目見得めみえ)” の例文
「お嬢さま、熊井に頼んでおきました、田舎出いなかでの小間使いがお目見得めみえに参りましたが、通しましてもさしつかえございませんか」
人間豹 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
何分にも目見得めみえ中の奉公人で、給金もまだ本当に取りきめていない位であるから、その身許などを詮議している暇もなかったというのです。
鰻に呪われた男 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ところが、ひとり石川播磨守だけは、眼に涙すらたたえて、その少年を傍らに寄せ、秀吉へ目見得めみえの礼をとらせながら、さて、こう述べた。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
登場俳優を片端かたっぱしから生死のドタン場にまで飜弄しようとしている運命の魔神の、お目見得めみえの所作に外ならなかったのだ。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
それで、それはそれとして、針目博士がとつぜんわれわれの前へ脚光きゃっこうをあびてあらわれた、そのお目見得めみえの事件について、これから述べようと思う。
金属人間 (新字新仮名) / 海野十三(著)
目見得めみえだけにでもつれてゆこう、なアに着物なんぞ着替えるにも及ばねえや、ふだん着で結構だよ、風呂にいったというんならちょうどいいじゃねえか
本所松坂町 (新字新仮名) / 尾崎士郎(著)
「あの蚕の口から出まする糸、それを座繰ざぐりにかけて繰り出しましてから、島田に結わせて、世間様へお目見得めみえを致させまする、あれは通常、生糸と申しましてな」
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
所が、平吉がお目見得めみえをしてから二月ばかりするとそこのおみさんがふとした出来心から店の若い者と一しょになって着のみ着のままでかけ落ちをしてしまった。
ひょっとこ (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「まア宜い、逢ふも逢はないもあるものか。殿樣へお目見得めみえぢやあるめえし、此處へ通すんだ。お勝手から來るやうぢや、どうせ若い娘だらうからおどかして歸しちやならねえ」
孫一まごいちも其の一人だつたの……此の人はね、乳も涙もみなぎり落ちる黒女くろめ俘囚とりこ一所いっしょに、島々を目見得めみえに廻つて、其のあいだには、日本、日本で、見世ものの小屋に置かれた事もあつた。
印度更紗 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
山「はい私の祖父様じいさんがおかゝえに成りましたのだそうでございますが、足軽から段々お取立に成りまして、お目見得めみえ近くまで成りました、名は白島山平と申しまする者でございます」
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
今、お目見得めみえをさせるからね、そのお嬢さんのお気にさえ入れば、お前さんはきょうからでも、高い給金で奉公ができるのだよ
人間豹 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
三日の目見得めみえもとどこおりなく済んで、お角は津の国屋へいよいよ住み込むことになった。お雪は菓子折を持って文字春のところへ礼に来た。
半七捕物帳:16 津の国屋 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「どうだ一番、あの紙張の中と、葛籠の中、鬼が出るかじゃが出るか、俺とお前のはつのお目見得めみえにはいい腕比べだ、天竜寺の前芸まえげいにひとつこなしてみようじゃねえか」
大菩薩峠:07 東海道の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
けれどこの少年ものちには黒田長政となったである。父官兵衛に伴われて、安土の群臣の前に出ても、また信長に目見得めみえしても、決して卑屈に羞恥はにかんでばかりいなかった。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
孫一まごいち一人ひとりだつたの……ひとはね、ちゝなみだみなぎちる黒女くろめ俘囚とりこ一所いつしよに、島々しま/″\目見得めみえ𢌞まはつて、あひだには、日本につぽん日本につぽんで、見世みせものの小屋こやかれたこともあつた。
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そのお目見得めみえ芝居の芸題は阿古屋の琴責めで、半太夫が阿古屋をつとめる事になっておりますから、その舞台を御覧になって、その通りの場面を五人組みに作って頂けますまいか。
押絵の奇蹟 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
それは歌舞伎座の正月興行で、かれは帰り新参のお目見得めみえとして、「鞍馬山」のだんまりに牛若丸をつとめ、養父菊五郎が木の葉天狗実は天明太郎に扮した。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
が、ふしぎな大役たいやく、いいつけられた、呂宋兵衛のほうでも、なんだかムズムズ油がのる。秀吉公ひでよしこうへの目見得めみえ初役はつやく、ぜひ引っからめて見せねばならぬとひそかにちかった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
悪く抜衣紋ぬきえもんで、胸を折って、横坐りに、蝋燭火ろうそくび紙火屋かみぼやのかかったあかりの向うへ、ぬいと半身で出た工合が、見越入道みこしにゅうどう御館おやかたへ、目見得めみえの雪女郎を連れて出た、ばけの慶庵と言うていだ。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
このところに於て初のお目見得めみえですから、野郎きっと夜通し飛んで来てみたが、目的地へ来てみると、自分を出し抜いて、火事が目当てを焼いてしまっていたので、面食ってしまったに相違ない。
大菩薩峠:31 勿来の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「山科郷にわびしゅう暮らすみくずというしずでござります。殿にお目見得めみえを願いとうて参じました」
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
云い聞かせて、次の日、新川の大家へ、藪山やぶやまの叔母に連れられて目見得めみえに行った。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
白糸 ああ、女中のお目見得めみえがいけないそうだ。それじゃ、私帰ります。失礼。
錦染滝白糸:――其一幕―― (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
お通が目見得めみえに行ったぎりで其の後なんの沙汰もないので、姉も心配して相模屋へ問い合わせに行きますと、目見得もとどこおりなく済んで、主人の方でも大変気に入って
半七捕物帳:20 向島の寮 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
呂宋兵衛は、ここぞ出世の緒口いとぐちと、あらんかぎりの巧舌こうぜつ甘言かんげんで、お目見得めみえした。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その代りとしておたけが目見得めみえに来たのは、七月の十七日であった。彼女かれは相州の大山街道に近い村の生れで、年は二十一だといっていたが、体の小さい割にけて見えた。
二階から (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
黒旋風こくせんぷう李逵りき目見得めみえのこと
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
中幕の「蜘振舞くものふるまい」で頼光をつとめ、二番目は病気全快のお目見得めみえという触れ込みで、桜痴おうち居士新作の「山中平九郎」を上演し、菊五郎が主人公の平九郎を勤めたのであるが
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
菊村ではすぐ人をやって、まだ目見得めみえ中のお菊を無事に潮来から取り戻した。
半七捕物帳:02 石灯籠 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「さあ、いつと決めて来たわけでもないが、むこうも歳暮くれから正月にかけて人出入りも多かろうし、なるべく一日も早いがいいだろう。お前の支度さえよければ、あしたにでも目見得めみえに連れて行こう」
籠釣瓶 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)