自業自得じごうじとく)” の例文
養子だけがうてくれた。たくさんとは言いませんがと畳に頭をすりつけたが、話にならなかった。自業自得じごうじとく、そんな言葉も彼はいた。
夫婦善哉 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
お小夜は自業自得じごうじとくだ、——手代の清八は、お孃さんにひどく嫌はれて、殺す氣になつたのはひどい野郎だ。が、一番惡いのは主人の善兵衞さ。
慌てゝ早く来た分は自業自得じごうじとくだが、約束の正一時を十五分過ぎている。今度こそはと、目を皿のようにして見張っていたら思いもかけない奴が
嫁取婿取 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
それがために道庵は、役所へ引張られて一応吟味の上が、手錠三十日間というお灸になったのは、自業自得じごうじとくとはいえかわいそうなことであります。
当人たちが困ろうと、飢えようと自業自得じごうじとくであり、むしろ生きた学問となろう。親のことばより実際の社会よのなかから少し学ばせたほうが慈悲というものだ。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
何せ今のとこ誰一人ンねたげる人もないのんで、『頼りにするのん姉ちゃんだけや』いわれると、なんぼ自業自得じごうじとくや思ても可哀そうになって来るねん。
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
自業自得じごうじとくだ。頭目をだしぬこうなんて、反逆行為だ。反逆行為の刑罰はどんなものだか、知っているだろう」
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そゞろにおこりし悪心より人を殺した天罰覿面てんばつてきめんかゝる最後をげるというも自業自得じごうじとく我身わがみかえってこゝろよきも、只不憫ふびんな事は娘なり、血縁にあらねば重二郎どの
彼らは自業自得じごうじとくで、彼らの未来を塗抹とまつした。だから歩いている先の方には、花やかな色彩を認める事ができないものとあきらめて、ただ二人手をたずさえて行く気になった。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
腹のさくるは自業自得じごうじとくなり、子をさして母をこまらせ親を苦しめて子をなかせたる罪の、今たちまち報ひ来て我手の先にたおれたり、悟れや汝生きて桓公かんこうの血に罪を作らんよりは
お艶は何をいうにも若い女のこと、ただ折角せっかくのこの家に敷居が高くなるだけで、それも言ってみれば自業自得じごうじとくだが、婆さんは年をくっているくせにあんまりとどかなすぎる。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
さんざんわるいいたずらばかりしておきながら、今更いまさらねこくるしめられるといってごといにても、それは自業自得じごうじとくというもので、わたしにだってどうしてもやられないよ。
猫の草紙 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
甥の身の上は自業自得じごうじとくの因果で是非ないとしても、自分の宗家そうけたる藤枝の家をこのまま亡ぼしてしまっては、先祖に対しても申し訳がない、死んだ兄に対しても申し訳がない。
箕輪心中 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
すべてが自業自得じごうじとくで、これから方向を転換するには、時すでに遅しというわけであった。
だが、明智やきみたちが、この洞くつの道にまよって、かってに餓死がしするのは、おれの知ったことじゃないからね。二十面相のじゃまだてをしたきみたちの自業自得じごうじとくというものだよ。ハハハ……。
妖怪博士 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
今一つは原因結果の道理で何事も自業自得じごうじとく、自分のしたる悪事は自分で苦しい思いをしてつぐなわなくちゃあならん、また自分の為したる善事の結果即ち快楽幸福もまた自分が受け得らるるのである。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
自業自得じごうじとくさ」そういう言葉が自然に私の口をついて、出てきた。
不連続殺人事件 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
いわば自業自得じごうじとくである。しかしながら、かりにも狼の出没するという形跡は、別に土地の人を恐怖させずにはおかない。
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
全くの自業自得じごうじとくで、しかも常識のあるものなら誰でもけられる、また避けなければならない自業自得だから、我れながら浅ましい馬鹿だと、つくづく自分がいやになって
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「——お師さまには、何もご存じないことだ。糺命きゅうめいされたのは、汝の自業自得じごうじとくではないか」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
林「うむ、少しは疵も付いたろう、自業自得じごうじとくだ、誰をうらむところがあるか、神妙にお縄を頂戴しろえ、これ友之助、大切たいせつな御用だぞ、かみへお手数てすうの掛らねえように有体ありていに申上げろよ」
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
又それを仕損じて、どのような怖ろしい罪科に陥ちようとも、しょせんはお師匠さまの自業自得じごうじとくじゃ。わたしはお前のお師匠さまに恨みこそあれ、恩もない、義理もない、由縁ゆかりもない。
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
また耶蘇教には自業自得じごうじとくということもない訳ではない。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
ああ、それというのも自業自得じごうじとくだったろう。
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「全く、浅吉さんていう人は、なんてかわいそうな人なんでしょう、おばさんの方は自業自得じごうじとくかも知れないが、浅吉さんこそ浮びきれますまいねえ」
大菩薩峠:30 畜生谷の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
自業自得じごうじとくとは言いながら、気の毒にもなって、だんだん事情を聞き取ってみると、銅鑼屋の亀さんは吃驚びっくりした。その女が、前々話を聞いていた、左次郎の養母ははに当るお咲だった。
醤油仏 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
うぬが勝手に主人の金をつかやアがって言い訳がないから死ぬのだが、それに附合つきあって死ぬやつがあるものか、死んだ奴は自業自得じごうじとくだ、お前は身の上を旦那に頼んできまりを付けて仕舞って
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
金造の殺されたのは自業自得じごうじとくで……。
半七捕物帳:51 大森の鶏 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
清川八郎は土方歳三をよく知っている、日頃一廉ひとかどの人物と見ているところから、ここで島田のために斬られることが、自業自得じごうじとくとは言いながら惜しいと思うのも人情です。
自業自得じごうじとくとはいえ、実に、えらいものを、しょい込んだと、家成はこのところ、楽しい日を失っていた。それにひきかえ、泰子の住む東の対ノ屋では、男女の客の絶えまがない。
「しかし、本来を言えば島田にはなんのうらみもない、落度おちどはこっちにあるから自業自得じごうじとくじゃ」
大菩薩峠:02 鈴鹿山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
と、玄蕃允にたいしてののしった自分のことばも、陣夢せきたるうちに、独りたぎらせていると、その憤怒も、やがては誰へも向けようもなく、自業自得じごうじとくと、自己に思い返してみるしかない。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
道庵先生ともあろうものが、ここで裸松のため、ほとんど、なぶり殺しの目に逢い出したのも、もとはといえば、自業自得じごうじとく。自業自得とはいいながら、そのごうは酒がさせるわざです。
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
自業自得じごうじとくというもんでさ」
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)