中六なかろく)” の例文
縦通りを真直まっすぐに、中六なかろく突切つッきって、左へ——女子学院の塀に添って、あれから、帰宅のみちを、再び中六へ向って、順に引返ひっかえすと、また向うから、容子といい
古狢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
地震ぢしんも、やみらしいので、風上かざかみとはひながら、模樣もやううかと、中六なかろく廣通ひろどほりのいちちか十字街じふじがいると、一度いちどやゝ安心あんしんをしただけに、くちけず、一驚いつきやうきつした。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
つゞいて、「中六なかろく火事くわじですよ。」とんだのは、ふたゝ夜警やけいこゑである。やあ、不可いけない。中六なかろくへば、なが梯子はしごならとゞくほどだ。しか風下かざしも眞下ましたである。わたしたちはだまつてつた。
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ふと中六なかろくとほりの南外堂なんぐわいだう菓子屋くわしやみせの、このところ砂糖氣さたうけもしめり鹽氣しほけもない、からりとして、たゞ箱道具はこだうぐみだれた天井てんじやうに、つゝみがみいと手繰たぐつて、くる/\と𢌞まはりさうに
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
しづかにつてゐるのでは火事くわじとほいよ。」「まあ、さうね。」といふ言葉ことばも、てないのに、「中六なかろく」「中六なかろく」と、ひしめきかはす人々ひと/″\こゑが、その、銀杏いてふしたから車輪しやりんごときしつてた。
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
……うかといつて、どこへもどところもないのである。すこしでもひろい、中六なかろくへでもすかと、すと、ひとをおどろかしたにもない、おとなしいうまで、荷車にぐるまはうあばれながら、四角よつかどひがしく。
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)