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蒼白
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まっさお
ふりがな文庫
“
蒼白
(
まっさお
)” の例文
職人は見るみる
蒼白
(
まっさお
)
になって、俯向いて唇を噛んでいたが、匕首を腹掛の丼におさめると、首を垂れたまましずかに出て行った。
顎十郎捕物帳:02 稲荷の使
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
と小春は襟も帯も乱れた胸を、かよわく手でおさえて、片手で外套の袖に縋りながら、
蒼白
(
まっさお
)
な顔をして、涙の目でなお笑った。
みさごの鮨
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「やっ!」「やっ‼」「来たっ※」悪漢共が
蒼白
(
まっさお
)
になってわめくとともに、再び恐ろしい
響
(
ひびき
)
がずずずずずんと響いた。
骸骨島の大冒険
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
夫と妻とは、
蒼白
(
まっさお
)
になりながら、黙々として相対していた。信一郎は、ポケットに入れてある時計が、何か魔の
符
(
ふ
)
でもあるように、気味悪く感ぜられ始めた。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
その与吉の声も、左膳の耳には入らないのか、かれは、
蒼白
(
まっさお
)
な顔をひきつらせて、凝然と樹蔭に立っている。
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
▼ もっと見る
一瞬ちらっと
狼狽
(
ろうばい
)
の色が頬を
掠
(
かす
)
めたが、それを掩い隠すように妻は大急ぎで叫んだ。たちまち
癇癖
(
かんぺき
)
が顔一杯に現れて、美しい顔は凄まじいまでに
蒼白
(
まっさお
)
になった。
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
何んてまあ変わって了ったんだろう? 彼は
蒼白
(
まっさお
)
の顔をして(
曾
(
かつて
)
はそれは活々としたピンク色を呈していたではないか。)
波斯
(
ペルシャ
)
模様の
氈
(
かも
)
を掛けた
長榻
(
ながいす
)
に深く身を埋め
西班牙の恋
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
山のような岩の大塊のかげに、
蒼白
(
まっさお
)
にぶるぶる顫えている幽霊のような顔が二ツ三ツちらちらしたばかりだ。「これだけしか生き残らなかったんだ!」
突嗟
(
とっさ
)
に井村は思った。
土鼠と落盤
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
入レナイドコロカ、机ノ上ニデモアッタカ、ナイフヲイツノ間ニカ抜イテ、
蒼白
(
まっさお
)
ニナッテフルエナガラ、突然私ニ斬リツケタノデス。私ニハソノ顔ガ悪魔ノヨウニ見エマシタ。
彼が殺したか
(新字新仮名)
/
浜尾四郎
(著)
「なんでしょう、あの怪物は?」夫人が
蒼白
(
まっさお
)
な顔をあげて、キッと僕の方を
睨
(
にら
)
んだ。
人造人間殺害事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
今度のことでは、君、専務や支配人、工場長こいつ等の方が
蒼白
(
まっさお
)
になってるんだぜ。
工場細胞
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
蒼白
(
まっさお
)
に——それは、奇怪な、ロボットの行為に、気味悪さを感じて、骨の髄から、恐怖に、身体を冷たくした瞬間——その、軟かい、だが、力強い手で、二人を、抱きしめてしまった。
ロボットとベッドの重量
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
踏みはだけた膝の上に
両肱
(
りょうひじ
)
を突張って、二三度大きく唾を
嚥
(
の
)
み込むうちに、みるみる
蒼白
(
まっさお
)
な顔になりながら、物凄い
眼
(
まなこ
)
で相手を睨み付けた。唇をわななかせつつ
肺腑
(
はいふ
)
を絞るような声を出した。
復讐
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
或
(
あ
)
る
日
(
ひ
)
一人
(
ひとり
)
の
男
(
おとこ
)
が
蒼白
(
まっさお
)
な
顔
(
かお
)
をして、
慌
(
あわ
)
てて
社
(
やしろ
)
の
前
(
まえ
)
に
駆
(
か
)
けつけました。
何事
(
なにごと
)
かしらと、じっと
見
(
み
)
て
居
(
お
)
りますると、その
男
(
おとこ
)
はせかせかとはずむ
呼吸
(
いき
)
を
鎮
(
しず
)
めも
敢
(
あ
)
えず、
斯
(
こ
)
んなことを
訴
(
うた
)
えるのでした。——
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
病後の新蔵は、駈けただけでも、
蒼白
(
まっさお
)
になって、息を
喘
(
き
)
っていた。
宮本武蔵:06 空の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
醜い汚い筋をぶるぶると震わせながら、
麸
(
ふ
)
を
嘗
(
な
)
めるような形が、
歴然
(
ありあり
)
と、
自分
(
おの
)
が瞳に映った時、宗吉はもはや
蒼白
(
まっさお
)
になった。
売色鴨南蛮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
樫田刑事が駈けつけて見ると、夫人の化粧室の外に、
蒼白
(
まっさお
)
な顔をして例の秋山という紳士が
突立
(
