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巧緻
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こうち
ふりがな文庫
“
巧緻
(
こうち
)” の例文
「ざんぎり地蔵」「へっつい幽霊」「のざらし」「石返し」、さては「猫の災難」と、奇妙に、ひねくれていて
巧緻
(
こうち
)
なりし市馬。
随筆 寄席囃子
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
為山氏の画は
巧緻
(
こうち
)
精微
(
せいび
)
、不折君の画は
雅樸
(
がぼく
)
雄健
(
ゆうけん
)
。為山氏は熟慮して後に始めて筆を下し不折君はいきなりに筆を下して縦横に画きまはす。
墨汁一滴
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
水晶の針を集めたような実物の結晶の
巧緻
(
こうち
)
さは、普通の教科書などに出ている顕微鏡写真とはまるで違った感じであった。
雪を作る話
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
それには、パノラマ発明者の
巧緻
(
こうち
)
なまやかしがあるのです。この光景のバックは円形建物の壁です。そこに真に迫った油絵の風景を描くのです。
影男
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
以上の二句のごときは元禄時代の句とたいした相違を見出しませんが、ただ繊細な
巧緻
(
こうち
)
なところがあるのを多少の変化と認めなければなりますまい。
俳句とはどんなものか
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
▼ もっと見る
豈
(
あに
)
図
(
はか
)
らんや造物の脚色は、
綺語
(
きご
)
の奇より奇にして、狂言の妙より妙に、才子の才も敵する
能
(
あた
)
わざるの
巧緻
(
こうち
)
あり、妄人の妄も及ぶ可からざるの警抜あらんとは。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
そういう
巧緻
(
こうち
)
でないようなところがあっても、
真率
(
しんそつ
)
な心があらわれ、自分の心をかえりみるような態度で、「来にけり」と詠歎したのに棄てがたい響がある。
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
女性らしい思いやりのある、
巧緻
(
こうち
)
な演奏である(ビクターJD一〇七六—九)。最後に「ピアノ協奏曲第二七番変ロ長調K五九五」はシュナーベルが弾いている。
楽聖物語
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
(著)
岡は窓ぎわに行ってカーテンの陰から戸外をすかして見て、ポケットから
巧緻
(
こうち
)
な浮き彫りを施した金時計を取り出して時間を読んだりした。そして少し
躊躇
(
ちゅうちょ
)
するように
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
彼の才能は余りに
繊弱
(
せんじゃく
)
で、
巧緻
(
こうち
)
に過ぎ、鏡花先生の悪い所にばかりカブレてゐた。
青春物語:02 青春物語
(新字旧仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
その晩、
梅信亭
(
ばいしんてい
)
で饗宴が
催
(
もよお
)
された。この町の若い
美技
(
びぎ
)
が輪になって、そこで、
紅
(
あか
)
い頭巾に花笠、
裁付袴
(
たっつけばかま
)
のそろいで、本場の木曾踊りを踊った。だがあまりに
巧緻
(
こうち
)
に過ぎ、柔軟に過ぎた。
木曾川
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
さて意識の提議する所に依ると、純一たるものはこの際行うべき或る事を決定して、それを段落にして、無理にも気を落ち着けて寐るに
若
(
し
)
くはない。その或る事は
巧緻
(
こうち
)
でなくても
好
(
い
)
い。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
それは
太守
(
たいしゅ
)
も、
刈屋頼母
(
かりやたのも
)
も、まったく望みを絶っていた、
増長天王
(
ぞうちょうてんのう
)
の
陶器像
(
すえものぞう
)
。しかも一点の
瑕
(
きず
)
なく
彫琢
(
ちょうたく
)
の
巧緻
(
こうち
)
染付
(
そめつけ
)
の
豪華
(
ごうか
)
絢麗
(
けんれい
)
なこと、
大川内
(
おおかわち
)
の山、開いてこの
方
(
かた
)
、かつて見ない
色鍋島
(
いろなべしま
)
の神品。
増長天王
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
楽浪
(
らくろう
)
の遺物が大部分を占めている。二千余年前の朝鮮にこんな文明があったのかと思って驚嘆したのである。漆器美術の
巧緻
(
こうち
)
なことは、我々芸術を解せぬ者にも、当時の人の雅趣が思われたのだ。
淡紫裳
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
ことに
亜米利加
(
アメリカ
)
あたりでは、人間の工賃が高くて機械による生産費のほうがずっと安く上るから、何でもかんでも劃一的に機械で多量生産してしまうんだが、機械では
巧緻
(
こうち
)
な味が出ないとあって
踊る地平線:12 海のモザイク
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
かれの文体は、後年には端的な
奔放
(
ほんぽう
)
性を、
巧緻
(
こうち
)
な
斬新
(
ざんしん
)
な陰影を欠いた。
ヴェニスに死す
(新字新仮名)
/
パウル・トーマス・マン
(著)
これは精密
巧緻
(
こうち
)
な方法で実現された新地獄に違いなく、ここではすべて人間的なものは
抹殺
(
まっさつ
)
され、たとえば屍体の表情にしたところで、何か模型的な機械的なものに置換えられているのであった。
夏の花
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
そこには安易や
恣意
(
しい
)
や職人的な
巧緻
(
こうち
)
や、そのようなものからおよそ遠いものの支配していることに気をつけよう。それは『新古今集』にも、職人的な巧みさだけの歌も、なかなか多く存している。
中世の文学伝統
(新字新仮名)
/
風巻景次郎
(著)
此
(
この
)
車輪
(
しやりん
)
を
運轉
(
うんてん
)
する
動力
(
どうりよく
)
は、
物理學上
(
ぶつりがくじやう
)
の
種々
(
しゆ/″\
)
なる
原則
(
げんそく
)
を
應用
(
おうよう
)
せる、
極
(
きは
)
めて
巧緻
(
こうち
)
なる
自轉
(
じてん
)
の
仕組
(
しくみ
)
にて、
車内
(
しやない
)
前部
(
ぜんぶ
)
の
機械室
(
きかいしつ
)
には「ノルデン、インヂン」に
髣髴
(
ほうふつ
)
たる、
非常
(
ひじやう
)
に
堅牢
(
けんらう
)
緻密
(
ちみつ
)
なる
機械
(
きかい
)
の
設
(
まう
)
けありて
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
天明の句は細心で
巧緻
(
こうち
)
である。
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
水晶の針を集めたような実物の結晶の
巧緻
(
こうち
)
さは、普通の教科書などに出ている顕微鏡写真とはまるで異った感じであった。
雪
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
土佐派の
巧緻
(
こうち
)
や伝彩の華麗もない。——主体は墨である。
随筆 宮本武蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
驚くべき
巧緻
(
こうち
)
な背景——伴奏部を与えることに成功した。
楽聖物語
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
(著)
巧緻
(
こうち
)
を極めていたのである。
押絵と旅する男
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
白樺
(
しらかば
)
の老樹の
細
(
こまか
)
い枝が樹氷につつまれて空一面に交錯している間に、
僅
(
わず
)
かばかりの空所があって、その間を静かに降って来る雪の結晶は、予期以上に繊細
巧緻
(
こうち
)
を極めた構造のものであった。
雪雑記
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
“巧緻”の意味
《名詞》
巧緻(こうち)
精巧で、また緻密であること。
(出典:Wiktionary)
巧
常用漢字
中学
部首:⼯
5画
緻
常用漢字
中学
部首:⽷
16画
“巧”で始まる語句
巧
巧者
巧妙
巧拙
巧言
巧言令色
巧々
巧手
巧奴
巧計