早速さそく)” の例文
人の哀れを面白げなる高笑たかわらひに、是れはとばかり、早速さそくのいらへもせず、ツとおのが部屋に走り歸りて、終日ひねもすもすがら泣き明かしぬ。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
しかし今一度思案して見い。余の儀とも違うて、早速さそくに返答のならぬ筈のことを性急に催促したはわしのあやまりじゃ。これは一晌半日を
小坂部姫 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
いきつぎにみづもとめたが、注意ちうい水道すゐだう如何いかんこゝろみたたれかが、早速さそく警告けいこくしたのであらう。夢中むちうたれともおぼえてない。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
兵法ではすべて、早速さそくの機というものを尊ぶ。こちらに備えあるも、敵が備えを破るに備えの裏を掻いて来る場合は、かえって、こちらが出鼻の誤算を
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
(中略)さて此娘、(中略)つとめにいづる其日より、富豪の大臣かかり、早速さそくに身うけして、三八夫婦母おやも大阪へ引きとり、有りしにかはるくらしと成り
案頭の書 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
その中にひとみきている。動かないでしかも活きている刹那さつなの表情を、そのまま画布に落した手腕は、会心の機を早速さそくに捕えた非凡のと云わねばならぬ。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
さあそなたも此方へ、と云ひさして掌に持たれし花を早速さそくに釣花活に投げこまるゝにぞ、十兵衞なか/\おめず臆せず、手拭で足はたくほどの事も気のつかぬ男とて為すことなく
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
夜が明けると、早くから飛び起きて、すぐにメリヤスの襯衣シャツに浴衣で、ドアを押して見たが、さっと来る雨霧に慌てて首をすっ込ますと、早速さそくにレインコートを引っかぶってしまった。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
早速さそくに一人が喜助と云う身で、若い妓の袖に附着くッつく、前後あとさきにずらりと六人、列を造って練りはじめたので、あわれ、若い妓の素足の指は、爪紅つまべにが震えて留まる。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
綾錦の装束なりとも七重八重かさねて仕立てさするは、十日か半月のひまにもなることじゃ。但しはほかに子細のあることか。この謎を早速さそくに判じておくりゃれ。
小坂部姫 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
はつと驚ろいた三四郎の足は、早速さそくの歩調にくるひが出来た。其時透明な空気の画布カンヷスなかくらゑがかれた女のかげ一歩ひとあし前へうごいた。三四郎もさそはれた様に前へ動いた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
さあそなた此方こちへ、と云いさしてに持たれし花を早速さそく釣花活つりはないけに投げこまるるにぞ、十兵衛なかなかめずおくせず、手拭てぬぐいで足はたくほどのことも気のつかぬ男とてなすことなく
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
それこそ真っ黒々に汚ごしきって、すなわち早速さそくどじょうすくいと来た。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
女でこそあれこの桂も、御奉公はじめの御奉公納めに、このおもてをつけてお身がはりと、早速さそくの分別……。
修禅寺物語 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
小野さんは早速さそくの返事を忘れて、暗い部屋のなかにすくまるような気がした。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
女でこそあれこの桂も、御奉公はじめの御奉公納めに、このおもてをつけてお身がわりと、早速さそくの分別……。
修禅寺物語 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ただ小野さんは勝手な神に恋の御賽銭おさいせんを投げて、波か字かの辻占つじうらを見てはならぬ。小野さんは、この黒い眼から早速さそくに放つ、見えぬ光りに、空かけて織りなした無紋の網に引き掛った餌食えじきである。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
しかの大石は自然に落ちて来たのか、あるいは故意に投げ落したのか、巡査には早速さそくの判断が附かなかった。し故意であるとすれば、四辺あたりには𤢖の同類がなおひそんでいるに相違ない。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)