端正たんせい)” の例文
せているので、ほんとうの身丈みのたけよりずっと長身に見える。おもざしは冷たすぎるほど端正たんせいで、象牙のようなえかえった色をしていた。
キャラコさん:03 蘆と木笛 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
ベラン氏が、両手を頭の上までさし上げ、真赤まっかになって喚いている。その相手だと見えて、氏の前にいたフランケ青年が、端正たんせいな顔をあげていった。
宇宙尖兵 (新字新仮名) / 海野十三(著)
逸作のような端正たんせいな顔立ちには月光の照りが相応ふさわしそうで、実は逸作にはまだそれより現世に接近したひと皮がある。そのせいか逸作も太陽が好きだ。
かの女の朝 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
みどりかみかつらまゆ皓齒かうしあたか河貝かばいふくんで、優美いうび端正たんせいいへどおよぶべからず。むらさきかけぬひあるしたうづたまくつをはきてしぬ。香氣かうき一脈いちみやく芳霞はうか靉靆たなびく。いやなやつあり。
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
まるで、人形のような端正たんせいさと、牡鹿めじかのような溌刺はつらつさで、現実世界にこんな造り物のような、あでやかに綺麗きれいな女のひとも住むものかと、ぼくは呆然ぼうぜん、口をあけて見ていました。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
喬之助は、その白い端正たんせいな顔に何らの表情もうかべずに、べつに遠慮をするでもなく、ぜんに向っていた。たださかずきの数は、すすめられても余り重ねなかった。しまいには、壁辰は手酌で呑んでいた。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
肉の楽しみをきわめることをもって唯一の生活信条としていたこの老女怪は、後庭に房を連ねること数十、容姿端正たんせいな若者を集めて、この中にたし、その楽しみにけるにあたっては、親昵しんじつをもしりぞ
悟浄出世 (新字新仮名) / 中島敦(著)
そう独言ひとりごとをいって、彼女はサッと覆面を引きむしった。その下からは思いの外若い男の顔が現れた。両眼を力なく閉じているが、そのあまりにも端正たんせいな容貌!
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)
端正たんせいひざに手を置いてしずかに微笑しながら、森川夫人はこころのなかで泣いていた。悲しみともいきどおりともつかぬ痛烈な涙が、胸の裏側をしとどに流れおちた。
唐土たうどむかし咸寧かんねいとき韓伯かんはくなにがしと、王蘊わううんなにがしと、劉耽りうたんなにがしと、いづれ華冑くわちう公子等こうしら一日あるひ相携あひたづさへてきて、土地とちかみ蒋山しやうざんびやうあそぶ、廟中びやうちう数婦人すふじんざうあり、白皙はくせきにしてはなは端正たんせい
甲冑堂 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)