トップ
>
瀰漫
>
びまん
ふりがな文庫
“
瀰漫
(
びまん
)” の例文
彼は主観の裡に燃えるこの情熱によって、フランス中産階級の生活に
瀰漫
(
びまん
)
している因習と闘い、自分が自分である権利を主張して来た。
ジイドとそのソヴェト旅行記
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
資材も使わず、労力もあまりかけないで、何かあっというような物を作ってもらいたいという希望が案外
瀰漫
(
びまん
)
しているようである。
霧を消す話
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
単に勇気沮喪したばかりではありません、あだかもタブーを見るごとき畏れと気おくれがいはれなく彼の全身に
瀰漫
(
びまん
)
してきました。
淫者山へ乗りこむ
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
物質的條件が完全に一階級の支配に統一されている時は社會の意識形態は平衡を保つて
所謂
(
いわゆる
)
平和思想が
瀰漫
(
びまん
)
する。十九世紀がそれである。
唯物史観と文学
(旧字旧仮名)
/
平林初之輔
(著)
ついに欧米の文明諸国に
瀰漫
(
びまん
)
し、法律の上にも実現されて婦人の社会に占むべき地位は確保され、次第に一家の主人たる観を呈するに至った。
婦人問題解決の急務
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
▼ もっと見る
一八九四年(明治二十七年)朝鮮に東学党の乱が起って、これが導火線となって日清戦争が勃発するや、国内は戦争気分に
瀰漫
(
びまん
)
されるに到った。
明治の戦争文学
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
23 しかし、すでに遅く、悪疫は船内に
瀰漫
(
びまん
)
しつつあった。まず花やかな薄羅に包まれた淑女たちが、それから紳士と船員が次々にたおれた。
氷れる花嫁
(新字新仮名)
/
渡辺温
(著)
生命の物理的説明とは生命を
抹殺
(
まっさつ
)
する事ではなくて、逆に「物質の中に
瀰漫
(
びまん
)
する生命」を発見する事でなければならない。
春六題
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
人力以上にして、しかも、私たちにも備わり、天地の間にも
瀰漫
(
びまん
)
している力、すなわち、飽くまで生き抜く力であります。
仏教人生読本
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
寝しなに雨戸の隙間からのぞくと灰色の
鱗雲
(
うろこぐも
)
が空一面に
瀰漫
(
びまん
)
して、生ぬるい風が吹いて来る。あまり面白くない天気だ。
皇海山紀行
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
美女を蓄わえて
己
(
おのれ
)
楽しみ、美女を進めて将軍家を眩まし、
奢侈
(
しゃし
)
と軟弱と贈収賄と、好色の風潮ばかりを
瀰漫
(
びまん
)
させておる。
十二神貝十郎手柄話
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
……すでに当市の婦人たちの間にもこの弊風は相当
瀰漫
(
びまん
)
しておりますようですし、この事件を調べておりますうちにその点を私は痛烈に感じました。
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
冷
(
ひ
)
やりとした地下室のやうな空氣が、寂しく廣い家の陰氣さを思はせるやうに、階段にも、廊下にも、
瀰漫
(
びまん
)
してゐた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
隣村に
瀰漫
(
びまん
)
してゐた病毒は、
祭禮時
(
まつりどき
)
の暴飮暴食につけ込んで、私の村へも浸染した。そして患者はぼろ舟に乘せられて、海上半里の離れ島へ送られた。
避病院
(旧字旧仮名)
/
正宗白鳥
(著)
現在
瀰漫
(
びまん
)
するところの大衆作家諸君の作品は、史上実在の人物、例えば近藤勇の名前を方便上借り来って、史実を曲げ、気儘な都合よき事件を創造し
大衆文芸作法
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
この悪い風潮は黙々として、自己の生産に従事しつゝある、あらゆる階級にまで
瀰漫
(
びまん
)
せんとしつゝあります。
文化線の低下
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
私の
体
(
からだ
)
中に
瀰漫
(
びまん
)
して居る血管の
脈搏
(
みゃくはく
)
は、さながら強烈なアルコールの刺戟を受けた時の如く、一挙に脳天へ向って奔騰し始め、冷汗がだくだくと肌に湧いて
恐怖
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
が、そういうことは今いわないとしても、この反駁の中には、昔から世界に
瀰漫
(
びまん
)
している大きな誤謬がある。
クロイツェル・ソナタ:01 クロイツェル・ソナタ
(新字新仮名)
/
レオ・トルストイ
