おっ)” の例文
悲痛な声が叫んでいた、「あれがおっこった! 落こった!」足音が階段をころび降りてきた。父が、母が、泣きながら彼の身体にとびついた。
(まあ、女がこんなお転婆てんばをいたしまして、川へおっこちたらどうしましょう、川下かわしもへ流れて出ましたら、村里の者が何といって見ましょうね。)
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
數「うん岩越、ひょろ/\歩くと危いぞ池へおっこちるといかん、あゝ妙だ、家根やね惣体そうたい葺屋ふきやだな、とんと在体ざいてい光景ありさまだの」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
電車なんか、あんなに混んでいるじゃございませんか。さあ、乗りましょう。いゝじゃございませんの。自動車ががけからおっこちても、死なば諸共もろともですわ。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
「まア、今日のところはいいや……だが、これから女の夢なんか見やがって、おっこちたら承知しねエぞ……」
夢鬼 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
心配なのは数学の奴だが、それをも無理に狼狽あわてた鵜呑うのみ式で押徹おしとおそうとする、又不思議と或程度迄は押徹おしとおされる。尤も是はかねあいもので、そのかねあいを外すと、おっこちる。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
私「万事そっちへ委任してしまうのさ。何分よろしく御頼み申しますって。君、くるまに乗ったら、おっことさないように車夫くるまやが引いてくれるだろうと安心して、俥の上で寝る事はできないか」
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そう言ってる途端に、どしんという音がして何か空からおっこって来ました。
梨の実 (新字新仮名) / 小山内薫(著)
折田の山ン中まで連れ出して、お二人を殺したと思っても、お附のお岩さんは殺されたろうが、お藤さまは神が附いてますよ、谷へおっこちたって
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
そして川へおっこちて溺れそうだったのを救われたんだって、母様のお膝に抱かれていて、その晩聞いたんだもの。
化鳥 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
井戸を掘って水が出る以上、地面の下は水でなければならない、地面の下が水である以上、地面はおっこちなければならない。しかるに地面はなぜ落こちないか。これが彼の要旨ようしであった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「鯛だぞ、鯛だぞ、活きとるぞ、魚は塩とは限らんわい。醤油しょうゆで、ほっかりと煮て喰わっせえ、ほっぺたがおっこちる。——ひとウ一ウ、ふたア二アそら二十にんじゅよ。」
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
數「いや、びちゃ/\おっこっても宜しい、急に一時いちじに片を附けなければならんのだ、さ書け書かんかえ」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「ええおっこちそうな腹をして苦しがっています」
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
おっこちるといきおいよく三ツばかりくるくると舞った間に、鮟鱇博士は五ツばかりおまわりをして、手をのばすと、ひょいと横なぐれに風を受けて、斜めに飛んで
化鳥 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
鼻をつままれるのも知れねえ深更よふけで、突然いきなり状箱へ手を掛けやアがッたから、奪られちゃアならねえと思いやして、引張ると紐が切れて、手紙がおっこちる、とうとう半分引裂ひっさかれたから
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
けだもののね、恐ろしいものに追懸おっかけられて、お前さんと、お雪さんと抱き合って、お隣の井戸の中へおっこちたのを見て、はッと思って目が覚めたもんだから。……
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
他の物が打付ぶッつかっても、又おっことしてもこわれないようにしたいが、丈夫一式で見てくれがまずくっては困ると仰しゃったではございませんか、随分無理な注文ですが、出来ない事はありませんから
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
駒鳥こまはね、丈の高い、籠ん中を下から上へ飛んで、すがって、ひょいとさかさに腹を見せて熟柿じゅくしおっこちるようにぼたりとおりて、をつついて、私をばかまいつけない
化鳥 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ナニ馬鹿なことをいう……オヽ/\鴻の台からおっこちたんだナ、喧嘩をしたか遺恨か知らねえが、老爺さんをひどいことをしやアがる、組打ちでもしたか相手の奴の冠り物をしっかり握って居るが
その師の坊の姿を見ると、ちょうど台所で味噌をっていた小坊主が、擂粉木を縦に持ったまま、破風はふから飛出とびだして雲に続いた。これは行力ぎょうりきが足りないで、二荒山ふたらやまおっこちたと言うのです。
甲乙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
隅「おっことすといけないからお出し」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
昨夜ゆうべすさまじい音がしたと言わしっけね、何にもおっこちたものはねえね。)
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
……先刻さっきおっこちてるお客をひろいに——御免なさい、貴方もお客様ですわね——私たち、離れ離れに、あっちこっち、ぶらつきますうちに、のん気らしく、ここに寝転んでる人がありますから
「何かい、歩きながら、川へおっこちでもしたのかい。」
怨霊借用 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)