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ほんばこ
いままで、たのしかった、
家の
中は、たちまち
笑いが
消えてしまって、
兄は、
自分の
本箱や、
机のひきだしを、
片づけはじめました。
祖母さんがおよめに
來た
時の
古い
長持から、お
前達の
祖父さんの
集めた
澤山な
本箱まで、その
藏の二
階にしまつて
有りました。
森や畑はむろんのこと、物置でも、
戸棚でも、押し入れでも、
本箱でも、どしどし探検してもらいたい。
本箱をさがして、
紫のおん
姉君の、
第七帖を
出すのも
仰々しからう。……
炬燵を
辷つてあるきさうな、
膝栗毛の
續、
木曾街道の
寢覺のあたりに、
一寸はさんで。……
壁には
三味線も
三棹かゝツてゐる、其の下には
桐の
本箱も二つと並べてある。
三四郎は
黙つて
本箱を眺めてゐた。すると座敷から美禰子の声が聞えた。
本箱の
上に、
平和で、
雨や、
風から
遁れて、まったく
安心していられた
時分のことを
思い
出して、なつかしくてなりませんでした。
『これは
大事にして
置くがいゝ。
東京へ
行つたら、お
前の
本箱のひきだしにでも
入れて
置くがいゝ。』
……
本箱の
五ツ
七ツが
家の
五丁目七丁目で、
縱横に
通ずるので。
ある
晩のことです。お
嬢さんは、ふと、いままで
本箱の
上に
置いた、お
人形のことを
思い
出していました。そして、
下女を
呼んで
これをきくと、
正ちゃんは、だまっていましたが、
本箱の
中から、
幾冊かの
雑誌を
取り
出してきて、おきくの
前に
置いて
けれど、お
嬢さんは、そのお
人形に
美しい
着物をきせて、
本箱の
上にのせておきました。かわいらしい
顔つきをしたお
人形は、いつでもにこやかに
笑っていました。
家のものは、その
後も、
兄がいるときと
同じように、そうじはするけれど、だれも、
手をつけようとしなかったので、
本箱のなかも、たなのかざりも、
兄が
出ていったときのままとなっていて