押出おしだ)” の例文
出家は、上になんにもない、小机こづくえの前に坐って、火入ひいればかり、煙草たばこなしに、灰のくすぼったのを押出おしだして、自分も一膝ひとひざ、こなたへ進め
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
度を失った荒くれ共、帽子だ拳銃ピストルだと騒ぎながら表へ押出おしだそうとした、その時、倉庫の入口へふいに現われて
黒襟飾組の魔手 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
きはめて押出おしだ門口かどぐち慈悲じひ一言ひとことれをとわびるもくもなん用捨ようしやあらくれしことばいかりをめてよめでなししうとでなし阿伽あか他人たにんいへでなしなんといふとももうはぬぞ
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
此の間おうちへお寄り申そうと思いまして参ると、番頭さんが何とか云いましたっけ、治平じへいさんかえ、武骨真面目なお方で、うんとお店に坐っている様子てえものは、実に山が押出おしだしたような姿で
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
若い女はそういって立上ると、ともづなを解いた舟を中流に押出おしだします。
と、その細い、かすかな、空を通るかと思う雨の中に、図太い、底力そこぢからのある、そして、さびのついた塩辛声しおからごえを、腹の底から押出おしだして
春昼後刻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
挨拶あいさつとともに番頭ばんとうがズイとてのひら押出おしだして、だまつて顏色かほいろうかゞつた、ぼんうへには、湯札ゆふだと、手拭てぬぐひつて、うへ請求書せいきうしよ、むかし「かの」とつたとくがごと形式けいしきのものが飜然ひらりとある。
城崎を憶ふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
老爺ぢいしはぶきひとわざとして、雪枝ゆきえ背中せなかとん突出つきだす。これに押出おしだされたやうに、蹌踉よろめいて、鼓草たんぽゝすみれはなく、くも浮足うきあし、ふらふらとつたまゝで、双六すごろくまへかれ両手りやうていてひざまづいたのであつた。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
のんのんのんのんと押出おしだしたとある……板の間ヶ原や、古戦場。
霰ふる (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
のん/\のん/\と押出おしだしたとある……いたはらや、古戰場こせんぢやう
霰ふる (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
行儀ぎょうぎわるく、火鉢をななめに押出おしだしながら
縁結び (新字新仮名) / 泉鏡花(著)