波斯ペルシャ)” の例文
五人のうちで一番若い——十七位の波斯ペルシャ乙女はわけても悲しそうな様子をして眼を泣き脹らしておりましたので妾の注意をひきました。
沙漠の古都 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
なぜなら、現に今夜の若い時間に、彼の妻のいが栗頭の波斯ペルシャ猫がわざわざ私に指示してこの男が良人おっとであると証言したではないか。
踊る地平線:09 Mrs.7 and Mr.23 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
もしも外形だけで云うなら、庄造だってもっと美しい波斯ペルシャ猫だの暹羅シャム猫だのを知っているが、でもこのリリーは性質が実に愛らしかった。
猫と庄造と二人のおんな (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
それから図表、バァイオリンケース、パイプかけ、それから更に波斯ペルシャスリッパー、——……と、それぞれ見まわす目に止まった。
ここで兵士の描写が出ているが、後半に出て来る羅馬軍と波斯ペルシャ軍との戦争は、すこぶる興味のあるものであった。波斯軍は戦象と云うのを用いている。
大衆文芸作法 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
波斯ペルシャの王子、ハルン・アル・ラシドといった王様たちが、大勢の侍臣に付き従われながら悠々と町を練っている光景なぞが、我々の心を躍らせて
ウニデス潮流の彼方 (新字新仮名) / 橘外男(著)
即ち欧洲人は猶太の国を東国と称し、波斯ペルシャ人は彼らを西人と呼んでいる。もっと著しい例は彼の比律賓ヒリッピン群島である。
東西相触れて (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
足音を忍ばして降りて来かかった派手な波斯ペルシャ模様の寝間着の裾と、白い、しなやかな素足の爪先がヒラヒラと、慌てて二階の方へ逃げ上って行ったが
継子 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
印度や西域や波斯ペルシャ、それから大食タージ、イラン文化までずらりと長安に並んでたんだから、まるで今のパリみたいだ。
旅愁 (新字新仮名) / 横光利一(著)
そして実際、その山の木々きぎの秋の葉は、とても美事で、色彩の変化に富んでいたので、波斯ペルシャショールの譬えも決してその現実を誇張したものではなかった。
しばしば見られる六角卓の様式から云って、欧洲のものではなく、印度インド波斯ペルシャあたりのものであろう。時代も明らかではないが二百年前には溯らないであろう。
工芸の道 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
妾は、皮膚の色せた波斯ペルシャ族、半黒黒焼の馬来マレー人、衰微した安南の舞姫のうちにあって、日露戦争役の小さい誇を、桜の花の咲いた日本の衣服に輝かせていました。
バルザックの寝巻姿 (新字新仮名) / 吉行エイスケ(著)
墨西其メキシコ、モンテネグロ、和蘭オランダ波斯ペルシャ葡萄牙ポルトガル羅馬尼亜ルーマニア露西亜ロシア塞耳比亜セルビア暹羅シャム瑞典スウェーデン那威ノルウェー瑞西スイス土耳其トルコ勃牙利ブルガリアの二十六ヵ国の全権大使が会合して、国際的争議を解決するに
文明史上の一新紀元 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
狭い船室で、椅子と小寝台があるきりだから、探す余地も、見廻すところもない。きちんと片附けられた部屋の波斯ペルシャ絨毯の上に、今ジャネットの着ていたドレスが円く脱ぎ捨ててある。
海妖 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
それならオリーブをどうして斉墩樹というかと言うと、この斉墩樹は元来が音訳字であって、それは波斯ペルシャ国でのオリーブの土言ゼイツン(Zeitun)に基いたものに外ならないのである。
植物記 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
窓はことごとく閉め切って、内側からさし込みで留めた上、厚い窓掛を念入に引いてありますし、チークの大テーブルの上も、波斯ペルシャ模様の絨毯じゅうたんの上も、日本語とフランス語の本が一杯に取り散らばしてありますが
