勝頼かつより)” の例文
ましてや、梅雪入道ばいせつにゅうどうは、武田家譜代たけだけふだいしんであるのみならず、勝頼かつよりとは従弟いとこえんさえある。その破廉恥はれんちは小山田以上といわねばならぬ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
前髪の時分にゃあ忠臣蔵の力弥りきやか二十四孝の勝頼かつよりを見るようで、ここから船にお乗りなさる時は、往来の女が立ちどまって眺めているくらいでした
尤も書くのはこつちの勝手、相手は維盛これもり樣だつて勝頼かつより樣だつて、惚れて惡いつて法はないけれど、それを相手に屆けるからうるさいことになるんでせう。
銭形平次捕物控:311 鬼女 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
こゝに信州しんしう六文錢ろくもんせん世々よゝ英勇えいゆういへなることひとところなり。はじめ武田家たけだけ旗下きかとして武名ぶめい遠近ゑんきんとゞろきしが、勝頼かつより滅亡めつばうのちとし徳川氏とくがはし歸順きじゆんしつ。
十万石 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
この書は、それ自身の標榜するところによると、武田信玄たけだしんげんの老臣高坂弾正信昌こうさかだんじょうのぶまさが、勝頼かつより長篠ながしの敗戦のあとで、若い主人のために書き綴ったということになっている。
『二十四孝』十種香じっしゅこうの幕明を見たるものは必ずやかたの階段に長く垂敷たれしきたる勝頼かつより長袴ながばかまの美しさを忘れざるべし。浅倉当五あさくらとうごが雪の子別れには窓の格子こそに恩愛のしがらみなれ。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
夜具のそでに首を突込つっこんで居たりけりさ、今の世の勝頼かつよりさま、チト御驕おおごりなされ、アハヽヽと笑いころげて其儘そのまま坐敷ざしきをすべりいでしが、跡はかえっいやさびしく、今の話にいとゞ恋しさまさりて
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
これに対して武田勢は、先陣に小山田信茂おやまだのぶしげ山県昌景やまがたまさかげ内藤昌豊ないとうまさとよ小幡信貞おばたのぶさだら。だい二陣に馬場信春ばばのぶはる、武田勝頼かつよりら。信玄の本隊はその後づめとなり、魚鱗ぎょりんの陣形をもって南下しきたった。
死処 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
それを聞いたのが勝頼かつよりで「面白い壺だ、持って来るがいい」
大捕物仙人壺 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
それはむりではない、武田家重代たけだけじゅうだいの軍宝——ことに父の勝頼かつよりが、天目山てんもくざん最期さいごの場所から、かれの手に送りつたえてきたほど大せつなしな
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「また、武田勝頼かつよりが滅亡したときに」と甲斐は続けて云った
「はあ、勝頼かつより様と同国ですな。」
眉かくしの霊 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「富士の人穴ひとあなで、二千の軍兵ぐんぴょうをかかえながら、勝頼かつより遺子いし武田伊那丸たけだいなまるに追いまくられて、こんどはわしへとりいる気だな」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
武田勝頼かつよりは三十の春を迎えていた。亡父ちちの信玄よりは遥かに上背丈うわぜいもあり、骨ぐみもたくましかった。美丈夫と呼ばれるにふさわしい風貌の持主であった。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ここには古くからある白梅や紅梅がもうほころびかけ、勝頼かつよりは今も、叔父の武田逍遥軒しょうようけんと共に、奥の丸からその梅林のあいだを縫いながら、うぐいすの声をよそに
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ことし天正三年のつい先月、五月の初めには、信長は岐阜ぎふを出て、徳川家康とともに、甲山の精鋭武田勝頼かつよりの大軍を長篠ながしのに破って、もう岐阜へ凱旋がいせんしていた。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
甲州武田は、常に、織田家にとって、背すじの寒い脅威だったが、その武田家と縁談が結ばれて、信玄しんげんの第四子勝頼かつよりへ、信長のむすめが近く嫁ぐことに運ばれていた。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すでにかの甲州こうしゅう方面では、信長、信忠の指揮下に、大軍甲信国境からながれこんで、ちょうどこの日、武田勝頼かつよりは運命の非を知って、その拠城新府しんぷにみずから火を放ち
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
小幡、内藤、山県やまがたなどの譜代ふだいをはじめ、逍遥軒しょうようけん孫六、伊奈四郎勝頼かつより、武田上野介こうずけのすけなどいう一族にいたるまで、およそきょうの軍議に列した者は、くびすをついで帰って行った。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
部隊部隊の旗じるし馬簾ばれんなどを見ても、また勝頼の前後をかためてゆく旗本たちの分厚ぶあつな鉄騎隊を見ても、甲軍衰えたりとは、どこからも見えなかった。殊に、大将伊那いなろう勝頼かつよりの面上には
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)