石原いしはら)” の例文
石原いしはら兄哥あにきの縄張だが、利助兄哥はあのとおり身体が悪くて、娘のおしなさんが代って仕事をしている有様だから、どうすることも出来ない。
その外今川橋いまがわばし飴屋あめや石原いしはら釘屋くぎや箱崎はこざきの呉服屋、豊島町の足袋屋たびやなども、皆縁類でありながら、一人として老尼の世話をしようというものはなかった。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
勿論そのほか石原いしはら通りや法恩寺橋ほふおんじばし通りにも低い瓦屋根かはらやねの商店はのきを並べてゐたのに違ひない。
本所両国 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
あめれたり、ちやうど石原いしはらすべるだらう。母様おつかさんはあゝおつしやるけれど、わざとあのさるにぶつかつて、またかはちてやうか不知しら。さうすりやまた引上ひきあげてくださるだらう。
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
虎太夫は中気で、本所ほんじょ石原いしはら見横町みよこちょうに長らく寝ていますが、私は此大師匠に拾われました捨児で、真の親という者を知りませんのです。私には大師匠夫婦がうみの親も同然。
死剣と生縄 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
いくつもの小流こながれや石原いしはらえて、山脈さんみやくのかたちもおほきくはつきりなり、やま一本いつぽん一本いつぽん、すぎごけのやうにわけられるところまでたときは、太陽たいやうはもうよほど西にしれて
鹿踊りのはじまり (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
大尉たいゐが高きほまれにはけおされてなど口々くち/″\いふ、百ぽんぐひより石原いしはら河岸かし、車の輪もまはらぬほど雑沓こみあひたり、大尉たいゐとも露伴氏ろはんし実兄じつけいなり、また此行中このかうちうわが社員しやゐんあれば、此勇このいさましき人の出を見ては
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
又本国甲賀郡かふかこほり石原いしはら潮音寺てうおんじ和尚のものがたりに、近里の農人はた掘居ほりゐしにこぶしほどなる石をほりいだせり、此石常の石よりは甚だうつくし、よつて取りかへりぬ、夜に入りて光ること流星りうせいの如し。
止せ……われまで其様そんなことをいうからあまがいう事をかねえ、宜くかんげえて見ろよ、くまヶ谷石原いしはらの忰をうちへよばる都合になって居るじゃアねえか、親父のいた時から決っているわけじゃアねえか
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
たぎり湧く湯のとどろきを聞きながらこの石原いしはら一日ひとひすぐしぬ
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
振り返ると、石原いしはらの利助という四十男、同じ御用仲間ですが、評判の腕っこきで、平次とは自然、張合となっている人間です。
又本国甲賀郡かふかこほり石原いしはら潮音寺てうおんじ和尚のものがたりに、近里の農人はた掘居ほりゐしにこぶしほどなる石をほりいだせり、此石常の石よりは甚だうつくし、よつて取りかへりぬ、夜に入りて光ること流星りうせいの如し。
けふ一日ひとひ雲のうごきのありありて石原いしはらのうへに眩暈めまひをおぼゆ
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
三輪の万七という顔のいい御用聞、石原いしはらの利助が隠居してからは、銭形の平次を向うに廻して、事ごとに手柄を争っている男だったのです。
お勝手の格子が開いて、ソロリと入って来たのは、石原いしはらの利助の娘で、平次には日頃恩にもなり、親しみも持っているおしな
幸い、本所の御用聞で、石原いしはら利助りすけ親分の娘のおしなさん、これは出戻りだが、縹緻きりょうも才智も人並みすぐれて、こんなことには打って付けの女です。
「届出は頓死とんしだが、——あの辺は石原いしはらの利助兄哥あにきの縄張内だ。昼頃変な小僧が手紙を持って来たんだそうで、おしなさんが持って来て見せてくれたよ」
石原いしはら利助りすけが大怪我をしたといううわさを聞いた銭形の平次、何を差措さしおいても、その日のうちに見舞に行きました。
女房のお静はれた手を拭きながら、顔を出しました。その後ろから、ニコニコした顔を覗かせたのは、石原いしはら利助りすけの娘——娘御用聞——といわれたおしなです。
石原いしはら兄哥あにきのところの、おしなさんに、済まねえがちょいとここへ来て下さるようにってそう言ってくれ」
思案に余ったお国は、夫新三郎の留守の時、そっと石原いしはら利助りすけを呼んで、相談してみる気になりました。
取次のお静は、手を取らぬばかりに、石原いしはら利助りすけの娘で、年増っぷりの美しいお品を招じ入れました。
与力よりきの笹野新三郎を訪ねて訊くと、石原いしはら利助りすけは堂守殺しの下手人として、徳蔵稲荷の隣に住んでいる、やくざ者の仙吉せんきちを挙げたという話、これは賭博ばくちの元手に困って
平次がこんな大事な舞台へ、代理として立たせてくれたのは、石原いしはらの利助や三輪みのわの万七といった、意地の悪い岡っ引の居ないところで、存分に腕を伸させるためでしょう。
石原いしはらのも失策しくじったんですとさ」
石原いしはらのも失策しくじったんですとさ」