拳銃ピストル)” の例文
「それから、窓は相当に高いから、背の低い岡崎さんでは、三角棚の上から拳銃ピストルを取ることも、狙いを定めることも、六つかしい」
音波の殺人 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
孫伍長はポケットの中で撃った拳銃ピストル無造作むぞうさにとり出して倒れかかる中尉へ更に数弾を浴せかけた。犬でも射殺するような態度だった。
雲南守備兵 (新字新仮名) / 木村荘十(著)
B首領の「折れた紫陽花」は決心をしたものか、その返事の代りに、ズドンズドンと拳銃ピストル銃口つつぐちを、組みあった二人の方に向けた。
流線間諜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
もう仕方がない! わめかれてはやむを得なかった。カチリ、シューッ! カチリ、シューッ! と続けざまに私の拳銃ピストルは火花を発した。
陰獣トリステサ (新字新仮名) / 橘外男(著)
「ああ、今度は火精ザラマンダーか⁉ すると、拳銃ピストルか石火矢かい。それとも、古臭いスナイドル銃か四十二ポンド砲でも向けようという寸法かね」
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
それでこの後は私は、一つ待ち伏せしてやろうと思い立って、拳銃ピストルを持って、私の書斎に位置を取り、芝生や庭を見張りました。
それにしても、どうしてあの拳銃ピストルを取ったか、そして、引金に指をかけたか、庄太郎にはそのきっかけが、少しも思い出せないのだった。
灰神楽 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
兄は死んだ、間違いか故意か? 空弾の筈の拳銃ピストルに実弾が入っていたのである。そして秘密を握ったまま射殺されてしまったのだ。
劇団「笑う妖魔」 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
一個の拳銃ピストルと一挺の短刀ダガーとを以て我意の法律を貫徹して行く、野性亜米利加人そのままの気魄を遺憾なく発揮したものであった。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
皆は柏原氏が悪いとめてしまつた。実際それはよくない、貧乏人に百円札を見せつけるなんて、富豪に拳銃ピストルをおつつける以上に罪がふかい。
全身の重みで、サミイを押し倒しますと、アンが大声に叫んで、食堂へ走り込んだと思うと、大きな旧式な拳銃ピストルを持って直ぐ飛び込んで来ました。
アリゾナの女虎 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
彼の風態ふうていのうちにはその灰色の短衣が装填された拳銃ピストルをかくし、白いチョッキが警察章をかくし、またその麦藁帽が
永く外国の生活をしている程の伯父であるから、或は拳銃ピストルの一挺位は所持っていたかも知れないが、それにしてもついぞ伯父の拳銃を見た事はない。
P丘の殺人事件 (新字新仮名) / 松本泰(著)
私は窓に馳け寄り拳銃ピストルを胸にあてて発射したが、怪物は身をかわし、居たところから跳び下り、電光のような速さで走っていって、湖水に跳びこんだ。
「駄目よ、あの子は、拳銃ピストルとか木剣ぼっけんとか、人殺しのできそうなものでなくっちゃ気に入らないんだから。そんな物こんないきな所にあろうはずがないわ」
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
し君が僕に向かって君の手袋を投げ付けるなら、喜んで拳銃ピストルの用意をしよう。西班牙流に放射ち合おうね……
西班牙の恋 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
なぜというに、咄嗟とっさ拳銃ピストルを引出すのは、最新流行の服の衣兜かくしで、これを扱うものは、世界的の名探偵か、兇賊きょうぞくかでなければならないようだからである。
その拳銃ピストルは、今年の夏、彼が日本アルプスの乗鞍ヶ岳から薬師ヶ岳へ縦走したときに、護身用として持つて行つて以来、つい机の引出しに入れて置いた。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
いくらおとなしくしてゐてもきりがありませんので、スタンレーは拳銃ピストルを取り出して、数発うつてみせました。
アフリカのスタンレー (新字旧仮名) / 豊島与志雄(著)
丹後守は戸棚の中から桐の箱を取り出して、打懸うちかけたひもをとくと、手に取り上げたのは一挺の拳銃ピストルであります。
それをまた途上に擁して毎晩「卓子テーブル」で見た顔が拳銃ピストルを突きつけるやら——「みどり色の誘惑」は時として意外な方向と距離にまで紳士淑女をあやつってまない。
踊る地平線:09 Mrs.7 and Mr.23 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
申しこむところなんだ……武器は拳銃ピストル、距離は三歩……ハンカチを上からかぶせてな……ハンカチを!
