天井裏てんじょううら)” の例文
(たしかにそうだわ。例の重要物件は、旦那様の懐中を出て、あの空気抜きの網格子あみごうしをあげて、天井裏てんじょううらに隠されたのにちがいない!)
什器破壊業事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そこで何だか今まで頭をぶっつけたひく天井裏てんじょううらくなったような気もするけれどもまた支柱しちゅうをみんなってしまったさくらの木のような気もする。今日の実習じっしゅうにはそれをやった。
或る農学生の日誌 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
宗十郎がすすけた天井裏てんじょううらを見上げながら覚束ない挨拶あいさつをするのに無理もないところもあった。
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
宮は無力な落人おちゅうどにすぎない。身一ツ高野こうやたのんで来られたのだ。これをたすけぬのは仏心にそむく。——一山の衆議はすぐきまって、宮は、大塔とよぶ大伽藍だいがらん天井裏てんじょううらかくまわれた。
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
買い求めると番頭に見咎みとがめられぬようにさおどうとを別々に天井裏てんじょううら寝部屋ねべやへ持ち込み
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
まったく、どこの地下室ちかしつにも、天井裏てんじょううらにも、教会にも、おしろにも、酒造さけつくにも、製粉所せいふんじょにも、そのほか人間の住んでいるところなら、ありとあらゆるところに住んでいたものです。
たすからぬいのちおもったねずみは、また天井裏てんじょううらのすみかにかえることができました。
ねずみの冒険 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ここでいちばんにものぐるいにねこたたかって、うまくてば、もうこれからはの中になにもこわいものはない、天井裏てんじょううらだろうが、台所だいどころだろうが、かべすみだろうが、天下てんかはれてわれわれの領分りょうぶんになるし
猫の草紙 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
突然白け切った夜の静寂せいじゃくを破って、けたたましい音響がほとばしる。毒々どくどくしい青緑色せいりょくしょく稲妻いなずま天井裏てんじょううらにまで飛びあがった。——電路遮断器サーキット・ブレッカーが働いて切断したのだった。
白蛇の死 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ところどころ、川べりの方の家並やなみがけて片側町かたがわまちになっているけれど、大部分は水の眺めをふさいで、黒いすすけた格子こうし造りの、天井裏てんじょううらのような低い二階のある家が両側にまっている。
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
と——それはまぎれもなく、天井裏てんじょううらひざを突かれた曲者くせものが、小川の水で傷手いたでを洗っているのだ。頭から足のさきまで、からすのように黒装束くろしょうぞくをした隠密おんみつの男、すなわち徳川家とくがわけからまわされた菊池半助きくちはんすけ
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
煉瓦れんがなどが、ボールほどの大きさにくだかれ、天井裏てんじょううら露出ろしゅつし、火焔かえんに焦げ、地獄のような形相ぎょうそうていしていたが、その他の町では、土嚢どのうの山と防空壕の建札たてふだと高射砲陣地がものものしいだけで
英本土上陸戦の前夜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
その日の午前五時には本部から特別の指令があるということを同志の林田橋二はやしだはしじからうけたので僕は早速さっそく天井裏てんじょううらにもぐりこみ、秘密無線電信機の目盛盤ダイヤルを本部の印のところにまわしたところ、果して
人造人間殺害事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
雑音が、またも天井裏てんじょううらの高声器から降ってきた。
霊魂第十号の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)