(著)
彼等の名は、餓鬼、天人、妖精等と呼ばれ、我等の身邊に近く住んで、宇宙の至る所に
瀰漫
(
びまん
)
してゐる。
宿命
(旧字旧仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
愉快な問題にも、不愉快な疑問にも、僕は僕そッくりがひッたり当て
填
(
はま
)
る気がして、天上の果てから地の底まで、明暗を通じて僕の神経が流動
瀰漫
(
びまん
)
しているようだ。
耽溺
(新字新仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
誰やらが絶えず仏壇の
鉦
(
かね
)
を鳴らし、名香の匂いが、部屋中に
瀰漫
(
びまん
)
するように仕組まれてありました。
銭形平次捕物控:093 百物語
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
罪悪は著しく蓋然的な帰結である、従って吾々はそれが大いに
瀰漫
(
びまん
)
しているのを見るのであるが、しかしおそらくこれを絶対に必然的な帰結と呼んではならぬであろう。
人口論:01 第一篇 世界の未開国及び過去の時代における人口に対する妨げについて
(新字新仮名)
/
トマス・ロバート・マルサス
(著)
最後の災いが大気に
瀰漫
(
びまん
)
した時、フランスがその不吉なる災いの近接のもとに震えた時、ワーテルローの敗戦がナポレオンの前に開かれしことが漠然と感じ得られた時
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
殊に欧洲の戦役以来、宗教的感情が
瀰漫
(
びまん
)
すると同時に、いろいろ戦争に関係した幽霊の話も出て来たやうです。戦争文学に怪談が多いなどは、面白い現象に違ひないでせう。
近頃の幽霊
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
其結果として尊王攘夷論を天下に
瀰漫
(
びまん
)
せしめたり、多数の浪人をして孤剣三尺東西に漂遊せしめたり。幕府衰亡の
顛末
(
てんまつ
)
は、
桜痴
(
あうち
)
居士の精細なる叙事にて其実況を
知悉
(
ちしつ
)
するに足れり。
明治文学管見:(日本文学史骨)
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
近代文明の大潮流が
滔々
(
とうとう
)
として各国に
瀰漫
(
びまん
)
し、その
醞醸
(
うんじょう
)
するところとなって憲法政治は現われ出たものである。されば近代諸国の立憲政治には、共通の一つの精神的根柢の存する事は争われない。
憲政の本義を説いてその有終の美を済すの途を論ず
(新字新仮名)
/
吉野作造
(著)
社会主義の
福音
(
ふくいん
)
は既に軍隊の内部に
瀰漫
(
びまん
)
せんとしつゝあるを、平和主義の故を以て露国教会はトルストイを除名せり、然れ共今や学生の一揆、労働者の同盟罷工に
向
(
むかつ
)
て進軍を
肯
(
がへ
)
んぜざる士官あり
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
世界に
瀰漫
(
びまん
)
する声のない踊り 姿態の憤怒
原爆詩集
(新字新仮名)
/
峠三吉
(著)
では何故そんなに俗っぽくて常識万能の鼻もちならなさが当時の社会に
瀰漫
(
びまん
)
したかという原因については、深く追究していない点である。
風俗の感受性:現代風俗の解剖
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
そういう風潮が
瀰漫
(
びまん
)
すると、科学はますます現実の社会から離れて行き、「科学に理解のない」政治家や実業家の言説を支持する結果になる。
動力革命と日本の科学者
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
発信所で一つ大きな電気の火花を飛ばすとその周囲より空間全体に
瀰漫
(
びまん
)
するエーテルに一種の波動を起し、この波動はエーテルを伝わって八方に拡がる。
無線電信の近状
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
縦
(
よ
)
しやこれを免れ得るとするも、国内に
瀰漫
(
びまん
)
する社会民主的思想の高潮は
如何
(
いか
)
なる結果を生ずるか、あるいはその勢力に依って国外に放逐さるること無きか。
列強環視の中心に在る日本
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
そう云う中でひとり影の如く
孤坐
(
こざ
)
している父を見ることは、何か奇怪な夢の世界に引き入れられた感じであったが、でもあたりには鼻を
衝
(
つ
)
く屍臭が
瀰漫
(
びまん
)
していたので
少将滋幹の母
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
平次とガラッ八が二人の武家に
伴
(
つ
)
れられて行ったのは、この騒ぎの真っ最中、血潮と線香の匂いの
瀰漫
(
びまん
)
する中へ踏込んで、さすがの平次も胸を痛めましたが、
背後
(
うしろ
)
には
銭形平次捕物控:062 城の絵図面
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
さま/″\の溜息、呻き、訴える声、堪え難いしかめッ面などが、うつしこまれたように、一瞬に、病室に
瀰漫
(
びまん
)
した。血なまぐさい軍服や、襦袢は、そこら中に放り出された。
氷河
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
私は、長く坐つてゐたので、
硬
(
こは
)
ばつてゐた。さうして、馬車の騷音と動搖で、混亂してゐた。私は元氣を出して、自分の周圍を見た。雨と風と
暗闇
(
くらやみ
)
とが、大氣に
瀰漫
(
びまん
)
してゐた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
今は大臣の時勢を慨するや、危険思想の
瀰漫
(
びまん
)
を論じて曰、病既に
膏盲
(
かうまう
)
に入る、国家の興廃旦夕にありと。然れども天下怪しむ者なし。漢学の素養の顧られざる、
亦
(
また
)
甚しと云はざる可らず。
骨董羹:―寿陵余子の仮名のもとに筆を執れる戯文―
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
その意味から、私は豪傑を凝視めるなり、いきなり顔を
赧
(
あか
)
らめてしまつたのだ。然し私は落付いてゐた。ただ、なんのために秋子を連れてきたのだらうといふ疑ひが、心の奥に
瀰漫
(
びまん
)
してきた。
狼園
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
朝暾落暉の光に炎と燃える雲の幾群が谷中に
瀰漫
(
びまん
)
したようである。
秋の鬼怒沼
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
いくらデモクラシーが世界に
瀰漫
(
びまん
)
しても、ルビーと
煉瓦
(
れんが
)
の欠けらとが一つになるか、と、どなりたくなった。……
柿の種
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
既に一座の空気に
瀰漫
(
びまん
)
している飯島の亢奮がうつっていて、微かに神経質な甲高さが加わっているのである。
杉垣
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
密閉された室内に唄声だけが
瀰漫
(
びまん
)
しつつあって、何処かで蓄音器を懸けているように聞えた。
細雪:03 下巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
血潮と線香の匂ひの
瀰漫
(
びまん
)
する中へ踏込んで、さすがの平次も胸を痛めましたが、背後には、もつと大きな災害が控へて居ることを考へて、委細構はず探索の手を擴げたのでした。
銭形平次捕物控:062 城の絵図面
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
そうなれば自由の空気は一般に
瀰漫
(
びまん
)
する次第であるから、
西比利亜
(
シベリア
)
地方も甚だ繁栄に赴くに相違ない。商業も盛んになる。
而
(
しか
)
して将来の日露というものの交際は必ず親密になる。
東亜の平和を論ず
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
あの時代は、一口にいえば、国家主義的な風潮が、世界的に
瀰漫
(
びまん
)
した時代であった。従ってこの問題は、とかくそれぞれの国における軍の機密の問題と、関連がつけられ勝ちであった。
科学と国境
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
これが記紀の時代に現われて以来今日に至るまで短歌俳句はもちろん各種の歌謡民謡にまでも
瀰漫
(
びまん
)
している。
俳諧の本質的概論
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
夜の空まで
瀰漫
(
びまん
)
する都会の巨大などよめきを貫いて、キロロロロロ……と自動車の警笛が聞えた。
伸子
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
この家に
瀰漫
(
びまん
)
する異樣な空氣を嗅ぎわけるつもりだつたのです。
銭形平次捕物控:186 御宰籠
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
ことに町人の間に
瀰漫
(
びまん
)
していて、しかも意識されてはいなかった潜在思想を、西鶴の冷静な科学者的な眼光で観破し摘出し大胆に日光に曝したものと見ることは出来よう。
西鶴と科学
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
一本のマッチをすればその光は全宇宙に
瀰漫
(
びまん
)
してその光圧は天体の運動に幾分の変化を生じなければならぬはずである。少なくも吾人の科学に信拠すればそうなるはずである。
方則について
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
“瀰漫”の意味
《名詞》
瀰 漫(びまん)
ある風潮、気分などが一面に広がること。
(出典:Wiktionary)
瀰
漢検1級
部首:⽔
20画
漫
常用漢字
中学
部首:⽔
14画
“瀰”で始まる語句
瀰
瀰散
瀰毒
瀰蔓
瀰散霧函