第二は、ファトゥー射的場の隣だったので、終日拳銃ピストルの音がして、それにたえ得なかったからである。
大尉が、いかんいかん、と云つて手をふりますと、山烏はピカピカする拳銃ピストルを出していきなりずどんと大尉を射殺いころし、大尉はなめらかな黒い胸を張つて倒れかゝります。
烏の北斗七星 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
この一団に気づかれたら、矢っ張り私は追跡されるであろう、なぜなら地主の家で買収した経川の「雞」を、私は森の拳銃ピストル使いの手先きとなって盗み出したことがある。
ゼーロン (新字新仮名) / 牧野信一(著)
可驚おどろくべし、ヌッと現れた拳銃ピストル二挺。……自分の椅子の背後から、黒い口を開いてドーブレクの腹の辺をピタリと狙っている。ドーブレクの恐怖の顔色は次第に蒼ざめて来た。
水晶の栓 (新字新仮名) / モーリス・ルブラン(著)
去年老爺おやぢの一人息子がこの客室サロンで風来の労働者の客に勘定の間違まちがひから拳銃ピストルで殺されて以来、気丈な老爺おやぢも「暗殺」と云ふことばんで別名の方ばかりを用ゐようとして居るのだが
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
車掌はまもなく喇叭銃を武器箱の中へ戻し、それから、その中にある他の武器をしらべ、自分の帯革につけている補充用の拳銃ピストルを検べると、自分の座席の下にある小さな箱を検べてみた。
「ドローレス! 眼を開けてようく見ろ! これが貴様には見えぬのか? これが」と私は初めて扉を離れて犬に向って拳銃ピストルを構えた。
陰獣トリステサ (新字新仮名) / 橘外男(著)
ピカリと光る小型の拳銃ピストル詩子ふみこはなんにも知らずに、大阪へ行った良人おっとの事などを考えて居るのでしょう。編物の手も暫くは動きません。
身代りの花嫁 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
「動くな、動くと撃つぞ‼」春田君は拳銃ピストルを向けながら叫んだ「立て、歩くんだ‼」そしていやッというほど尻を蹴とばした。
危し‼ 潜水艦の秘密 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
ねらっているのは博士だった。佐々の右手にはブローニングらしい拳銃ピストルが握られていた。博士が動けば、撃とうというのらしい。
地球盗難 (新字新仮名) / 海野十三(著)
切羽せっぱつまったヤンが拳銃ピストルをだそうとすると、その手にまたパッとびついた。それなり二人は、ひっ組んだまま地上を転がりはじめたのだ。
人外魔境:01 有尾人 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
現在小生のポケットに納めております五連発の拳銃ピストルは、その時の形見でありまして、既に六人の生命いのちを奪ったものであります。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
彼はその時もまだ手にしていた拳銃ピストルを、死人のそばへ投げ出すと、ソロソロと階段の方へ行こうとした。そして、一歩足を踏み出した時である。
灰神楽 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
ポケットの中には拳銃ピストルが秘められ、私の胸は無暗にわくわくとふるえた。ホームズはと見れば、冷静に粛然と黙している。
西部ウエストには、まだ金坑狂時代ゴールド・ラッシュの「野蛮海岸バアバリ・コースト」の風が遺って、全国何となく二挺拳銃ピストルの荒っぽい気分から脱し切れない。
斧を持った夫人の像 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
が、目的はただ一つなんだからね、(拳銃ピストルはまだかね、)と札口で聞いたが、(え、)と札売の娘はわかりかねる。
私は拳銃ピストルをひっ掴み、土人乙女が置いて行った弓矢をダンチョンに手渡すや否や二人は小屋から飛び下りて、走る獣の中に混って風下の方へ逃げ出した。
沙漠の古都 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
その拳銃ピストルは、今年の夏、彼が日本アルプスの乗鞍のりくらヶ岳から薬師ヶ岳へ縦走したときに、護身用として持って行って以来、つい机の引出しに入れて置いた。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
即ち仮に伯父が拳銃ピストル発射うったものとすれば、被害者が倒れると共にそのまま遁走するのが自然である。
P丘の殺人事件 (新字新仮名) / 松本泰(著)
拳銃ピストルの音を聞いて、人がたくさん部屋にやって来た。やつが見えなくなった地点を指さすと、みんなボートに乗って追跡し、網を打ったりしたが、何にもならなかった。
大尉が、いかんいかん、と云って手をふりますと、山烏はピカピカする拳銃ピストルを出していきなりずどんと大尉を射殺いころし、大尉はなめらかな黒い胸を張ってたおれかかります。
烏の北斗七星 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
拳銃ピストルの引金を引くのである、——何よりもこの仕事が辛くて、凡そ臆病なあたしは、いつも寒さからではなしにさうした間中いろいろな震へを覚えて生きた心地さへ忘れたものであつたが
鵞鳥の家 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
大佐の部屋から引下って来た孫軍曹は、中庭の隅で吠え立てた、獰猛どうもう西蔵犬チベットけんを射殺しかねないほど興奮していた。犬はつないであったのだが、彼は滅茶滅茶に拳銃ピストルでもぶッ放したい気持だった。
雲南守備兵 (新字新仮名) / 木村荘十(著)
「だから甘い——と言うじゃありませんか、拳銃ピストルは三角棚の傍の、窓から撃ったんですよ、あの三角棚と窓はスレスレじゃありませんか」
音波の殺人 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
私を世に起たしめる上にこの鈍色にぶいろをした拳銃ピストル一梃の持つ人生克服の威力、にすらも遠く及ばざることを感じたことはなかったのであった。
陰獣トリステサ (新字新仮名) / 橘外男(著)
伊藤豊治は恐怖のあまり、我を忘れて拳銃ピストルの引金に指をかけた。と博士はその手首をぐいと強く掴み、動くな! と云うように押えつけた。
亡霊ホテル (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
僕はドンドン気軽に撃って、彼女にも撃たせようとしたが、ダリアは早くも危険をさとって拳銃ピストルをとりあげようとはしなかった。
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
どうして二階へ上ったか、どうして拳銃ピストルを拭き清めたか、それからどうして門前へ出て来たか、後で考えると、少しも記憶に残っていなかった。
灰神楽 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)