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くちずさ
ふりがな文庫
“
口誦
(
くちずさ
)” の例文
そのためか、それとも、他の動機からか、彼れは
室
(
へや
)
の中を行つたり来たりしつつ、
独
(
ひと
)
りで次の如き古風な音調を
口誦
(
くちずさ
)
んだ——
アリア人の孤独
(新字旧仮名)
/
松永延造
(著)
いやその化物屋敷のような物凄い光景は、
正視
(
せいし
)
するのが恐ろしく、思わず眼を閉じて、日頃
唱
(
とな
)
えたこともなかったお
念仏
(
ねんぶつ
)
を
口誦
(
くちずさ
)
んだほどでした
赤外線男
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
結論として大きな疑問を一つ残したけれども、クリヴォフ夫人の
口誦
(
くちずさ
)
むような静かな声は、
側
(
かたわら
)
の二人に悪夢のようなものを掴ませてしまった。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
こんな詩を
口誦
(
くちずさ
)
んで聞かせます。角の柳光亭の
楼上
(
ろうじょう
)
、楼下は
雛壇
(
ひなだん
)
のような
綺羅
(
きら
)
びやかさを軒提灯の下に映し出しています。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
燃えて行った夏、燃えて行った夏……彼は晩夏のうっとりとした光線にみとれて、
口誦
(
くちずさ
)
んだ。夏はまだいたるところに美しく燃えたぎっているようであった。
苦しく美しき夏
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
▼ もっと見る
阿国
(
おくに
)
歌舞伎でおぼえた小歌を
口誦
(
くちずさ
)
みながら、
朱実
(
あけみ
)
は、家の裏へ下りて、高瀬川の水へ、
洗濯物
(
あらいもの
)
の布を投げていた。布を
手繰
(
たぐ
)
ると、
落花
(
はな
)
の渦も一緒に寄って来た。
宮本武蔵:03 水の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
この日、橘はこれが彼の好みらしかったが、制服の上にインバネスという変な格好で、車室の隅に深々と身を沈め、絶えずポオのレーヴンか何かを
口誦
(
くちずさ
)
んでいた。
火縄銃
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
と、とのさまは
今
(
いま
)
の
二合
(
にがふ
)
で、
大分
(
だいぶ
)
御機嫌
(
ごきげん
)
。ストンと、いや、
床
(
ゆか
)
が
柔軟
(
やはらか
)
いから、ストンでない、スポンと
寢
(
ね
)
て、
肱枕
(
ひぢまくら
)
で、
阪地到來
(
はんちたうらい
)
の
芳酒
(
うまざけ
)
の
醉
(
ゑひ
)
だけに、
地唄
(
ぢうた
)
とやらを
口誦
(
くちずさ
)
む。
雨ふり
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
それから毎日のように
口誦
(
くちずさ
)
んでは、そのあとで沈思しているのである。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
そして、ある詩の一句を
口誦
(
くちずさ
)
みながら、ひたすら幻想の悦楽に浸っていたのである——それは、眼前の渚に遊ぶ一個の人魚を見たからであった。
人魚謎お岩殺し
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
娘は死んだ、娘はしばらく病の床に伏していたが死期を知ると、しずかに慧鶴の名を
口誦
(
くちずさ
)
み、頬に微笑のかげさえ浮べながら、そのまま他界の人となった。
宝永噴火
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
労働歌が絃歌になり、蜂須賀侯のような大名までが、
夜興
(
やきょう
)
の
口誦
(
くちずさ
)
みに
戯
(
たわむ
)
れたものとみえる。
宮本武蔵:04 火の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
嗜
(
たしなみ
)
があったら、何とか
石橋
(
しゃっきょう
)
でも
口誦
(
くちずさ
)
んだであろう、途中、目の下に細く白浪の糸を乱して崖に添って橋を架けた処がある、その崖には滝が
掛
(
かか
)
って橋の下は淵になった所がある
遺稿:02 遺稿
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と
口誦
(
くちずさ
)
んで、法水はその一場の心理劇を、噛みしめるように玩味していたが、やがて、意味ありげな言葉を犬射に云った。
潜航艇「鷹の城」
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
えゝ、まゝよと思いますと、すぐその思いの下から、まゝよ三度笠横ちょに冠り破れかぶれの三度笠という小唄が
口誦
(
くちずさ
)
まれて来ます乞食の気散じな身の上。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
橋廊下と廻廊の角の柱にもたれかかって、義元は、扇で
手拍子
(
てびょうし
)
をとりながら
京謡
(
きょううた
)
を
低声
(
こごえ
)
に
口誦
(
くちずさ
)
んでいた。女かと疑われるほど、色白に見えるのは、薄化粧をしているからであろう。
新書太閤記:02 第二分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と
口誦
(
くちずさ
)
むように
独言
(
ひとりごと
)
の、
膝栗毛
(
ひざくりげ
)
五編の上の読初め、霜月十日あまりの初夜。
歌行灯
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「父よ、
吾
(
われ
)
も人の子なり——」と法水は、その一行の
羅甸
(
ラテン
)
文字を邦訳して
口誦
(
くちずさ
)
んだが、異様な発見はなおも続けられた。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
十一月も末だったので主人は東京を出がけに、こんな句を
口誦
(
くちずさ
)
んだ。それは何ですと私が訊くと
東海道五十三次
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
数年まえに彼が
述懐
(
じゅっかい
)
した歌である。いま、それを心の奥に
口誦
(
くちずさ
)
む。
新書太閤記:05 第五分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と
﨟
(
ろう
)
たく
口誦
(
くちずさ
)
みながら、
半
(
なか
)
ば渡ると、
白木
(
しらき
)
の
階
(
きざはし
)
のある
処
(
ところ
)
。
妖魔の辻占
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
しかし、彼が恐怖の色を
泛
(
うか
)
べ
口誦
(
くちずさ
)
んだところの、ウイチグス呪法典という一語のみは、さながら夢の中で見る白い花のように、いつまでもジインと網膜の上にとどまっていた。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
わたくしは池上が憧憬してとき/″\
口誦
(
くちずさ
)
み、その癖、自分の気持は全然それに
当嵌
(
あては
)
め切れなかった芭蕉の「野ざらし紀行」の書き出しの文句の耳についてるのを、ふと思い出しまして
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
と小父者、出た処で、けろりとしてまた
口誦
(
くちずさ
)
んで
歌行灯
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
口誦
(
くちずさ
)
む歌にも、ひとりで末の夢を楽しんでいた。
宮本武蔵:03 水の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
純情な恋の
小唄
(
こうた
)
を好んで
口誦
(
くちずさ
)
む青年子女に
訊
(
き
)
いてみると恋愛なんか
可笑
(
おか
)
しくって
出来
(
でき
)
ないと言う。家庭に退屈した若い
良人
(
おっと
)
が、ダンス場やカフェ
這入
(
はい
)
りを定期的にして、
而
(
しか
)
もそれに満足もしない。
時代色:――歪んだポーズ
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
義元は、
口誦
(
くちずさ
)
みを止めて
新書太閤記:02 第二分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“口誦”の意味
《名詞》
口ずさむこと。
音読すること。
(出典:Wiktionary)
口
常用漢字
小1
部首:⼝
3画
誦
漢検1級
部首:⾔
14画
“口”で始まる語句
口惜
口
口吻
口説
口髭
口籠
口許
口上
口調
口々