流行作家の死 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
埃及エジプト印度いんど支那しな阿剌比亜アラビア波斯ペルシャ、皆魔法の問屋といやたる国〻だ。
魔法修行者 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
そこは古代波斯ペルシャの美術品や写本などの陳列室なのであった。
伸子 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
ニスのような皮膚をしたヌビヤ人、ターバンを巻いた亜剌比亜アラビヤ人。ガウンを纏った波斯ペルシャ人。そうしてみんな喋舌しゃべっていた。多くは大道商人である。
死の航海 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
その感歎はまるで波斯ペルシャをセイロンの旗立てた漁船みたいな潜航艇で潜航しているようなものなのです。
孟買挿話 (新字新仮名) / 吉行エイスケ(著)
ユースタス・ブライトはその山を、波斯ペルシャ風のショールにくるまった、首のないスフィンクスに譬えた。
何も伊太利イタリーとばかりは限らない。佛蘭西フランスでも、英国でも乃至ないし印度インドだの波斯ペルシャだの埃及エジプトだの亜剌比亜アラビヤだのと云う国でも、まだ日本よりは遥かに増しのように感ぜられる。
小僧の夢 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
それから僕は波斯ペルシャを通りメッカを見物し、それからちょっとではあったが、カァールトウムのカリファに、興味ある訪問をした。そしてこの事は僕は、外務省には通報しておいた。
全身が刺青いれずみのように青光りする波斯ペルシャ模様の派手な寝間着を着た、石竹色のしなやかな素足に、これも贅沢な刺繍のスリッパを穿いていたが、その顔は大理石をきざんだように真白くこわばって
継子 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
一方は中央亜細亜アジアから波斯ペルシャに向い波斯ペルシャ湾にでんとする。何でも薄弱なる所に暴力を用いて圧迫したところが、これもまた英国の反抗に出遇ってなかなか容易に志を達することが出来ない。
東亜の平和を論ず (新字新仮名) / 大隈重信(著)
古来複雑なもので、美しいものはまれの稀だといってよいであろう。あの印度インド波斯ペルシャのもので複雑なものがあるが、しかし注視するならそれは錯雑ではなくして、単純の複合であるのを気づくであろう。
工芸の道 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
「亜剌比亜の東端で波斯ペルシャ湾岸であります」
ウニデス潮流の彼方 (新字新仮名) / 橘外男(著)
この女は波斯ペルシャ猫である。
踊る地平線:09 Mrs.7 and Mr.23 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
何んてまあ変わって了ったんだろう? 彼は蒼白まっさおの顔をして(かつてはそれは活々としたピンク色を呈していたではないか。)波斯ペルシャ模様のかもを掛けた長榻ながいすに深く身を埋め
西班牙の恋 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
波斯ペルシャ駐在の英国公使たりし、男爵オーガスタス・モランの息。イートンとオックスフォードに学ぶ。ジョッキとアフガンに従軍し、キャラシァブ、シャープール及びカブールに駐屯したる事あり。
乙女の言葉によりますと、乙女は波斯ペルシャでも由緒正しい絹商人あきんどの愛娘で、その時からちょうど一月前、父母に連れられてコンスタンチノーブルへ観光に来たのだそうでございます。
沙漠の古都 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
印度インド産の黒檀の卓子テーブル波斯ペルシャ織りの花毛氈もうせん。アフガニスタンの絹窓掛け。サクソンの時計。支那の硯。インカ帝国から伝わった黄金こがね作りの太刀やかぶと。朝鮮の人参は袋に入れられ柱に幾個いくつか掛けてある。
波斯ペルシャ織りだの亜剌比亜アラビア織りだのの、高価らしい華麗な壁掛けなどが、現代の眼から見る時には、ペンキ画ぐらいしかの値打かちしかない——しかし享保の昔にあっては、きわめて高雅に思われるところの
生死卍巴 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)