ばら)” の例文
阿Qは近来生活の費用にくるしみ内々かなりの不平があった。おまけに昼間飲んだばらの二杯の酒が、廻れば廻るほど愉快になった。
阿Q正伝 (新字新仮名) / 魯迅(著)
ウサギたちは走りながら、ぐるぐるまわりをしたり、高くねあがったり、前足で、ポンポンとわきばらをたたいたりしました。
大歎息おおためいきとともにばらをぐうと鳴らして可哀あわれな声で、姐さん、そうすると、酒もなし、麦酒もなし、さかなもなし……おまんまは。いえさ、今晩の旅籠はたごの飯は。
眉かくしの霊 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
銀之助はむちやくちやばらで酒ばかしんでうやつて居るのが、女房のへるのを待つて居るやうな気がしたので急に外に飛び出したくなつたのである。
節操 (新字旧仮名) / 国木田独歩(著)
公義きんよし、名よりは実だよ、当世ではな。向うに二重の腹があるなら、こっちも三じゅうばらになって、幾変化でもして見せるわさ。生き抜いた方がさいごの勝ちというものだ」
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
左の足を乳牛にゅうぎゅうむねあたりまでさし入れ、かぎの手にった右足のひざにバケツを持たせて、かた乳牛にゅうぎゅうのわきばらにつけ、手も動かずからだも動かず、乳汁にゅうじゅうたきのようにバケツにほとばしる。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
要吉は、それをいったおかげで、ばん食事しょくじには、なんにももらうことができませんでした。要吉は、おにもいかずに、ばらをかかえて、こちこちのふとんの中にもぐりこまねばなりませんでした。
水菓子屋の要吉 (新字新仮名) / 木内高音(著)
ここにばらを抱えて、我慢をしていたのです。
幽霊船の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
むかばら立てて泣きたいか。
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
このみなとにたどりついた二ひきの宿やどなしネズミは、橋の下のくいのあいだをおよぎまわっては、水の中にすてられたくずをたべて、すきばらをふさいでいました。
も、晩飯ばんたのしみにしてたのであるから。……わたしじつは、すきばら餘程よほどこたへた。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「それっ、こんどは左へけ!」と、ニールスは言って、牡羊おひつじの頭を左に向けました。牡羊は、またもはげしく突っかけて、二ばんめのキツネのわきばらを突きさしました。
すそみぢかでそでひぢよりすくない、糊気のりけのある、ちやん/\をて、むねのあたりでひもゆはへたが、一ツのものをたやうにばらふとじゝ太鼓たいこつたくらゐに、すべ/\とふくれてしか出臍でべそといふやつ
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)