大嫌だいきらい)” の例文
大嫌だいきらいだから身震みぶるいをして立留ったが、また歩行あるき出そうとして見ると、蛇よりもっとお前心持の悪いものが居たろうではないか。
政談十二社 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
庄太郎は豚と雲右衛門が大嫌だいきらいだった。けれども命にはえられないと思って、やっぱり飛び込むのを見合せていた。ところへ豚が一匹鼻を鳴らして来た。
夢十夜 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
勿論もちろん例の主義という手製料理は大嫌だいきらいですが、さりとて肉とかいもとかいう嗜好しこうにも従うことが出来ません
牛肉と馬鈴薯 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
藩中一般の説はしばら差措さしおき、近い親類の者までも西洋は大嫌だいきらいで、何事も話し出すことが出来ない。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
今の世の中の紳士しんしや富豪は大嫌だいきらいです。富豪も嫌いなら社会主義者も感心しません。
雨瀟瀟 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
われ当世の道理はしらねど此様このような気に入らぬ金受取る事大嫌だいきらいなり、珠運様への百両はたしかに返したれど其人そのひとに礼もせぬ子爵からこの親爺おやじ大枚たいまいの礼もらう煎豆いりまめをまばらの歯でえと云わるゝより有難迷惑
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
僕はうから知っている。大嫌だいきらいだ。2535
わたくしは婚礼の席へ行くのは大嫌だいきらいです。
「そりゃ何だ、僕は何もこわいことはないけれど、あの髯が嫌だからだ。何だか虫が好かなくッて、見るとしゃくに障るっちゃあない、僕あもう大嫌だいきらいだ。」
化銀杏 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
彼はこの長い手紙を書いた女と、この帽子を被らない男とを一所に並べて考えるのが大嫌だいきらいだった。それは彼の不幸な過去を遠くから呼び起す媒介なかだちとなるからであった。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
『お前は何を考がえて居るのだ。もって生れた気象なら致方しかたもないが、乃父おれはお前のような気象は大嫌だいきらいだ、最少もすこ確固しっかりしろ。』と真面目まじめの顔で言いますから、僕は顔も上げ得ないで黙って居ました。
運命論者 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
出かかると、寝ていた犬がのそりと起きて、来かかる先へ、のすんです。——私は大嫌だいきらいですがね——(犬が道案内をするぞ、大先達の威力はどうだ。)
露萩 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
路頭に迷う結果はのたれ死にをしなければならない。換言すると免職は主人にとって死の遠因になるのである。主人は好んで病気をして喜こんでいるけれど、死ぬのは大嫌だいきらいである。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
先生御串戯ごじょうだんを、勿論あれです、お夏さんは華族てえと大嫌だいきらいです。わっしが心も同一おんなじだ、癬は汚えに違いません、ですが、それがどうということはありませんよ。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
当時の自分の情調とは似ても似つかぬ事が書いてあったので、こんなやにっこい色男いろおとこ大嫌だいきらいだ、おれは暖かな秋の色とその色の中から出る自然のが好きだと答えてくれとはたのものに頼んだ。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
以前、まだ、獅子屋さんの話をきかないうち、筆者わたしは山の手の夜店で、知った方は——笑って、ご存じ……大嫌だいきらいな犬が、人混ひとごみの中から、大鰻おおうなぎの化けたようなつら
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
けれども、人間は無論いるはずはなし。と云って、神——神は大嫌だいきらいだ。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それが先生、一体がお夏さんは、歌だの手習だのは大嫌だいきらいで、鴨川かもがわなんて師匠取をするんじゃあないんですが、ただいま申しましたその焼け出されが只事ただごとじゃアありません。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
敬太郎けいたろう須永すながという友達があった。これは軍人の子でありながら軍人が大嫌だいきらいで、法律をおさめながら役人にも会社員にもなる気のない、至って退嬰主義たいえいしゅぎの男であった。少くとも敬太郎にはそう見えた。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
お客がまた私の大嫌だいきらいな人で、旦那とは合口あいくちだもんだから、愉快おもしろそうに話してたッけが、私は頭痛がしていた処へ、その声を聞くとなお塩梅が悪くなって、胸は痛む、横腹よこッぱらは筋張るね
化銀杏 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
くのは大嫌だいきらいです
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「あら、お止しなさいよ、そんな唄。大嫌だいきらいだわ。二階に寝ている姉さんが、病気でかんが立っておいでだから、直ぐに聞きつけて、沢山たんと加減を悪くするからね……ほんとうにきらいなのよ。」
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いやもう生得しょうとく大嫌だいきらいきらいというより恐怖こわいのでな。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
不動様は贔屓ひいきですが、念仏は大嫌だいきらい
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)