大久保おおくぼ)” の例文
東都の西郊目黒めぐろ夕日ゆうひおかというがあり、大久保おおくぼ西向天神にしむきてんじんというがある。ともに夕日の美しきを見るがために人の知る所となった。
伊部熊蔵いのべくまぞう山掘夫やまほりどもや、あとからくりこんだ大久保おおくぼ手勢てぜいは、みな、貝殻虫かいがらむしのように、砦の建物たてものにもぐりこんでているようす。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それはおかしいの、大久保おおくぼさんも本多ほんださんも北小路きたこうじさんもみんな丸髷まるまげってね、変に奥様じみているからおかしいわ。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
右の一条は薩州の方でもはなはだ秘密にして、事実をしって居る者は藩中にただ七人しかないと清水がきいたそうだが、その七人とは多分大久保おおくぼ岩下いわしたなぞでしょう。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
後に買った大久保おおくぼの家に、書斎を新しく建て増しする時、一切いっさいの設計や事務を妻に一任して、自分は全く無頓着むとんちゃくで居たが、それでも妻が時々相談を持ちかけると
しかも、泡鳴が清子を訪れたのは十二月の一日がはじめてで、十日にはもう大久保おおくぼ移転ひっこしている。
遠藤(岩野)清子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
前後三年近く政治に関係したけれども、あまり政治にはその力が現れずにしまった。これに対して木戸きど孝允たかよし〕、大久保おおくぼ利通としみち〕は武人ではなく、純粋の政治家である。
公はこれを聞かれて非常に怒られ、西郷の帰り次第、何人なにぴとでも差支さしつかえなきゆえ、手討てうちにせよとの命令を下した。これを聞いた大久保おおくぼはそもそも西郷を久光ひさみつ公に推薦すいせんしたのは自分である。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
後には大久保おおくぼの苗字を賜わり、大久保石見守長安いわみのかみながやすとまで出世したのじゃが、それ程の才物ゆえ、邪智にもけていて、ひそかに佐渡吹きの黄金を隠し置き、御役御免になっても老後の栄華
怪異黒姫おろし (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
「京都のほうは、まだ先のことです。その前に、片瀬かたせ龍口寺りゅうこうじへおまいりして来ようと思っておりますが、同伴つれができましてねえ。大久保おおくぼ様の奥さまが、いっしょに行きたいといい出したのですよ」
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
四、五日前大久保おおくぼへ越した。しかし電車を利用すれば、すぐに行かれる。なんでも停車場ステーションの近辺と聞いているから、捜すに不便はない。実をいうと三四郎はかの平野家行き以来とんだ失敗をしている。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
この間もちょっと話した飯田町いいだまち大久保おおくぼ殿の二番娘……
番町皿屋敷 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「——ありがとうございました。して、これから大久保おおくぼさまのご本殿ほんでんか、おおもてへまいるには、どこにり口がありましょうか……」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この『矢筈草』目にせば遂にはまことにいきどおりたまふべし。『矢筈草』とはすぎつる年わが大久保おおくぼいえにありける八重やえといふの事をしるすものなれば。
矢はずぐさ (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
六ヶ月してひそかに長崎の方に行き、松木まつきおよそ一年ばかりも其処そこに居る中に、本藩の方でも松木の事を心頭しんとうに掛けてその所在を探索し、大久保おおくぼ岩下いわした重野しげのを始めとして
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
西郷以下の武断派を代表した人はまず亡くなり、次いで文治派の人も、即ち大久保おおくぼ木戸きどというが如き人々もすでに三十年前に亡くなり、これをたすけた人々もまた多数は亡くなっている。
そうほうのなか板挟いたばさみとなって、ややしばらく、うでをくんでしまったが、やがて、大久保おおくぼがたの者と忍剣にんけんたちの両方りょうほうたいして
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
喰違くいちがい岩倉いわくら公襲撃の頃からソロ/\始まって、明治十一年、大久保おおくぼ内務卿の暗殺以来、毎度の兇変きょうへんは皆政治上の意味を含んで居るから、わば学者の方は御留主おるすになって
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
長屋の人たちはこの処を大久保おおくぼ長屋、また湯灌場ゆかんば大久保と呼び、路地の中のやや広い道を、うま背新道せしんみちと呼んでいた。道の中央が高く、家に接した両側が低くなっていた事から、馬の背にたとえたので。
深川の散歩 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
それが自分の運命だ、河を隔て堀割を越え坂をあがって遠く行く、大久保おおくぼの森のかげ、自分の書斎の机にはワグナアの画像の下にニイチェの詩ザラツストラの一巻が開かれたままに自分を待っている……
深川の唄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
今の大久保おおくぼに地面を買われたのはずっとのちの事である。
伝通院 (新字新仮名) / 永井荷風(著)