上着うはぎ)” の例文
あの子は、十分ばかり前に、箱の中から可愛い薄紅色うすべにいろ上着うはぎを引張り出した。それをひろげると、あの子の顏は、嬉しさに輝いた。
今朝着て來た上着うはぎは久しく使はなかつた奴だから、この本も何時ポケットに入れて持ち歩いたものやら記憶がない。
かめれおん日記 (旧字旧仮名) / 中島敦(著)
上着うはぎ白天鵞絨しろびろうど、眼は柘榴石ざくろいし、それから手袋は桃色繻子じゆす。——お前たちは皆可愛かはいらしい、支那美人にそつくりだ。
動物園 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
浅黄色の上着うはぎで、火夫だといふことだけわかりました。一口ひとくちも口を利かず、たゞそのからだだけで迫つて来る力に、わたくしは、取りひしがれてしまひました。
(新字旧仮名) / 岸田国士(著)
このさい調査ちようさむかつた農商務技師のうしようむぎし三浦宗次郎氏みうらそうじろうし同技手どうぎて西山省吾氏にしやましようごし噴火ふんか犧牲ぎせいになつた。少年讀者しようねんどくしや東京とうきよう上野うへの博物館はくぶつかんをさめてある血染ちぞめの帽子ぼうし上着うはぎとをわすれないようにされたいものである。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
裝飾 衣服の裝飾そうしよくひもひ付け、又は糸にて縫ひ取り、又は繪の具にてりて作りしと思はる。土偶中には上着うはぎの所々に赤きを付けたるも有り、股引に數個の横線 畫きたるも有るなり。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
シヤツはながし、ヅボンしたみじかし、上着うはぎさかないたにほひがする。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
赤き上着うはぎにとり澄ます銀笛吹きの童らよ。
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
ぼくの上着うはぎにや
歌時計:童謡集 (旧字旧仮名) / 水谷まさる(著)
上着うはぎ
当世女装一斑 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
さききてもるかきかれませねばなににてもよしくるまたのみなされてよとにはか足元あしもとおもげになりぬあの此樣こんくるまにおしなさるとかあの此樣こんくるまにと二度にど三度さんどたかかろ點頭うなづきてことばなしれも雪中せつちゆう隨行ずゐかう難儀なんぎをりとてもとむるまゝに言附いひつくるくだんくるまさりとては不似合ふにあひなりにしき上着うはぎにつゞれのはかまつぎあはしたやうなとこゝろ
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
そしてちものもね。——何故つて衣類や上着うはぎや外套やその他色んなものを私たちは作るんですから。
居心地ゐごゝちのいゝ小さな部屋、勢よく燃える爐邊には、圓い卓子テエブル、凭りかゝりの高い、古風な肘掛椅子、そこには未亡人の帽子を冠り、黒い絹の上着うはぎをつけ、モスリンの前掛をした