消息たより)” の例文
ロミオ 御坊ごばうか、消息たよりなんとぢゃ? 殿との宣告いひわたしなんとあったぞ? まだらぬ何樣どのやう不幸ふしあはせが、わし知合しりあひにならうといふのぢゃ?
お前もういなしますか? ああ恋人よ、殿御よ、わがつまよ、恋人よ! きつと毎日消息たよりして下され。これ一時も百日なれば、一分も百日ぢや。
文章その他 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
わたくしは清澄の茂太郎と一緒になりました、あなたにも一度お消息たよりをしようと思っているうちに、つい御無沙汰になってしまいました……
大菩薩峠:20 禹門三級の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
十七歳のときに死んだので、かりにその遺骸をこの寺にあずけたままで、一家は北の方へおもむきましたが、その後なんの消息たよりもありません。
世界怪談名作集:18 牡丹灯記 (新字新仮名) / 瞿佑(著)
予定の時日を京都でついやした自分は、友達の消息たよりを一刻も早く耳にするため停車場を出ると共に、岡田の家を尋ねなければならなかったのである。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ことに、私の心を打ったのは昔の恩人である祖父の安否を気遣って、当てにもならぬ消息たよりを待って、この山奥に暮している父親の尊い心と、その心の中を察して
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)
ああ、心配でならないこと。沖はどないに荒れているか……浜へ行ったら消息たよりがあるかもしれない。……父さんを、かねちゃん……かねちゃん、見に行って来てよ。
嵐の夜 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「……ハハア……それじゃ、お母さんからのお消息たよりが、それからのちちっともないのですね」
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
それについては、わたくしがあまりたびたびたずねるのは、かえって修行しゅぎょう邪魔じゃまになりましょうから、るべく自分じぶん住所じゅうしょはなれずに、ただ折々おりおり消息たよりをきいてたのしむことにいたしましょう。
まる三月みつき、なんの消息たよりもきかぬ小萩、このまゝ、永久に相見る機会がないかもしれぬ小萩、たとえそういう機会があつたにしろ、おそらく、彼の手に再び戻つて来ようとは思えぬ小萩
光は影を (新字新仮名) / 岸田国士(著)
それだのに女は一言も云わず、別れましょうとも切れましょうとも、何とも云わずに姿を消し、今日迄消息たよりしなかったのである。さて、ところで、今逢った。と、そのような冷淡なのである。
剣侠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
それから数年の間は、何をしていたかちっとも消息たよりを聞きませんでしたが、噂によりますと、んでも賭博ですっかり財産を無くしてしまい、内地にも居られなくなってアメリカに渡ったそうです。
水晶の栓 (新字新仮名) / モーリス・ルブラン(著)
そう言って出て行ったきり、お雪からは何の消息たよりもないのであった。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
又八のおばばは、おれをかたきの何のとののしったが、おれは、又八の消息たよりをあのおふくろへ告げることが、自分の責任つとめだ、友達の信義だ、そう思ったからこそ、山木戸をむりに越え、村へ帰って来たのだ。
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
松吉の方からはその晩なんの消息たよりもなかった。
半七捕物帳:05 お化け師匠 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
藤吉からは何の消息たよりもありません。
女難 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
お前もういなしますか? ああ恋人よ、殿御よ、わがつまよ、恋人よ! きつと毎日消息たよりして下され。これ、一時も百日なれば、一分も百日ぢや。
文章その他 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
けれども七兵衛は、この口を守って、中からの消息たよりを待って動かないのは、何か自信があるらしいのであります。
ヂュリ (樓上より)おまへもういなしますか? あゝ、戀人こひびとよ、殿御とのごよ、わがつまよ、戀人こひびとよ! きっと毎日まいにち消息たよりしてくだされ。これ、一ときも百にちなれば、一ぷんも百にちぢゃ。
……もし、あのなかに、そのおともだちがいられたなら、おそらく、もう消息たよりかれますまい。
三つのお人形 (新字新仮名) / 小川未明(著)
あの夕方門の前にたたずんでいた以来は、何の消息たよりもありませんが、しかしその五月前の葉書には、確かに南高来みなみたかき郡大野木村郵便局留置とめおきと、いつもの住所が書いてあったのです。
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)
私の成人する頃には益さんももううちへ来なくなった。おおかた死んだのだろう。生きていれば何か消息たよりのあるはずである。しかし死んだにしても、いつ死んだのか私は知らない。
硝子戸の中 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「時に忠一ちゅういちさんから何か消息たよりがあったか。」
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「下谷の御徒町おかちまちに島田虎之助という先生がある、流儀は直心陰じきしんかげ、拙者が若いうちからの懇意こんいで、今でも折々は消息たよりをする、この人はまさに剣道の師たるべき達人じゃ」
ロミオ さらばぢゃ! かりそめにも機會きくわいさへあれば消息たよりおこたることではない。
ああして追出おんでてしまやがって、その後は、さっぱり消息たよりを聞かねえ、聞きてえとも思わねえし、聞きたくもねえのだが、ロクなことはあるめえよ、本木もときにまさる末木うらきなしでなあ、人間
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
お君が入って来た軽業の一座は、あれから散々ちりぢりになってしまって、またも旅廻りをしているか、江戸へ帰ったか、それさえ消息たよりがないということで、お君は落胆がっかりしました。兵馬も困りました。
消息たよりをいただくと、取るものも取りあえずにこうして急いで参りました。
大菩薩峠:20 禹門三級の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「甲府から帰って以来、さっぱり消息たよりを知らせぬ、あの駒井能登守……」
大菩薩峠:17 黒業白業の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「へえ、たしかにお使者のおもむきを果して参りました、青嵐親分あおあらしおやぶんにお手紙をお手渡しを致して参りました、同時に、あちらの親分からこちらの親分へ、この通り、お消息たよりを持参いたして参りました」
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)