日射ひざし)” の例文
六月下旬の日射ひざしがもう正午ひるに近い。山國の空は秋の如く澄んで、姫神山ひめかみさんの右の肩に、綿の樣な白雲が一團、彫出ほりだされた樣に浮んでゐる。
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
さて、その青鳶あおとびも樹にとまったていに、四階造しかいづくり窓硝子まどがらすの上から順々、日射ひざし晃々きらきらと数えられて、仰ぐと避雷針が真上に見える。
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
六波羅を落ちていらい、食も眠りも足りていない人々には、この日射ひざしに目がくらみそうだった。
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ふと見ると、日射ひざしのいい道の片側に、子供が五六人がやがや遊んでゐた。そのなかに七歳なゝつばかりの男のが、たつた一人仲間を離れて、並木の蔭で小さな車にまたがつてゐた。
だらだら坂を登り切ると、丘の頂上は喬木きょうぼく疎林そりんとなり、その間を縫うみちを通るとき、暑い午後の日射ひざしは私の額にそそぎ、汗が絶え間なくしたたった。林をぬけると、やや広闊こうかつな草原があった。
桜島 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
日射ひざしの遠い北の窓近くに、母衣蚊帳が拡げてある。赤ん坊がすやすや眠っている。傍で敏子は針仕事をしている。引きつめた束髪に結っている。それが彼女によく似合って、年齢よりは若く見せる。
裸木 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
落葉多しすこし掃かめと掃きゐたり夕さり寒き日射ひざしむかひて
雀の卵 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
六月下旬すゑ日射ひざしが、もう正午ひるに近い。山国さんごくの空は秋の如く澄んで、姫神山の右の肩に、綿の様な白雲が一団ひとかたまり、彫出された様に浮んでゐる。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
紅葉こうよう先生は、その洋傘が好きでなかった。さえぎらなければならない日射ひざしは、扇子おうぎかざされたものである。従って、一門のたれかれが、大概たいがい洋傘を意に介しない。
栃の実 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
常掃きて日射ひざしとほせばうやうやしこの牛小屋の青牛のかげ
海阪 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
日射ひざしが上からちぢまつて、段々下に落ちて行く。さつへやの中が暗くなつたと思ふと、モウ私の窓から日が遁げて、向合つた今井病院の窓が、にはかにキラ/\とする。
菊池君 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
あの底知らずのたつくちとか、日射ひざし其処そこばかりはものの朦朧もうろうとしてよどむあたりに、——そよとの風もない折から、根なしに浮いた板ながら真直まっすぐに立つて居た白い御幣が
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
熟麥うれむぎの大麥の穗を照りつくる六月の日射ひざしくらきがごとし
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
日射ひざしもそこばかりはものの朦朧もうろうとしてよどむあたりに、——そよとの風もない折から、根なしに浮いた板ながら真直まっすぐに立っていた白い御幣が、スースーと少しずつ位置をえて
伯爵の釵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
日射ひざしは午後四時に近い、西向の校舎は、うしろの木立の濃い緑と映り合つて殊更に明るく、授業はとうに済んだので、たひらかな運動場には人影もない、夏も初の鮮かな日光が溢れる様に流れた。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
熟麦うれむぎの大麦の穂を照りつくる六月の日射ひざしくらきがごとし
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
そこでつぼめて、逆上のぼせるばかりの日射ひざしけつつ、袖屏風そでびょうぶするごとく、あやしいと見た羽目の方へ、袱紗ふくさづつみを頬にかざして、しずかに通る褄はずれ、末濃すそごに藤の咲くかと見えつつ。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
日射ひざしは午後四時に近い。西向の校舍は、後ろの木立の濃い緑と映り合つて殊更に明るく、授業は既に濟んだので、たひらかな運動場には人影もない、夏も初の鮮かな日光が溢れる樣に流れた。
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
庭苔の強き日射ひざしを時かず散らひ舞ひ來る細き葉や何
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
拝殿はいでん裏崕うらがけには鬱々うつうつたる其の公園の森をひながら、広前ひろまえは一面、真空まそらなる太陽に、こいしの影一つなく、ただ白紙しらかみ敷詰しきつめた光景ありさまなのが、日射ひざしに、やゝきばんで、びょうとして、何処どこから散つたか
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
五尺に七尺程の粗末な椴松とゞまつの大机が据ゑてある南の窓には、午後一時過の日射ひざしが硝子の塵を白く染めて、机の上には東京やら札幌小樽やらの新聞が幾枚も幾枚も擴げたなりに散らかつて居て
病院の窓 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
庭苔の強き日射ひざしを時かず散らひ舞ひ来る細き葉や何
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
拝殿の裏崕うらがけには鬱々うつうつたるその公園の森を負いながら、広前ひろまえは一面、真空まそらなる太陽に、こいしの影一つなく、ただ白紙しらかみを敷詰めた光景ありさまなのが、日射ひざしに、ややきばんで、びょうとして、どこから散ったか
伯爵の釵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
五尺に七尺程の粗末な椴松とどまつの大机が据ゑてある南の窓には、午後一時過の日射ひざしが硝子の塵を白く染めて、机の上には東京やら札幌小樽やらの新聞が幾枚も幾枚も拡げたなりに散らかつて居て
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
強い日射ひざしのそこここに若いこころのむせぶ音。
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
ひたおもて日射ひざしにくわつと照りかへる。
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)