勃発ぼっぱつ)” の例文
旧字:勃發
ところが、突然私らの魂に熱湯を注ぎかけたような事件が勃発ぼっぱつした。それはみゑ子が、女学校二年、十五歳の暮れのできごとであった。
盗難 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
士族気質かたぎのマダせない大多数の語学校学生は突然の廃校命令に不平を勃発ぼっぱつして、何の丁稚でっち学校がという勢いで商業学校側を睥睨へいげいした。
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
大戦勃発ぼっぱつ後八方に敵を受けたドイツが、開戦後まもなく率先して経済組織の大改造を企てたのも、ひっきょうはこれがためである。
貧乏物語 (新字新仮名) / 河上肇(著)
実をいえば、世界各国の汽船は、いまやいつ戦争が勃発ぼっぱつするかわからないので、びくびくもので太平洋を渡っている有様だった。
幽霊船の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
と——、帰ろうとしたその道の途中で、はしなくも右門の第十一番てがらとなるべき事件の発端が、突如として勃発ぼっぱつしたのです。
のちに十月事件と呼ばれた蹶起計画のために俺は呼び戻されたのだが、これは九月に勃発ぼっぱつした満州事変に呼応して計画されたものだった。
いやな感じ (新字新仮名) / 高見順(著)
秋本はその事件の勃発ぼっぱつとともに女を捜しに上京して来た。そしてここで幾度か女にも男にも逢ったが、女の決心は動かなかった。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
思うに武術の庭に入ったために、竹刀を見るにつけ、道具を見るにつけ、その天成の性癖が勃発ぼっぱつして、ツイこんなことになったのでしょう。
大菩薩峠:07 東海道の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
十世証如しょうにょのころは戦国時代ではあり、一向一揆いっこういっきは諸国に勃発ぼっぱつし、十一世顕如けんにょに及んで、織田信長と天正てんしょうの石山合戦がある。
九条武子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
その後世界大戦が勃発ぼっぱつし、それが一九一八年にようやくおさまった後に、教授のその間に発表せられた一般相対性理論が世界的に著名となったので
欧洲戦争が勃発ぼっぱつしてから又兄さんの考が変り、日本もいよいよ大変なことになるかも知れない、日華事変が三年越し片付かないところへ持って来て
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
事情はわからぬが、明後日の夜半と期していた城中の内応が、突然、たった今、火の手となって勃発ぼっぱついたした。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いいかけて寂しく笑った、要するに記者のすべての言は、お夏に対する狂熱の勃発ぼっぱつしたものであったのである。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その突発事故といふのは、第一には僕を襲つた恋愛であり、第二には、昨日この島に勃発ぼっぱつした革命騒ぎだ。
わが心の女 (新字旧仮名) / 神西清(著)
日本に近ごろ二・二六事件という騒動の勃発ぼっぱつしたのはよく御存じのことと思いますが、あれは左翼の撲滅ぼくめつ運動でもなければ、資本主義の覆滅運動でもありません。
厨房日記 (新字新仮名) / 横光利一(著)
それは自分の直感であるが、同時に、自分はこの戦争が勃発ぼっぱつして以来、非常に恥かしい気分に襲われた。
惜別 (新字新仮名) / 太宰治(著)
この勢いに辟易へきえきして、みな路をあけるばかり……誰ひとりとび出す者はいない。女子供の悲鳴、ごった返す人垣。としの市のなかにたいへんな騒ぎが勃発ぼっぱつした。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
戦争勃発ぼっぱつと同時にフランスの義勇軍に投じた若いロシア人とだけで名前はわかってない。一説には Daptain Marlew という英国将校だったともいう。
戦雲を駆る女怪 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
この伝統を無視して正義を迫害した政党者流に対する公憤は神のごとき学生の胸に勃発ぼっぱつした。
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
「ところが、どうしてどうして事件勃発ぼっぱつです。それも浴場密室事件だったらどうです?」
浴槽 (新字新仮名) / 大坪砂男(著)
橘外男氏事件で日英戦争勃発ぼっぱつせり! なんてことになってくるとやり切れんからネ。
ナリン殿下への回想 (新字新仮名) / 橘外男(著)
革命は社会内の矛盾や不満や不安が鬱積うっせきした結果、一定の導化線で勃発ぼっぱつするから、実際は相当に永い間にだんだんとその原因が醞醸うんじょうされるのではあるが、しかし革命そのものは激発的で
政治学入門 (新字新仮名) / 矢部貞治(著)
大東亜戦争勃発ぼっぱつ以前、昭和十五年度に執筆したものであるが、当時既に我々の南方諸島への関心は日に日に高まりつつあったので、その心持が、物語の舞台を南洋に選ばせたものであろう。
新宝島 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
その論文が日本に届いたのは、確か太平洋戦争勃発ぼっぱつの一年くらい前であった。
原子爆弾雑話 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
丁度その年は満洲事変まんしゅうじへん勃発ぼっぱつしたばかりの頃で、街頭いたるところに襷掛たすきがけの中年婦人が千人針というものを勧誘している。四方八方が肉弾三勇士のレコードでまことに物状騒然たる有様である。
