勾玉まがたま)” の例文
五十年ぜんの日本人は「神」といふ言葉を聞いた時、大抵たいてい髪をみづらにひ、首のまはりに勾玉まがたまをかけた男女の姿を感じたものである。
文章と言葉と (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
だいたい五百助の家は年数も知れぬ昔から代々そこで管玉や切子きりこ玉やなつめ玉、臼玉、勾玉まがたま、丸玉などを造っていたと伝説されている。
ウドウドと称する勾玉まがたまの様なものがパラオ地方の貨幣であり、宝であるが、勿論、此の男はウドウドなど一つも持ってはいない。
南島譚:01 幸福 (新字新仮名) / 中島敦(著)
勾玉まがたま? さかずきのかけたようなもの? きみは、またどうしてそんなものに趣味しゅみっているのです。」と、紳士しんしは、おどろいたようです。
銀河の下の町 (新字新仮名) / 小川未明(著)
次にスサノヲの命が天照らす大神の左の御髮にいておいでになつた大きな勾玉まがたまの澤山ついている玉のをおけになつて
しかし著物きものはみなくさつてしまつてのこつてをりませんが、かざものうち一番いちばんつのは、まづ勾玉まがたまその玉類たまるいであります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
「旅の女よ。我は爾の夫を撃った。我は爾の勾玉まがたまを奪った奴隷を撃った。我は爾を傷つける何者をも撃つであろう。」
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
今日土中より掘出す勾玉まがたま金環等の如きも、當時に在て其時代の經濟理論に明なる書生の評に附したらば、或は無用の物なりしならんと雖ども、數千年の下
帝室論 (旧字旧仮名) / 福沢諭吉(著)
「承われば岩石人ども、勾玉まがたま管玉くだたまを盗みましたとか、これは事実でございましょうな?」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
砂の息蒸いきれの匂いが何処からともなくする、二合五勺に辿り着いた頃には、近くは勾玉まがたま状に光れる山中湖と、その湖畔の村落と、遠くは函根足柄を越えて、大磯平塚の海岸、江の島まで見えた。
雪中富士登山記 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
広さは十坪位で一間位の深さはある。形は稍や勾玉まがたまに似ている。
黒部川奥の山旅 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
勾玉まがたまとにほひつづらせ。
新頌 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
するとあくる日は、まだ、笛を吹くか吹かないのに、赤い勾玉まがたまを飾りにした、目の一つしかない大男が、風のように空から舞い下って
犬と笛 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
これらはみな朝鮮ちようせんから日本につぽんつたへられたものでありますが、勾玉まがたまはたしてどちらからどちらへつたはつたものかわかりません。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
忽ち、兵士たちの鉾尖は、勾玉まがたまの垂れた若者の胸へ向って押し寄せた。若者は鉾尖の映った銀色の眼で卑弥呼を見詰めながら、再び戸外へ退しりぞけられた。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
それはそうと、なにかこのあたりで、おもしろい土器どき破片はへんか、勾玉まがたまのようなものをひろったはなしをききませんか。
銀河の下の町 (新字新仮名) / 小川未明(著)
左右に分けて耳のところに輪におきになり、その左右の髮の輪にも、頭に戴かれるかずらにも、左右の御手にも、皆大きな勾玉まがたまの澤山ついている玉の緒をき持たれて
「聞けばお前は双玉の原の、二人の巫女みこの宝物、勾玉まがたま管玉くだたまとを盗み取ったそうだな」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
更に拡大して勾玉まがたま形になって来ている。
高山の雪 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
勾玉まがたまとにほひつづらせ。
新頌 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
「あの勾玉まがたまは確かに渡してくれたのだろうな。」と、軽く念を押しただけであった。若者はやはり間の悪るそうな顔をしながら
素戔嗚尊 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
そのなかから勾玉まがたまのような日本特有につぽんとくゆうのものもるにかゝはらず、かゞみいたつてはほとんどまったく發見はつけんせられないのです。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
彼の首から垂れ下った一連の白瑪瑙しろめのう勾玉まがたまは、音も立てず水にひたって、静かにを食う魚のように光っていた。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
タマノオヤの命に命じて大きな勾玉まがたまが澤山ついている玉の緒の珠を作らしめ、アメノコヤネの命とフトダマの命とを呼んで天のカグ山の男鹿おじかの肩骨をそつくり拔いて來て
ぼく勾玉まがたまひろいました。それからかけたさかずきのようなものもひろってっています。」
銀河の下の町 (新字新仮名) / 小川未明(著)
岩山の一角に出来ている! そうして美しい乙女達が泣きながら、「返せ」と叫んでいる! しかも盗まれた品物といえば、古風な勾玉まがたま管玉くだたまだという! そうして二人の乙女はといえば
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
天色そらいろ勾玉まがたま七つ。
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
と、相手の胸の上には、彼の母が遺物かたみに残した、あの琅玕ろうかん勾玉まがたまが、曇りない月の光に濡れて、水々しく輝いていたではないか。
素戔嗚尊 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
その若者は彼と同じ市松の倭衣しずりを着ていたが、くびに懸けた勾玉まがたまや腕にめたくしろなどは、誰よりも精巧な物であった。
素戔嗚尊 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
何気なにげなく笛を鳴らしていると、今度は黒い勾玉まがたまを首へかけた、手の一本しかない大男が、どこからか形を現して
犬と笛 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
青い勾玉まがたまを沢山ぶらさげた、足の一本しかない大男が現れて
犬と笛 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)