つった
)
っていた。
謎の頸飾事件
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
蒼白
(
まっさお
)
になったのは臼井金弥、歯がみをしたのは広太郎、眼をたれたのは舞二郎である。が、不思議にも平左衛門だけが、あわても驚きもしなかった。じっと文面を凝視した。
剣侠受難
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
そしてすぐそれを追うように、これもよろよろとしたイワノウィッチの
蒼白
(
まっさお
)
な顔が現れた。イワノウィッチは、しばらくは、ダシコフのびくびくする四肢を、見つめながら茫然と立っていた。
勲章を貰う話
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
池田は昂奮し、税所郁之進は
蒼白
(
まっさお
)
な顔で、腕を組み、うなだれている。
稲生播磨守
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
鴨田が
蒼白
(
まっさお
)
にブルブルと慄えながら呶鳴った。
爬虫館事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
小太郎は
蒼白
(
まっさお
)
な顔をして、突立った。
南国太平記
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
彼等も
蒼白
(
まっさお
)
になっていた。
土鼠と落盤
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
三人とも
蒼白
(
まっさお
)
になって眼を伏せた。——それを見ると志津子は堪り兼ねたように
海浜荘の殺人
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
と、その部屋を出て行った、古巣右内という若侍が、
蒼白
(
まっさお
)
な顔をして帰って来た。
剣侠
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
幸太郎は、忠次郎が
蒼白
(
まっさお
)
な顔をしながらさした杯を快く飲み干しながら
仇討三態
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
朝早くからひとりで
噪気
(
はしゃ
)
いで、煎餅の仕上げが済むと同時に、夕暮れ近くいそいそとして
自宅
(
いえ
)
を出て行ったが、それが小半時も経ったかと思うころ、
蒼白
(
まっさお
)
な顔に歯を喰い縛って裏口から帰って来て
早耳三次捕物聞書:02 うし紅珊瑚
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
然し喜多公の顔は緊張しきって
蒼白
(
まっさお
)
だった。
白蛇の死
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
蒼白
(
まっさお
)
になって、お町があとへ引いた。
古狢
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
明かしを立ててくだされとさっきお願いするや否や
蒼白
(
まっさお
)
にお顔の色を変え物をも言わず家を出られ何んとも答えてはくださらぬので、さては謀反のあの噂は根無し草ではなかったのかと
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
彼の
蒼白
(
まっさお
)
だった
面
(
おもて
)
は微弱ながら、
俄
(
にわか
)
に興奮の色を示したようであった。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
安は
蒼白
(
まっさお
)
になってそそくさと立ち上がった。
つづれ烏羽玉
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
すると良人はひどく
顫
(
ふる
)
えて
蒼白
(
まっさお
)
になったじゃありませんか! けれど変化したその表情は、すぐに良人の強い意志で抑えられてしまったのでございますね。良人は冷静にこう云ったものです。
沙漠の古都
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
彼の顔は、みるみる
蒼白
(
まっさお
)
に転じかけた、が彼の心のうちに、最後の一夜だけ、女を競争者から確保しようという要求が、烈々として火のように燃え始めた。彼は、
剣𣠽
(
けんは
)
を
砕
(
くだ
)
けよと、握りしめながら
勲章を貰う話
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
信一郎は、
蒼白
(
まっさお
)
になりながら、懸命に冷静な態度を失うまいとした。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
二人ながらガタガタ
顫
(
ふる
)
えている。そしてその顔は
蒼白
(
まっさお
)
である。
八ヶ嶽の魔神
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
「どうしやしたお神さん? 顔の色が
蒼白
(
まっさお
)
ですぜ」
善悪両面鼠小僧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
蒼白
(
まっさお
)
になった幹之介、突然小刀へ手をかけた。
任侠二刀流
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
“蒼白(蒼白色)”の解説
蒼白色(そうはく-しょく)は色の一つ。青白(あおじろ)とも。JIS慣用色名には含まれない。同名で2系統の色がある。
(出典:Wikipedia)
蒼
漢検準1級
部首:⾋
13画
白
常用漢字
小1
部首:⽩
5画
“蒼白”で始まる語句
蒼白化
蒼白顏
蒼白痩削