同胞きょうだい)” の例文
最初の形勢では容易に中川君同胞きょうだいが承知しそうもなかったけれども案じるよりはむが安く、今では向うの方がかえって此方こっちより熱心だ。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
随分一緒にもなって同胞きょうだいのようにしてたけど……してたというだけで、ただそれだけのものじゃないか、お前さんもよっぽど廻り気の人だね
深川女房 (新字新仮名) / 小栗風葉(著)
其の同胞きょうだいをお前さんはだまして横浜に連れてって外国人のらしゃめんに仕ようとした事をお忘れなすったか、私が二十一の時だよ
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
お父さんが家庭教育に熱心な丈けに、同胞きょうだい八人皆相応に成績が好い。一番上の姉さんは帝大の助教授のところへお嫁に行った。
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
同胞きょうだいですらわれわれはこうして慣らされているのであるが、思いがけないお顔を外にいる者へ宮のお見せになったことは不思議なことであると
源氏物語:35 若菜(下) (新字新仮名) / 紫式部(著)
親も同胞きょうだいもない身で、おまけに思いもよらないこんな貧乏するなんて……本当にお前さえいなけりゃまた身の振り方もあろうが。——一ちゃん。
一太と母 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
幼稚園に通うころより実の同胞きょうだいも及ばぬほどむつみ合いて、浪子が妹の駒子こまこをして「ねえさんはお千鶴さんとばかり仲よくするからわたしいやだわ!」
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
年紀としは二十七。じゅ五位くん三等、さきの軍医監、同姓英臣ひでおみの長男、七人の同胞きょうだいうちに英吉ばかりが男子で、姉が一人、妹が五人、その中縁附いたのが三人で。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ひなの節句の日に、今夜、同胞きょうだいが一人ふえるから、蔵座敷に飾ってあるお雛さまをしまえと言いつけられた。
犬と自分とは同じようにしいたげられ同じように苦しめられる最も哀れな同胞きょうだいかなんかのように感じていた。
矢張身を売るのは同じことだと言いますとね、祖母さんや同胞きょうだいのために身を売るのが何が悪いッて……
二少女 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
あいつの性格そのものですよ。妹は今年二十四になりますが、どっちかというと不良ふりょうの方でしてネ、それも梅子自身のせいというよりも私達同胞きょうだいもいけなかったんです。
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
同胞きょうだい、友達、恩師、若い男女のファンたち、社会の人々のすべてからコッソリと逃げ出して
童貞 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
肩つきのほっそりしたこの叔父と、くびの短い母親とが、お庄には同胞きょうだいのようにも思えなかった。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「あれは、こうなの、『では、同胞きょうだいよ、安らかに眠りましょう。お休みなさい。』」
同じくなやめ同胞きょうだい
残冬 (新字新仮名) / 今野大力(著)
此奴こやつが跡目相続をすべき奴じゃけれども仕方がないと云うて、十九の時に勘当をされた、丁度三人の同胞きょうだいでありながら、私は出家になり、弟は泥坊根性があり
闇夜の梅 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
子も同胞きょうだい身寄みよりもないので家も近し、似よった年頃だと云うのでよく祖母の家へ話しに来るのである。
農村 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
「昔の人も同胞きょうだいは隔てなく暮らしたものですよ。あなたは物足らないお扱いばかりをなさいますが」
源氏物語:49 総角 (新字新仮名) / 紫式部(著)
お登和嬢の事は先日も志を打明けて中川君同胞きょうだいに申出た通り到底天から僕に授からんものとあきらめているから僕のために嫁期かきを失わんより早くほかい口を捜してもらいたい
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
それは僕の両親や同胞きょうだいたちが、過激派のために銃殺されたといううわさだったのです。
死後の恋 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
とむらいもすみまして、自宅の仏壇ぶつだんの前に、同胞きょうだいをはじめ一家のものが、ほとけの噂さをしあっていますと、丁度ちょうど今から三十分ほど前に、表がガラリと明いて……仏が帰って来たのでございます」
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
同胞きょうだいだって似るものと決まってやしないわ。」
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
新五郎の為に非業の死を遂げましたが、それからは稽古をする気もなく、同胞きょうだい思いの豊志賀はねんごろに妹お園の追福を営み、追々月日も経ちまするので気を取直し
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
多勢生れた同胞きょうだいも、皆早く死んで自分と遺ったただ一人の姉のお咲も決して楽な生活はしていない。
日は輝けり (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
ともかくも中川の同胞きょうだいを説き付けて充分に力を尽すべしとその夜はお登和嬢の手に成れる料理を飽食ほうしょくして大原を帰し、翌日主人小山が土産物の品々をたずさえて中川の家をえり。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
王様の住居すまいはこんなものであろうかと思われる位で、お出迎えに出て来た娘の同胞きょうだいや家来共の着物に附けている金銀宝石の飾りを見ただけでも当り前の者ならば眼をわして終う位でした。
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
帝のお飼いになる猫の幾ひきかの同胞きょうだいがあちらこちらに分かれて行っている一つが東宮の御猫にもなっていて、かわいい姿で歩いているのを見ても、衛門督には恋しい方の猫が思い出されて
源氏物語:35 若菜(下) (新字新仮名) / 紫式部(著)
其ののち悪因縁のまつわる処か、同胞きょうだいにて夫婦になるという、根岸の因果塚のお物語でござりまする。
寒くない様に、障子がしまって、廻し戸がぴったりしてある上に、長い廊下をへだてた二重のガラス戸の中に同胞きょうだいや母達は居るのだもの、私が大声を出しても聞えようにもない。
(新字新仮名) / 宮本百合子(著)
僕はもとより最初からその従妹いとこと婚礼する心はない。ことにお登和さんの事が極まって中川君同胞きょうだいが僕のためにそれほどまで尽力せられると聞いては僕も感泣かんきゅうしてその恩にむくゆるつもりだ。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
手前てめえは己の女房だ、親同胞きょうだいを捨てゝも亭主に附くと手前云ったかどがあるだろう、うじゃアねえか、え、おい、縁の切れた兄を何故なぜ敷居をまたがせて入れた、それが己の気に入らねえ
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
千世子は仲の善い同胞きょうだいの様な又慈深なさけぶかい母親が子を思う様にしみじみとそう思った。
千世子(二) (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
なんの親同胞きょうだいを捨てゝ出る様な者は娘とは思わぬ、かたき同士だ、病気見舞にも行ってくれるな、彼様あんな奴は早く死ねばいゝ、と口では仰しゃるけれども、朝晩如来様に向って看経かんきんの末には
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「姉さんのことでも云ってやるのかい。同胞きょうだいがあると、お互に三人分も四人分も心配しなけりゃあならないねえ。結句僕のように独りっきりだと、そんな心配は要らないで、さっぱりとしている。まあ書き給え、僕は湯にでも行って来ようや!」
日は輝けり (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
親御もさぞ案じて居ましょう、能く考えて見なさい、両親を残してお前さん、先立って死ぬというのは無分別と申す者で、同胞きょうだい衆も御親類でもんなに心配するか知れん、何ういう事があるかは知らんが
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)