が、次の瞬間には恐ろしい混乱が勃発ぼっぱつした。彼らは口々に叫び出した。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
M——鉱業株式会社のO鉱山にもストライキが勃発ぼっぱつした。
土鼠と落盤 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
またしても対岸に反乱が勃発ぼっぱつしたらしい。
地図に出てくる男女 (新字新仮名) / 吉行エイスケ(著)
事の勃発ぼっぱついたしましたのはあれから半月と間のない同じ月の二十六日——しかも、おおかたもう四ツを回った深夜に近い刻限のことでした。
兄が呶鳴どなっています。とても悲痛ひつうな叫び声です。今までにあんな声を兄が出したことを知りません。恐ろしい一大事が勃発ぼっぱつしたに違いありません。
崩れる鬼影 (新字新仮名) / 海野十三(著)
お豊もまたあの時、金蔵を捨てるはずのを今ここで実行したものですから、お豊がなくなって金蔵の執念が勃発ぼっぱつするのはあたりまえのことでありました。
大菩薩峠:05 龍神の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
騒ぎの勃発ぼっぱつと同時に、即刻、江戸表を発しましたゆえに、殿様、御処分のこと、その他は、さらに、後より追い早駕はやを以て、何人なんぴとか、到着いたす筈にござります
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
二葉亭はとても革命が勃発ぼっぱつした頃まで露都に辛抱していなかったろうと思うが、仮に当時に居合わしたとしたら、ロマーノフ朝に味方したろう、革命党に同感したろう乎
二葉亭追録 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
私みたいな妙ちきりんなお客に対する給仕の待遇すこぶる突慳貪つっけんどんを極めてまるでどこかの外交員でも戸惑いして来たかのような扱いであったから、私は内心怒りが勃発ぼっぱつして人なきを見て
ナリン殿下への回想 (新字新仮名) / 橘外男(著)
が、人心はその面のごとくことなる。少年連盟におそるべき事件が勃発ぼっぱつした。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
帝政露西亜に内乱が勃発ぼっぱつし、敗色いよいよ濃厚になり、日本軍は破竹の勢い、つづく三月十日、五月二十七日、日本国民として忘るべからざる陸海軍の決定的大勝利となり、国威四方に輝煥きかん
惜別 (新字新仮名) / 太宰治(著)
いつかはそれが勃発ぼっぱつするだろう、とそれが気遣わしくもあった。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
事の勃発ぼっぱついたしましたのは、前回のまんじ事件がめでたく落着いたしまして、しばらく間をおいた九月下旬のことでありました。
いよいよ勃発ぼっぱつする形勢の、第三次世界大戦の舞台に、彼X大使は、いかなる重要な役割をもっているのであろうか。
地球要塞 (新字新仮名) / 海野十三(著)
領民のあいだに不平が勃発ぼっぱつし——またそれを煽動せんどうするものもあって、たちまち新占領地の地盤はくつがえされ、ここにも一揆いっきの火、かしこにも一揆の火があがり、全面的に
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
天誅組がいよいよ勃発ぼっぱつしたのは、その年の八月のことでありました。十七日には大和やまと五条の代官鈴木源内を斬って血祭りにし、その二十八日は、いよいよ総勢五百余人で同国高取の城を攻めた日。
大菩薩峠:05 龍神の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
いたって小気味のよい捕物とりもの美談ともいうべきもので、しかも事の勃発ぼっぱついたしましたのは、あの古井戸事件がめでたく落着してからまもなくの
ガチャリと電話機を掛けると、当直はあわただしくホールを見廻した。そこには一大事いちだいじ勃発ぼっぱつとばかりに、一斉いっせいにこっちを向いている夜勤署員の顔とぶっつかった。
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
蜀陣にとらわれているうち、深く孔明の徳になずみ、加うるにこれへ臨む前に恩賞を約されていたので、この騒動が勃発ぼっぱつするや否や、いいつけられてきた通り、八方へ駈け分けて
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
必ずやほかになんらかの大事件がひきつづいて勃発ぼっぱつするにちがいないだろう、という考えがあったものでしたから、万一の場合をおもんばかって
おそらく氏は、その戦争勃発ぼっぱつ一歩前の息づまるような恐怖を、今またおもいだしたからであろう。
三十年後の世界 (新字新仮名) / 海野十三(著)
城下は勿論、世評は挙げて、江戸で勃発ぼっぱつした刃傷事件で持ち切っている。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
前回の七化け騒動がそもそも端を発しましたところは品川でしたが、今回はその反対の両国河岸がし。しかも、事件の勃発ぼっぱつした日がまたえりにえって七月の七日。
カニザワ東京区長は、そう語りながら、ハンカチーフを出して、顔のあせをぬぐった。おそらく氏は、その戦争勃発ぼっぱつ一歩前の息づまるような恐怖きょうふを、今またおもいだしたからであろう。
三十年後の東京 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「非常の勃発ぼっぱつとみえますゆえ」
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)