傳手つて)” の例文
新字:伝手
のち江戸えど元二げんじいたところは、本所南割下水ほんじよみなみわりげすゐんで祿千石ろくせんごくりやうした大御番役おほごばんやく服部式部邸はつとりしきぶていで、傳手つてもとめておな本所林町ほんじよはやしちやう家主いへぬし惣兵衞店そうべゑたな
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
知合から知合を辿たどつて、向柳原の叔母さんのところへ來て、——お前さんに傳手つてがあるちう話を聞いて來たが、錢形の親分さんに逢はせて貰れえ
ハリーがかういふ悲慘な境遇に陷つた時、都合のよい機會と、ある傳手つてとで、バス勳章第三等陸軍少將トマス・ヴァンデラー卿の秘書役の地位を得る事になつた。
待て夜食の支度したくして爰を立出泉州さかひに着し知音ちいんの方を尋ねけるに其知音と云は至つて貧敷まづしく日々人にやとはれかすかなるけふりも立兼ねるものなりしが先爰にかくれて逗留とうりうし能き傳手つて
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
かくしてかの女のところへ傳手つてをもとめて「いかなる人ぞや」と逢ひに來るものがあり、人を介しておくりものをして來るものがあり、そして原稿の註文は殺到する、おもての表札はぬすまれる
不幸ふかう由來もとさとめて、ちヽこひはヽこひしの夜半よはゆめにも、かぬさくらかぜうらまぬひとりずみのねがかたくなり、つヽむにもれ素性すじやうひとしらねばこそ樣々さま/″\傳手つてもとめて、香山かやま令孃ひめくるしく
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
我に難面つれなきも御邊に義理を立つる爲と、心にねたましく思ひ、彼の老女を傳手つてに御邊が事、色々惡樣に言ひなせし事、いかに戀路に迷ひし人の常とは言へ、今更我れながら心の程の怪しまるゝばかり。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
俺よりも確かな傳手つてがあると思つて、先づ不快を催した。
病院の窓 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
ひめおなおもひながら、ふべき傳手つてさらすくなし。
お袋がへそくりでやらしてゐた、この茶店まで立ちぐされになり、俺達二人は長い間食ふや食はずの路頭に迷つた上、かたきが討ちたいばかりに傳手つてを求めて、弟の俺が、お前のところへ奉公に上がつたんだ
枕に付せけるが翌日長庵は早々支度をし麹町を立出吉原さしていそぎけり爰に吉原江戸町二丁目の丁字屋ちやうじや半藏と云る遊女屋いうぢよやは其頃での繁昌はんじやうの家にて貴賤きせん客人まろうどひききらされば此丁字屋方へ賣込うりこまんと傳手つて
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)