)” の例文
旧字:
緑雨は恐らく最後のシャレの吐きえをしたのを満足して、眼と唇辺くちもとに会心の“Sneer”をうかべて苔下にニヤリと脂下やにさがったろう。
斎藤緑雨 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
一、病中かんなるを幸ひ、諸雑誌の小説を十五篇ばかり読む。滝井たきゐ君の「ゲテモノ」同君の作中にても一頭地いつとうちを抜ける出来えなり。
病牀雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
さういふ手で筆をるのだから、どうせろくな字を書けつこないと自分をけなし切り、人がどんなに出来えをめても決して受け容れなかつた。
上田秋成の晩年 (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
何をやらしても手落ちはないが、非常な傑作も一つもなく、レコードで聴く範囲では、悉く無事な演奏であり、どれも同じような出来えである。
本当に鑑賞の出来るという出来えのものはすこぶすくないのであります、そのうち日本出来のものよりも支那出来の古いものに頗るいいのがある事も知り
楢重雑筆 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
隅々まで舞台えばかりを主眼にしてありまして、利き処利き処には無闇と針金や鯨鬚くじらひげ鉛玉なまりなんぞを使ってあるのですが、それでいてスッキリと
押絵の奇蹟 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
あの若奥さんもお前を信用しているような口吻くちぶりだった。わしは何うだろうかと思ったが、二人ともナカ/\道理わけの分った人で、持ち出しえがあった。
脱線息子 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「ちぇッ——別の人がおいらだなんて言うかい、ニセモノをこしらえたって、ニセモノえがしねえじゃねえか」
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
掴まえどころがない、いかえがない。安兵衛は、眼くばせをして立ち上った。この男、共に事を成すに足らないと見切りをつけたかのようにさげすむ眼を捨てて行った。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
丹誠一つで着させても着させえなきばかりでなく見ともないほど針目がち、それを先刻さっき頑是がんぜない幼な心といいながら、母様其衣それは誰がのじゃ、小さいからはおれ衣服べべ
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
ここにおられる御嶽冠者殿お若いに似合わぬ立派な人物、厄介やっかいになるにもなりえがござる
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
増築の出来えが庸三の期待を裏切ったことはもちろんであったが、一旦請負師の要求に応じて少なからぬ金を渡し、貨車で運ばれた建築用材を庭の真中へ積みこまれてしまうと
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
戦争にかわえがあったら、お目にかかりたいものだが、しかし拙者は変り栄えがないと会得しているから、戦争来たれなどと武者ぶるいはしない。しかし戦火と地を争う愚はしないだけのことだ。
武者ぶるい論 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
たいして変ええもない顔を、生真面目につくって
平賀源内捕物帳:萩寺の女 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
その他の役々、合唱団の出来えも申し分なく、或は『薔薇の騎士』以上に評価する人があるかも知れないが、作者の傾向も、歌われる言葉も違う。
と山下さんは一向帝大えもしていないのに、無暗と愛校心が強い。斯ういうのがあるから、学校も持って行く。
嫁取婿取 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
どうも日本人の貧弱な顔ぢや毛皮の外套ぐわいたうの襟へおとがひうづめても埋めえはしないやうな気がする。
一番気乗のする時 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「おことば、一生の賜物と、えを感じまする。御意ぎょいを胸に持ち、笑って討死も……」
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
初めて見た箱丁はこやは誰も彼もそう言ってよろこんでくれたものだったが、それほど躰が、きっそりして、お神が着物を造るたびに、着せえがしないと言っていつもこぼしていた彼女の姿も
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「後をいてもえもすまいな」
大菩薩峠:07 東海道の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ドゥハンの素質から来る可愛らしさが沁み出して、思いのほかのもうけもののような出来えであった。
(これが、自分が大石の立場であるなら、ふえる白髪しらがも、苦労えというものだが……)
無宿人国記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
出来ることなら、あの娘を世話して上げて下さい、貯金魔の娘というので、世間では相手にしないでしょうが、貴方あなただけは、あの娘の人並優れた美しい心えを御存じの筈です。
悪人の娘 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
智深は悄然しょうぜん麓町ふもとへ降りていった。そして、鍛冶屋の隣の旅人宿へ泊りこんだ。さきに鍛冶屋へあつらえておいた錫杖しゃくじょうが出来上るのを待ったのだ。そしてやがて半月ほど後に、その出来えが見られた。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「働きえがありますな。われわれもこの先は」
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)