふもとに来ると、そこは、夏木立と涼しい
蝉時雨
(
せみしぐれ
)
につつまれていたが、人の数は、
一
(
ひと
)
すじの山路に、
錐
(
きり
)
を立てる隙もないほどだった。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
椰子の葉を叩くスコールの如く、
麺麭
(
パン
)
の樹に鳴く
蝉時雨
(
せみしぐれ
)
の如く、環礁の外に荒れ狂う怒濤の如く、ありとあらゆる
罵詈雑言
(
ばりぞうごん
)
が夫の上に降り注いだ。
南島譚:02 夫婦
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
滝かと思う
蝉時雨
(
せみしぐれ
)
。光る雨、輝く
木
(
こ
)
の葉、この炎天の下蔭は、あたかも稲妻に
籠
(
こも
)
る穴に似て、もの
凄
(
すご
)
いまで
寂寞
(
ひっそり
)
した。
伯爵の釵
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
▼ もっと見る
つい一年前までは、この辺は墓原や成金壁なぞで埋められていて、夏なぞはせんだんの樹の
蝉時雨
(
せみしぐれ
)
の風情があるという、かなり淋しいところであった。
街頭から見た新東京の裏面
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
まして
蝉時雨
(
せみしぐれ
)
というような言葉で表現されている林間のセミの競演の如きは夢のように美しい夏の贈物だと思う。
蝉の美と造型
(新字新仮名)
/
高村光太郎
(著)
ある
年
(
とし
)
の
夏
(
なつ
)
の
初
(
はじめ
)
、
館
(
やかた
)
の
森
(
もり
)
に
蝉時雨
(
せみしぐれ
)
が
早瀬
(
はやせ
)
を
走
(
はし
)
る
水
(
みず
)
のように、
喧
(
かまびず
)
しく
聞
(
きこ
)
えている、
暑
(
あつ
)
い
真昼過
(
まひるす
)
ぎのことであったと
申
(
もう
)
します——
館
(
やかた
)
の
内部
(
うち
)
は
降
(
ふ
)
って
湧
(
わ
)
いたような
不時
(
ふじ
)
の
来客
(
らいきゃく
)
に
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
蝉時雨
(
せみしぐれ
)
は、一しきり
盛
(
さか
)
りになって山の
翠
(
みどり
)
も
揺
(
ゆ
)
るるかと思われる
喧
(
やか
)
ましさ、その上、あいにくと風がはたと途絶えてしまったので周囲を密閉した苫船の暑さは蒸されるようです。
鯉魚
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
「油坊主」「
蝉時雨
(
せみしぐれ
)
」——などというような
綽名
(
あだな
)
さえ、彼にはあったということであるが、しかし彼の
饒舌
(
じょうぜつ
)
は、もちろん天性にもあったろうけれども職掌からも来ているらしかった。
十二神貝十郎手柄話
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
ちょうど八月四日の正午、しんしんと降る両岸の
蝉時雨
(
せみしぐれ
)
であった。
木曾川
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
そのうち
毘沙門
(
びしゃもん
)
の谷には、お移りになりまして二度目の青葉が濃くなつて参ります。明けても暮れても谷の中は
喧
(
かしま
)
しい
蝉時雨
(
せみしぐれ
)
ばかり。
雪の宿り
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
そうすると、きっと
蝉時雨
(
せみしぐれ
)
の降る植物園の森の裏手の古びたペンキ塗りの洋館がほんとうに夢のように記憶に浮かんで来る。
二十四年前
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
囲いの中に、
喚
(
おめ
)
きや雑音の騒動がハタとやむと、後はまたもとに返ってソヨともしない森の静けさ——住吉村の奥らしく、ジーッと
気懶
(
けだる
)
い
蝉時雨
(
せみしぐれ
)
。
鳴門秘帖:01 上方の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
滝かと思ふ
蝉時雨
(
せみしぐれ
)
。光る雨、輝く
木
(
こ
)
の
葉
(
は
)
、此の炎天の
下蔭
(
したかげ
)
は、
恰
(
あたか
)
も
稲妻
(
いなずま
)
に
籠
(
こも
)
る穴に似て、もの
凄
(
すご
)
いまで
寂寞
(
ひっそり
)
した。
伯爵の釵
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
恐
(
おそ
)
らく
森
(
もり
)
の
蝉時雨
(
せみしぐれ
)
だって、ぴったり
鳴
(
な
)
き
止
(
や
)
んだことでございましょう。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
信長は云い添えて、なお彼らの
小屋掛料
(
こやがけりょう
)
まで施して去った。その行列の遠く降りて行ったあと、峠の
蝉時雨
(
せみしぐれ
)
は彼の慈悲に泣く
飢民
(
きみん
)
の声のようでもあった。
新書太閤記:05 第五分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
蝉時雨
(
せみしぐれ
)
が、ただ一つになって聞えて、清水の上に、ジーンと響く。
瓜の涙
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
また、折々の客を辞して、西山の門は、いつも変らない
蝉時雨
(
せみしぐれ
)
と、寂たる夏木立に委せられていたからであろう。
梅里先生行状記
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
例のように植木会社の
蝉時雨
(
せみしぐれ
)
の道を通って家へ帰って来た。誰か、奥へお客が来ているらしく、玄関や庭に打水などしてあって、家の中は
森閑
(
しんかん
)
と涼やかだった。
忘れ残りの記:――四半自叙伝――
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
一刻、軍馬もしずかに、
蝉時雨
(
せみしぐれ
)
の声のみがつつんだ。食と眠りが、秀吉の戦備であった。
新書太閤記:08 第八分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
信長のまわりから、近習がしきりに
噪
(
さわ
)
いでいる。
蝉時雨
(
せみしぐれ
)
もはたと止むばかりだった。当の信長は、馬頭観音堂の濡れ縁に
病葉
(
わくらば
)
や塵も払わず腰かけて、ひとりの小姓に金扇で風を送らせていた。
新書太閤記:05 第五分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
蝉
漢検準1級
部首:⾍
15画
時
常用漢字
小2
部首:⽇
10画
雨
常用漢字
小1
部首:⾬
8画
“蝉”で始まる語句
蝉
蝉脱
蝉丸
蝉表
蝉取
蝉鳴器
蝉口
蝉折
蝉捕
蝉丸神社