はた)” の例文
物事ははたで見るほど心配になるものではなく、どうするかと見ていた梯子の問題は、米友の一存で手もなく片づけてしまいました。
大菩薩峠:17 黒業白業の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
然うしてその小さな眼のうちは、はたの批評を一句も聞き漏らすまいといつもおど/\とふるへてゐた。義男の友達も多勢見に來た。
木乃伊の口紅 (旧字旧仮名) / 田村俊子(著)
世の中にや隨分見え透いた機嫌の取り方をする者もあるが、あんなのは滅多にないよ。はたで見てゐて唾を引つ掛けたくなる。
我等の一団と彼 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
抱え娼妓しょうぎに斯う我儘をされるようでははたへ示しが付かぬ、何うにでもおしつけて花里を身請させねばならぬと申す気が一杯でげすから堪りません。
成程なるほど一家いつかうちに、體の弱い陰氣な人間がゐたら、はたの者は面白くないにきまツてゐる。だが、虚弱きよじやくなのも陰欝いんうつなのも天性てんせいなら仕方がないぢやないか。
青い顔 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
はたから見れば、無論そう見えたに相違なかった。けれど二人は果してそう親密であったか、どうか。
蒲団 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
「何を買ったかなあ、刀? だが、子供では、はたが買わせやしなかったろうが——え、なに、本?」
朱絃舎浜子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
はたから余り厳しく干渉するよりはかえって気まかせにして置く方が薬になりはしまいかと論じた。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「折角だがお任かせ出来ねえね。この向うきずは承知してもはた奴等やつらが承知出来ねえ。可哀相かわいそうと思うんなら早くあの小僧をおろしてやっておくんなさい。つらを見ても胸糞むなくそが悪いから」
難船小僧 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
はたではとうてい解しきれぬような奇言を吐いてから、彼は問題を事務的な方面に転じた。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
家は立派であつたが、その大きな構へのなかに子とただ二人住むことになつた女は、はたの眼からはひどくみじめであつた。そして年と共にそのみじめさは増して行くやうであつた。
続生活の探求 (旧字旧仮名) / 島木健作(著)
貴女が、一身をして、貴女の思い通り、生活なさることを、はたからかれこれ云うことの愚さに気が付きました。が、奥さん、僕は、今おいとまする前に、たった一つ丈お願いがあるのです。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
この話が伝わると、誰が発起ほっきともなく、養生所の新築披露目ひろめをかねて、一つ、希有けう大与力だいよりきの隠退を記念する捕縄供養とりなわくようをやろうではないか——イヤ、やらせようではないか、とはたから騒ぎだした。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「それがさ、はたで考えるほど愉快なものじゃありませんよ」
ふみたば (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
はたで聞いてさへ氣羞かしくなる自惚れを語つたつて何うなる? 社の校正に此の頃妙な男が入つて來たらう? 此の間僕は電車で一緒になつたから
我等の一団と彼 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
はたからあまきびしく干渉かんせふするよりはかへつて気まかせにして置くはうが薬になりはしまいかと論じた。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
男は近寄って女の背をで、髪の毛までも掻き上げてやり、はたの見る眼も親切にいたわります。
大菩薩峠:02 鈴鹿山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
はたでそんなに大騒ぎをしてゐるのを少しも知らないやうにして、つは信仰的エクスタシイが不意に娘の魂を誘つたといふやうにして、かの女は汚い大勢の群の中に雑つて
ある僧の奇蹟 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
まったくはたの眼から見たら、滑稽なほどの子供っぽさ、いたずらに神話の中を経めぐったり、あるいは形相ぎょうそう凄まじい、迷信の物のおびえたりなどして、検事はしだいに夢を換え
潜航艇「鷹の城」 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
と小桶を取ってほうり付けると小鬢こびんあたって血が出る。娘だけにはたが大騒ぎで
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
あの中からお金まで都合して下さるおこころざしは、わたくしなどははたで聞いてさえ涙がこぼれます、それですから、わたくしは途中で自分がつかまって殺されてもいいから
大菩薩峠:06 間の山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
またはたのものも直ぐ駈けつけ参って詫言もしてやりますが、何をいうにも伊之吉へ一心を入れて情を立てる為にあくまで強情をはり、他人ひとの意見を用いませんので憎がられているときでげす。
何をやらにや可かんのか、はたから聞いては一向解らないが、座中の者にはよく解つた。少くとも其の言葉の表してゐる感情だけは解つた。「大いに然り。」とか、やるともとか即座に同意して了ふ。
我等の一団と彼 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
好んでそのイヤな人気者になりたがって、給金がよけい取れるとか、人にチヤホヤされるとかいって納まり返り、またその納まり返った人気を、はたから奪われまいとして血眼ちまなこになっている。
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
後々のち/\はたの娼妓に示しがきかぬ。