上人しやうにん)” の例文
さうして、その悪魔なるものは、天主教の伴天連ばてれんか(恐らくは、フランシス上人しやうにん)がはるばる日本へつれて来たのださうである。
煙草と悪魔 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
まくらならべた上人しやうにん姿すがたおぼろげにあかりくらくなつてた、早速さつそく燈心とうしんあかるくすると、上人しやうにん微笑ほゝゑみながらつゞけたのである。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「あゝ、ポリモス上人しやうにんさまかね。えらいお方だ。お祈りばかりしてゐらつしやるから、めつたにお目にかゝれないよ。……どうだか、まあいつてみなさい」
エミリアンの旅 (新字旧仮名) / 豊島与志雄(著)
微笑びせうふくみてみもてゆく、こゝろ大瀧おほだきにあたりて濁世じよくせあかながさんとせし、それ上人しやうにんがためしにもおなじく、戀人こひゞとなみだ文字もじ幾筋いくすぢたきほとばしりにもて、うしなはん心弱こゝろよわ女子をなごならば。
軒もる月 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
京都の空與上人くうよしやうにんをことの外御信心で、上人しやうにんの爲洛北に一の堂を建立こんりふする爲、二千兩の寄進に付きましたが、表沙汰になると、何かと手續きが面倒、そつと勘定奉行に内意を含め
「お上人しやうにん、そんな荒野あれのにも秋が来ますと、虫が鳴きませうな。」
「親鸞さまは、むかしのお上人しやうにんさまぢや、生仏いきぼとけさまぢや。」
さがしもの (新字旧仮名) / 土田耕平(著)
青き上人しやうにんと夜にいの
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
尾張をはり停車場ステーシヨン乗組員のりくみゐん言合いひあはせたやうに、不残のこらずりたので、はこなかにはたゞ上人しやうにんわたし二人ふたりになつた。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
この法師の屍骸しがいの口には、まつ白な蓮華れんげが開いてゐるぞ。さう云へば此処へ来た時から、異香いかうも漂うてはゐた容子ようすