淀川よどがわ)” の例文
その挑戦的ちょうせんてきな態度が徳川方を激昂げきこうさせて東西雄藩の正面衝突が京都よりほど遠からぬ淀川よどがわ付近の地点に起こったとのうわさも伝わった。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
夜空をかざり、東は大和川やまとがわ、北は淀川よどがわ、西は横堀川よこぼりがわ、南は大空濠おおからぼりを境として、この世の物か、と疑われるばかりな夜景を現出していた。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
淀川よどがわの水に流せばええじゃないかと人々の浮かれた声が戸外を白く走る風とともに聴えて、登勢は淀の水車のようにくりかえす自分の不幸を噛みしめた。
(新字新仮名) / 織田作之助(著)
しかし、せっかくできかかったものをやめてしまうのは、学者がくしゃのふめいよだというので、二、三にんのものは、淀川よどがわふねをうかべて、じっけんをつづけました。
如何どうしたかと云うと、淀川よどがわの一番粗末な船を借りて、船頭を一人ひとり雇うて、その船に例のかめ七輪しちりん積込つみこんで、船中で今の通りの臭い仕事をるはいが、矢張やっぱり煙がたって風が吹くと
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
淀川よどがわを控えて、城を見て——当人寝が足りない処へ、こうてりつけられて、道頓堀どうとんぼりから千日前、この辺のにえくり返る町の中を見物だから、ぼうとなって、夢を見たようだけれど、それだって
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
おわんのふね毎日まいにちすこしずつ淀川よどがわのぼって行きました。しかしふねちいさいので、すこかぜつよいたり、あめってみずかさがしたりすると、ふねはたびたびひっくりかえりそうになりました。
一寸法師 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
「なんだ、これがあの有名な大井川か。淀川よどがわの半分も無いじゃないか。国元の猪名川いながわよりも武庫川むこがわよりも小さいじゃないか。のう、蛸。これしきの川が渡れぬなんて、式部も耄碌もうろくしたようだ。」
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
つきとめようという気もなかったのであるがその御殿の遺跡は山城やましろ摂津せっつのくにざかいにちかい山崎の駅から十何丁かの淀川よどがわのへりにあって今もそのあとに後鳥羽院を祭った神社が建っていることを
蘆刈 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
そこから淀川よどがわをのぼって山城やましろまで行っておしまいになりました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
大和川やまとがわ淀川よどがわの二すいをひいてほりの長さを合計ごうけいすると三八町とかいうのだから、もって、いかにそのおおげさな築城ちくじょうかがわかるであろう。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
でも岸本はまだ牧野が自分の側にでも居るようにして、二人して一緒に望んで行くように、淀川よどがわ一帯の流域とも言うべき地方を汽車の窓から望んで行った。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「うぐいすも、都の春にあいたけと、きは淀川よどがわのぼり舟、………」
蓼喰う虫 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
その日は伏見泊まりの予定で、水陸両道から淀川よどがわをさかのぼる手はずになっていた。陸を行く護衛の一隊なぞはすでに伏見街道をさして出発したという騒ぎだ。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
と、秀吉の方から急にその話を逃げて——「途上、淀川よどがわや京都あたりの風聞ふうぶんは、どうじゃな」
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
淀川よどがわ筋では難場なんばが多く、水損みずそんじの個処さえ少なくないと言い、東海道辺では天龍川てんりゅうがわの堤が切れて、浜松あたりの町家は七十軒も押し流されたとのうわさもある。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「いずこにあっても、きのうきょうは、戦のことでもちきりです。淀川よどがわは舟で上りましたが」
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
暁にって淀川よどがわをさかのぼり、淀の駅まで行った。そこいらの茶店ではまだ戸がまっている。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
朱実は、三十石船こくぶねのうちでも、淀川よどがわの水をみな自分の涙としても足らないほど嘆いた。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それまで大山大川なぞも親しくは叡覧えいらんのなかったのに、初めて淀川よどがわ滔々とうとうと流るるのを御覧になって、さまざまのことをおぼし召され、外夷がいい親征なぞの御艱難ごかんなんはいうまでもなく
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
とすじの流れは川の姿をなして、淀川よどがわそそぎこんでいるが、附近はよしあしにおおわれた一帯の沼地である。そして常ならば行々子よしきりの声がやかましく聞えるのだが、きょうは一鳥の声すらない。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
度をうしなった足利勢は、ただひとすじの退路渡辺橋わたなべばしへ、われがちにどっとしかかったが、馬は狂い、人と人はもつれあい、かき落されて淀川よどがわの激流へけ落ちたものが何百人かしれなかった
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「そうです。間に合えば、夜船ででも、淀川よどがわから帰りたいと思いますが」
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
淀川よどがわまで来ると
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)