御厄介ごやっかい)” の例文
文「姉さん、帰るんならどうせ通道とおりみちだから送って上げよう、大きに御厄介ごやっかいになりました、明日あした来て奉公人や何かへわびをしましょう」
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「ええ、皆無事で暮らしてるようです。こちらへも御厄介ごやっかいになったろうッて、吾家うちのものからよろしくと言って来ました。」
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「半四郎さん、どうも御苦労さま、とんだ御厄介ごやっかいでございます。そこらあぶのうございますからお気をつけなすって……」
水籠 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
「あ、もし、太夫様にお眼にかかれぬならば、あの、お松と申す女の子が、このお家に御厄介ごやっかいになっておりまするとやら」
先月は大勢で御厄介ごやっかいになりその上久振に播半で結構なおもてなしにあずかり、故郷のよさをしみじみ味わうことが出来てうれしゅうございました。
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
お延がせんを越して、「御厄介ごやっかいになります」とこっちから挨拶あいさつをしたので、始めて気がついたように、看護婦も頭を下げた。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
妹たちも今申したとおりじゅくに入れてしまいますし、この後はこれといって大して御厄介ごやっかいはかけないつもりでございます。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
前生の因縁だったのでございましょうね、不意にお宅で御厄介ごやっかいになることになりましてから、長い間どんなに御親切にしていただいたことでしょう。
源氏物語:19 薄雲 (新字新仮名) / 紫式部(著)
「少し事情がありますので御厄介ごやっかいになったのでございます。おたずね下さらなければうれしゅうございます。」
津の国人 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
其様そんな手紙は未だ見なかったのである。来意らいいを聞けば、信州の者で、一晩ひとばん御厄介ごやっかいになりたいと云うのだ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
この上、お坊ちゃまに御厄介ごやっかいをお掛け申すのは、この衛門、とても忍びのうございますでな。それに、お坊ちゃま。(がらになく恥しそうに笑う)へ、へ、へ、へ、へ、………
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
こんなに遅く外を歩くのはいやですけれど、でも、雪之丞のことを考えると、ムラムラして、とてものんびり御厄介ごやっかいになれませんし、それに、お宅で泊めていただいたら、明日
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
では御厄介ごやっかいになってすぐに仕事に突っ走ります、と鷲掴わしづかみにした手拭てぬぐいで額き拭き勝手の方に立ったかとおもえば、もうざらざらざらっと口の中へち込むごとく茶漬飯五六杯
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
御蔭様おかげさまでヤット回復致しましたから、今日限り退院さして頂こうと思いまして、実は御相談に参りました次第ですが……どうも永々御厄介ごやっかいに相成りまして、何とも御礼の申上げようがありません。
キチガイ地獄 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
内々直したる初心さ小春俊雄は語呂ごろが悪い蜆川しじみがわ御厄介ごやっかいにはならぬことだと同伴つれの男が頓着とんじゃくなく混ぜ返すほどなお逡巡しりごみしたるがたれか知らん異日の治兵衛はこの俊雄今宵こよい色酒いろざけ浸初しみはじ鳳雛麟児ほうすうりんじは母の胎内を
かくれんぼ (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)
「わしんとこの吉が御厄介ごやっかいになっとりますそうで、——」
東京要塞 (新字新仮名) / 海野十三(著)
このとおりこちらの御厄介ごやっかいになることになりました。
大江山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
どうもこれはとんだ御厄介ごやっかいをかけましたね。御酒ごしゅ
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
「これは、どうも、御厄介ごやっかいをかけますな」
竈の中の顔 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「お待たせいたした。御厄介ごやっかいながら」
剣の四君子:02 柳生石舟斎 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
町「いゝえ、少しも痛みはしません、なんの貴方、長い旅に是しきの事で御厄介ごやっかいになりましては、思ったことが遂げられませぬ」
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
御宅でも皆様御変りもなく……毎々欽吾きんご藤尾ふじおが出まして、御厄介ごやっかいにばかりなりまして……せんだってはまた結構なものをちょうだい致しまして
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
青山君、こんなにおそく上がって御迷惑かもしれませんが、今夜一晩御厄介ごやっかいになれますまいか。青山君はまだわたしたちのことを何もお聞きになりますまい。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「こんなお取り次ぎによっての会談は私に経験のないことです。失礼ですが、今夜こちらで御厄介ごやっかいになりましたのを機会にまじめに御相談のしたいことがございます」
源氏物語:05 若紫 (新字新仮名) / 紫式部(著)
ほんまによろしございますか? わたし先生にはもう毎度々々おやさしいにしていただきますもんですから、つい御親切に甘える気イになって、御厄介ごやっかいにばっかりなりまして
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
亀屋かめや旦那だんな、おれとおきちと婚礼の媒妁役なこうどやくして呉れたを恩に着せるか知らぬが貴様々々はよして下され、七七四十九が六十になってもあなたの御厄介ごやっかいになろうとはもうしませぬ、お辰は私の姪
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
あんな所からいきなり飛び出して来てこうなれなれしく早月さつきさんにお話をしかけて変にお思いでしょうが、僕は下らんやくざ者で、それでも元は早月家にはいろいろ御厄介ごやっかいになった男です。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
「いつまでもこうして御厄介ごやっかいになってはおられぬ、拙者は立退こうと思う」
大菩薩峠:05 龍神の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「はい、あれからずっと御厄介ごやっかいになっています。」
津の国人 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
「——帆村はんの、あつかましいのに、うち呆れてしもうた。あんな人やあらへんと思うてたのにほんまにいやらしい人や。さあ、お松。もうこんなところに御厄介ごやっかいになっとることあらへんしい。はよ、うちへいのうやないか」
蠅男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
彼女はこの夫人を見るや否や、うやうやしく頭を下げて、「毎度津田が御厄介ごやっかいになりまして」と云った。けれども夫人はその時その津田については一言ひとことも口を利かなかった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
あの時は二日二晩も歩き通しに歩いて、中津川へたどり着くまでは全く生きた心地ここちもありませんでした。浅見君のお留守宅や青山君のところで御厄介ごやっかいになったことは忘れませんよ。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
見違みちげえるように大きくお成んなすったねえ、わっちが前橋に居りやした時分には、大旦那には種々いろ/\御厄介ごやっかいになりまして、余り御無沙汰になりましたから、郵便の一つも上げてえと思っては居りやしたが
「どうも小六が御厄介ごやっかいになりまして」とこっちから頭を下げて礼を云う事もあった。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
なにしろ、お前さま、昨年の十一月に伊那を出るから、わたくしも難儀な旅をいたしまして、すこしからだを悪くしたものですから、しばらく敦賀つるがのお寺に御厄介ごやっかいになってまいりました。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
藤尾が始終しじゅう御厄介ごやっかいになりまして——さぞわがままばかり申す事でございましょう。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その上で、とうてい役に立たないと事がきまれば帰ります。きっと帰ります。僕だって、それだけの仕事が出来ないのに、おしを強く御厄介ごやっかいになってる気はないんですから。僕は十九です。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「あたしこれでも津田へ行ってからまだ一晩も御厄介ごやっかいになった事はなくってよ」
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「ありがとうございます。いろいろ御厄介ごやっかいにばかりなりまして」
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)