のろ)” の例文
ハルスカイン家の血統が、こうして吾々二人のためにのろわれて、あとかたもなく亡びて行くのをボンヤリ眺めている訳には行かない。
霊感! (新字新仮名) / 夢野久作(著)
なんじ我言に背いて禁菓を食ひたれば、土は爾の為にのろはる。土は爾の為に荊棘いばらあざみを生ずべし。爾は額に汗して苦しみて爾のパンをくらはん」
草とり (新字旧仮名) / 徳冨蘆花(著)
なんじ我言に背いて禁菓きんかいたれば、土は爾の為にのろわる。土は爾の為に荊棘いばらあざみしょうずべし。爾は額に汗して苦しみて爾のパンをくらわん」
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
あの医者の所へ尋ねて行って、うその限りを尽して、とうとう本当の事を言わせてしまった。あの日は実にのろうべき日である。
みれん (新字新仮名) / アルツール・シュニッツレル(著)
その父である故人の大臣の亡霊がいているとも言われるうわさの聞こえて来た時、御息所は自分自身の薄命をなげくほかに人をのろう心などはないが
源氏物語:09 葵 (新字新仮名) / 紫式部(著)
それがまされるような気持で、のろわしい現実の自身と環境にすっかり厭気いやきが差してしまうのだった。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
此等の青年は心から自国の資本主義的政治をのろうと同時に、大塞国確立の理想に燃えていた。
二人のセルヴィヤ人 (新字新仮名) / 辰野隆(著)
「それにしても無知は致し方がないなあ。誰かの手でおれの無知の蒙をひらいてもらいたい。」そういって歎息しているが、疑惑はのろわれてもなお執拗につきまとって離れない。
さて引続いてお聞に入れました松葉屋の若草は、伊之助をのろいまして、庭の松のへ小刀を打ち付けるという処まで弁じましたが、この小刀には金重と銘が打ってございまする。
征服者をのろうた一つの物語が、不調和に感じられるまで整理せられた性格の記述を裏切ると共に、かうした憤怒・憎悪・嫉妬を十分に具備した人として伝へられてゐたに違ひない。
万葉びとの生活 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
法王をのろう 十月上旬ラサ府の住居よりパルコル(廻道)へ指して出掛けました。ここはラサ府での目抜の所で、罪人などあるとこの道の辺にさらします。その晒し方にもいろいろある。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
妖婆はぐるりぐるりと鍋を廻る。枯れ果ててとがれる爪は、世をのろ幾代いくよさびせ尽くしたるくろがね火箸ひばしを握る。煮え立った鍋はどろどろの波をあわと共に起す。——読む人は怖ろしいと云う。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
クリスト教世界に危害を与え、のろわれた人のこうべに落ちました。10990
二相はあたかも福原の栄華に驕る平家の如くにのろわれた。
に自らをほこりつゝ、はたのろひぬる、あはれ、人の世。
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
「なんだかのろわれたものとでも云いそうだね」
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
光に似た煙だとのろふことさへある。
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
相合あひあたまのろふとも
友に (新字旧仮名) / 末吉安持(著)
僕は貴女の思想から見ればドンナにのろわれても足りない人間です。貴女の御主人の仇敵です。社会の公敵です。貴女の不運の原因を作った人間です。
近眼芸妓と迷宮事件 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
新約聖書に、耶蘇やそみのらぬ無花果いちじくを通りかゝりにのろうたら、夕方帰る時最早枯れて居たと云う記事がある。耶蘇程の心力の強い人には出来そうな事だ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
源氏はどう自分の昔を思っているであろうと恥じておいでになった。一国を支配する人の持っている運は、どんなのろいよりも強いものであるとお悟りにもなった。
源氏物語:21 乙女 (新字新仮名) / 紫式部(著)
その執事が今の法王をのろい殺そうとして大変な秘密祈祷きとうを始めたそうです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
何世紀立っても消えない、一番ひどい呪咀じゅそで、君をのろうまでだ。
現身うつそみの世をゆるしえず、はたのろひえぬ観念の
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
憎むべく、のろふべく、あはれむべく
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
ひかはる芽をのろふにか
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
「ほんとうの心から出た親切か……又は悪戯いたずらか……恋の遺恨か……何かののろいか……それとも……それとも……」
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
単純な充実じゅうじつした生活をする農家が今勝誇かちほこる麦秋の賑合にぎわいの中に、気の多い美的百姓は肩身狭く、つかれた心と焦々いらいらした気分で自ら己をのろうて居る。さっぱりと身を捨てゝ真実の農にはなれず。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
身をも世をものろった、あの時までは、男一人であったのだ。
のろはむと言ひにしものを。
春鳥集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
恐怖おそれなり、のろひなり
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
このへやへ這入っちゃいけない……お父様も……お母様も妹共も……家来共も皆いけない。聞け……聞け……私は悪魔にのろわれている。悪魔の果物。悪魔の美紅。
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
呪女のろひめのろひをこめし
春鳥集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
正木先生は、当然あなたから御自分の運命をのろわれるのを覚悟されて、この研究に着手されたのです。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
のろひて、斑猫はんめう
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
自分の描いた死美人の腐敗像にのろわれて精神に異状を来たしたんだ。その心理がわかるかね君には……
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「はい、出来ませぬ。出来ませぬ。妹御の美紅姫が邪魔を遊ばします。いや、美紅姫ではない。悪魔にのろわれた美紅姫、つまり夢の中の美留女姫が邪魔を遊ばします」
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
かえってお兄様と私とを世にものろわれた男女にしてしまう役にしか立たないで御座いましょう。
押絵の奇蹟 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
われはお奈美様をこそ主人とも慕ひ、女神様とも仰ぎ来つれ。御身の如き片輪かたは風情の迷ひ猫を何条なんでう主人と思はむや。御身が此の馬十を憎み、疑ひのろへる事を、われ早くより察し居れり。
白くれない (新字新仮名) / 夢野久作(著)
美紅に化けて兄様に大怪我をさせて、今度は海の女王に化けてこの国の女王になりに来たのか。事に依るとこの妾をのろうて、妾が女王になるのを邪魔しに来たのかも知れぬ。それに違いない。
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
私はいよいよ苛立いらだたしくなった。人形の破片かけらを残らず古新聞に包んで、グルグルと押し丸めて、庭の隅のハキダメにタタキ込んだ。……こんな下らないものを作った人形師をのろいながら…………。
微笑 (新字新仮名) / 夢野久作(著)