處女をとめ)” の例文
新字:処女
あゝげに聖なる處女をとめ等よ、我汝等のために饑ゑ、寒さ、または眠りをしのびしことあらば、今そのむくいを請はざるをえず 三七—三九
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
それは十八九にもなるでせうか、身のこなしの輕捷けいせふな、歎きのうちにも愛嬌と明るさを失はない、世にも可愛らしい處女をとめでした。
ばんだ象牙ざうげひたひ薔薇ばらの花、自分で自分を愛してゐる黄ばんだ象牙ざうげひたひ薔薇ばらの花、處女をとめよる祕密ひみつをお話し、僞善ぎぜんの花よ、無言むごんの花よ。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
その新しい草双紙で、ヴアレンチノや林長二郎のやうな美男が扮する、架空の人物を現實の夢にたづねて、いぢらしくも處女をとめの胸をときめかして居る。
宿命 (旧字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
優雅な處女をとめの指を思はす琴の爪——それを見たとき傳右衞門はすぐ、はつと、思ひあたつたことがある。
折々の記 (旧字旧仮名) / 吉川英治(著)
ロミオは汝等おぬしらをば寢室ねまへの通路かよひぢにせうとおおもやったに、わし志望おもひげいで、處女をとめのまゝでるのぢゃ。さ、つなよ。さ、乳母うばよ。これから婚禮こんれいとこかう。
容易に出ることが出來なかつた。吾儕の眼には種々いろ/\なものが映つた——激しく勞働する手、荒い茶色の髮、僅かにふくらんだばかりの處女をとめらしい乳房、腫物の出來た痛さうな男の口唇くちびる……
伊豆の旅 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
母上のところに來る婦人は、人の妻ともいはず、處女をとめともいはず、我が穉き詞にて、このあやしき好憎の心を語るを聞きて、いとおもしろき事におもひし、ひて我に接吻せむとしたり。
ふくよかに海は處女をとめの——
春鳥集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
處女をとめりて
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
處女をとめ
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
頭の樣子、髮形ちなど、手さぐりでも見ようと、頭巾に手をかけると、さうはさせまいと身を揉んだはずみに馥郁ふくいくとして處女をとめが匂ふのです。
またたとへば喜ぶ處女をとめが、その短處おちどの爲ならず、たゞ新婦はなよめの祝ひのために、ち、行き、踊りに加はるごとく 一〇三—一〇五
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
女同志をんなどうしの愛を思はせる眼付めつき薔薇ばらの花よ、百合ゆりの花よりも白くて、女同志をんなどうしの愛を思はせる眼付めつき薔薇ばらの花、處女をとめに見せかけてゐるおまへの匂をおくれ、僞善ぎぜんの花よ、無言むごんの花よ。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
處女をとめのやはらかな肌のにほひは
青猫 (旧字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
『海はげに處女をとめの胸か。』
春鳥集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
名のれ名のれしき處女をとめ
藤村詩抄:島崎藤村自選 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
處女をとめ
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
惡いとは言ひきりませんが、遠慮勝ちな處女をとめの心にも、義理の母を押しのけて、我意をふるふ妾のお小夜が憎く映つたのでせう。
わが幻の中にひとりの處女をとめあらはれ、いたく泣きつゝいひけるは。あゝ王妃よ、何とて怒りのために無に歸するを願ひたまひたる 三四—三六
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
名も知られずに悲しげな白樺しらかんば處女をとめで通す健氣けなげの木、わたしの悲しい心のよろこび
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
ああ まぼろしの處女をとめもなく
定本青猫:01 定本青猫 (旧字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
處女をとめぬるおほかたの
藤村詩抄:島崎藤村自選 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
平次は暫らく默つて見て居りましたが、誇りを傷けられた處女をとめに、何を言つてやつたところで、無駄だと思つたものか
處女をとめなる母わが子のむすめ被造物つくられしものにまさりて己を低くししかして高くせらるゝ者、永遠とこしへ聖旨みむねかた目的めあてよ 一—三
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
われは處女をとめとなりにけり
藤村詩抄:島崎藤村自選 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
しかし、家光の胸に錢形平次の名が印象深く記憶きおくされた事と、金色の處女をとめ——お靜の愛をしつかり掴んだことだけで、若い平次は滿足しきつて居りました。
彼は紅と黄の花を踏みてこなたにすゝみ、そのさま目をしとやかにたるゝ處女をとめに異ならず 五五—五七
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
良い男の伊之助、如才がなくて愛嬌者でも、純潔な處女をとめ心には、怖いものに映る何にかを持つてゐるのでせう。
さればこそ土は往昔そのかみ生物の極めて完全なるにふさはしく造られ、また處女をとめみごもりしなれ 八二—八四
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
あやめの話は、處女をとめらしくたど/\しいものでした。でも平次はたくみにその話を整理していくと、曲者の意圖いとが何處にあつたかが判るやうな氣がしました。
さてこの處を過ぐとてかの猛き處女をとめ沼の中央に不毛無人の地あるを見 八二—八四
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
は『御藥草』と書いた御用の唐櫃からびつ、力任せにふたをハネると、中からさんとして金色こんじき無垢むく處女をとめの姿が現はれます。
平次は側へ寄つて、その肩を叩いてやり度い心持でしたが、丸く肉付いた處女をとめの肩の、色つぽい線を見ると、ハツと驚いてその冒涜的ばうとくてきな手を宙に留めました。
金箔きんぱくを置いて一度は祭壇に載せた處女をとめの身體は、いづれあの廣間の何處かに隱してあるに相違ないでせう。
「あツ、ついあの」若い處女をとめらしく初めて眞つ赤になつた娘は、「あの、研屋とぎや五兵衞の娘糸と申します」
東向きの縁側と西向きの格子窓から、秋の光線は一パイに入つて、その氾濫はんらんする明るさの中に、むごたらしい處女をとめの姿が、血潮の海の中に死の凝結をして居るのです。
平次はそれに應へず、謹み深い態度で處女をとめの丸い胸から、水などは少しも呑んで居ないらしいほのかな窪みをもつた鳩尾みづおちのあたり——後ろへ廻つて背中をざつと見て
惱み拔いて居る樣子は、感情を隱すことの技巧をさへ知らない娘の顏に、雲の如く去來して、聲のない嗚咽をえつが、後から/\と、處女をとめの頬を洗ふ涙になつて居るのです。
白蝋のやうに、圓い胸、美しい陰影を描いた處女をとめの乳房の下に凄まじい傷口がパクリと開いて居ります。恐らく心の臟を一と突き、背につらぬくほどやられたのでせう。
處女をとめはハツと驚いた樣子で、八五郎の手をいくゞるやうにバタバタと驅け出しましたが、自分の家の貧しい入口に立つと、間の惡さうに路地の外へ出て行く八五郎を見送つて
うつかり餘計なことを言つてしまつたくいが、處女をとめ心をさいなんで居る樣子です。
四十三になる處女をとめお常の一世一代の恥を見盡すことになつたのでした。
平次は精一杯の柔かい調子で、この聰明さうな處女をとめを小手招ぎました。
お百合はさすがに處女をとめらしく顏を伏せます。