不覺ふかく)” の例文
新字:不覚
昨夕ゆうべまでられないのが心配しんぱいになつたが、前後ぜんご不覺ふかくながところのあたりにると、はうなにかの異状いじやうではないかとかんがした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
技法ぎはふ尖鋭せんえい慧敏けいびんさは如何いかほどまでもたふとばれていいはずだが、やたらに相手あひて技法ぎはふ神經しんけいがらして、惡打あくだいかのゝしり、不覺ふかくあやまちをとが
麻雀を語る (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
右兵衞佐うひやうゑのすけ(頼朝)が旗揚はたあげに、草木と共に靡きし關八州くわんはつしう、心ある者は今更とも思はぬに、大場おほばの三郎が早馬はやうまききて、夢かと驚きし平家の殿原とのばらこそ不覺ふかくなれ。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
らじとて令孃ひめるされまじ、さらでもの繼母御前まヽはヽごぜ如何いかにたけりて、どのやうことにまでたちいたるべきか、おもへば思慮しりよあさはかにて、甚之助殿じんのすけどのたのみしは萬々ばん/″\不覺ふかくなりし
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
苦しめ給ふまじ私し關東へ下り申ひらき仕つらん此儀全く稻葉家の不覺ふかくと申ものなればやがて歸京仕つり吉左右きつさう申上奉つらんと申て山住は江戸表へ下向致しけるに所司代しよしだいよりは豫て此旨急使はやうち
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
かぜ習々しふ/\おとてゝれが不覺ふかくあざけ風情ふぜい
なしたる物もあらざれば盜賊たうぞくの業ならず遺趣切ゐしゆぎりならんと思ふ所へ大師河原へ泊りに行し母のおかつは歸り來り夫と見るより死骸しがい取附とりつき前後不覺ふかくさけびしがさて有る可きにあらざれば此おもむきをうつたへ出檢視けんし
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
あやめしが如くまだ生々なま/\しきあぶらういて見ゆればさすがに吉兵衞は愕然ぎよつとして扨ても山賊の住家なりかゝる所へ泊りしこそ不覺ふかくなれと後悔こうくわいすれど今は網裡まうりの魚函中かんちうけものまた詮方せんかたなかりければ如何はせんと再びまくらつきながらも次の間の動靜やうす
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)