狙撃そげき)” の例文
すでに、狙撃そげきまとは、死骸になって仆れているものと考えて、火縄も投げ捨て、鉄砲だけを持って、やって来たらしいのである。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
最初、日本の兵士を客間に招待して紅茶の御馳走をしていた百姓が、今は、銃を持って森かげから同じ兵士を狙撃そげきしていた。
パルチザン・ウォルコフ (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
狙撃そげきを避けるため地に寝たとも見えない。どうしたのだろう。すると頭の切れた蛇がまた二三寸ぷつりと消えてなくなった。
趣味の遺伝 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
にわかに土州兵のために岸から狙撃そげきされたとのことであるが、旭茶屋方面から走って来るものの注進もまちまちで、出来事の真相は判然しない。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
それで、舗石しきいしの防壁の後ろに潜んで並んでる狙撃そげき戦列兵や街路のかどに集まってる狙撃国民兵らは、煙の中に何かが動いてるのを突然見いだした。
馬前にいた河内介は咄嗟とっさに大将の身をかばい、則重を森の中へ避難させて、きっと戦場を見渡したが、狙撃そげきされた則重の驚きもさることながら、此の瞬間に
総理大臣が乱暴な若者に狙撃そげきされた。それが金曜日であった。前にある首相が同じ駅で刺されたのが金曜日、その以前に某が殺されたのも金曜日であった。
時事雑感 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
軍隊を狙撃そげきする軍隊なのである。そのような、不可解な軍隊を向うに廻して、東山少尉の部下は、敵慨心てきがいしんを起す前に、悒鬱ゆううつにならないわけにゆかなかった。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
明治四十二年十月伊藤公の哈爾賓ハルビンにおいて狙撃そげきせられた時槐南も公に随行し同じく銃丸を受け帰朝の後いくばくもなくして世を去った。享年四十九である。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
いやそのことなら、僕はそれほどいやではなかった。それにいつでもやっつけてやれた。そのうえ、戦うには兵士どもが必要だ。あちらでは僕は部下の狙撃そげき兵を
村から遠く離れた、あの山の上の……何とかいう処でしたね……そうそう一本榎に待ち伏せて狙撃そげきをした。
復讐 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
農民一揆いっきに対して残忍な弾圧を下した副知事を、マリアは単身、駅で待ち伏せて狙撃そげきした。
いやな感じ (新字新仮名) / 高見順(著)
達磨だるま落し、バットの狙撃そげきはつい通りだが、二軒とも、揃って屋根裏に釣った幽霊がある。
怨霊借用 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
南洲及び大久保公、木戸公、後藤象次郎、坂本龍馬等公を洛東より迎へて、朝政に任ぜしむ。公既に職に在り、しば/\刺客せきかく狙撃そげきする所となり、危難きなんしきりに至る、而かもがう趨避すうひせず。
「西伯利亞の景色お氣に入りしと思ふ」と云ふ大連の平野萬里さんから寄越したものであつた。伊藤公の狙撃そげきされたと云ふ場所に立つて、其日眼前に見た話を軍司氏の語るのを聞いた。
巴里まで (旧字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
またごく野蛮で政府の命令もかなければ誰の命令にも従わないというアムドとかカムとかいう地方の、多くの人間が別に部落を組んで居りますから、これらの者がその兵隊に対して狙撃そげきもし
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
船内火起り夷輩騒動するを見ば、小銃にてこれを狙撃そげきすべし。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
黒衣長袍こくいちようほうふち広き帽を狙撃そげきす。
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
「第一、危険至極ではないか。いくら白昼でも、ひろい山地には、敵の忍びもいる。もし遠くから狙撃そげきでもされたらどうするか」
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
思いもかけぬ砂漠さばくの暗やみから自分を狙撃そげきせんとするもののあることを感知したそうである。
B教授の死 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
一八四八年六月の悲惨な戦いにおいては、狙撃そげきの巧みなひとりの暴徒が平屋根の上で戦ったが、一個の安楽椅子を持ち出していた。そしてそれに腰掛けたまま霰弾さんだんにたおれた。
彼は右手の生垣いけがきの間から大事そうに彼を狙撃そげきしている真事の黒い姿を苦笑をもって認めた。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
テロリストの一派が(この辺のことはいずれあとで語らねばならない)ピストルで福井大将を狙撃そげきした。その一派はつかまって死刑になった。俺たちが死にぞこなったというのは、これである。
いやな感じ (新字新仮名) / 高見順(著)
仏国軍艦デュソレッキ号の乗組員は艦長の指揮により、士官両人の付き添いで、堺港内の深浅を測量していたところ、土州兵のためにその挙動を疑われ、にわかに岸からの狙撃そげきを受けたものであった。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
陰険な狙撃そげきの矢にあたつたのである。
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
狙撃そげき?」
ぼつぜんといかりをはっした竹童はあい手が、樹上じゅじょうの忍剣へ、狙撃そげき引金ひきがねをひこうとするすきへむかって、かんぜんとおどりかかってきたのである。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ある類似点、あなたがファヴロールでなされた探索、あなたの腰の力、フォーシュルヴァン老人の事件、あなたの狙撃そげきの巧妙さ、少し引きずり加減のあなたの足、その他種々な下らないことです。
まず銃で乗り物を狙撃そげきした。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
あのこととは、いうまでもなく、彼が奈良井の大蔵に使嗾しそうされて機をうかがっていた「新将軍狙撃そげき」のたくらみ事であった。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
十一 人を殺さぬ確実なる狙撃そげき
すると、数日の後、敵の猛将、坪坂伯耆守つぼさかほうきのかみが、戦線を巡視中に、何者かに、鉄砲で狙撃そげきされ、敵の士気はにわかにみだれているという報がはいった。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
後に判明したことであるが、その折、大樹のこずえから信長を狙撃そげきした下手人は、伊勢朝熊山あさくまやまの円通寺の法師で、百発百中といわれる鉄砲の名手だったという。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
橋上すでに渦巻いて、血はおばしまにとび、ほりにながれ、死屍ししを踏む者、また死屍へ重なり合うとき、明智方は彼方のほりばたから、銃をそろえて城兵を狙撃そげきし出した。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのうち、町屋の二階や、農家の戸内から、伏兵の狙撃そげきをあびて、おびただしい死傷が積まれた。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
黒門口の番小屋の脇に積みかさねてある畳の砲塁ほうるいたてにして、広小路の敵を、狙撃そげきしていた。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と鉄砲組の狙撃そげきを制して、一槍いっそうをもって立ちむかい、ついに突き伏せてその首級をあげた。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
城将の日幡景親が、北曲輪きたぐるわの防備を巡視中、何者かに、鉄砲で狙撃そげきされたのである。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
水面は、雨のような、飛沫ひまつに白くなった。義昭は気もえてしまった。——しかし、その狙撃そげきはすぐんだ。信長を撃つために、義昭を撃ってしまう危険を敵方も恐れたからであった。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
城兵は、炎煙にまぎれて突出し、到る処で、寄手の軽兵のうしろへ廻り、箇々に包囲して、鏖殺みなごろしにするの策に出た。また市倉や民家をたてとして、鉄砲で狙撃そげきする。これも寄手を悩ました。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そこを、城壁の上からも、城門の上からも、一斉に狙撃そげきを浴びせかけられた。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
バシッ、バシッと、魚のはねるような白い飛沫が立つのは、その敵が、かれを狙撃そげきしているだまにちがいない。にもかかわらず、菅沼藤蔵は、やがて池へむかって、悠然と、放尿していた。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
宵闇よいやみの樹上から鉄砲で狙撃そげきされたのである。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)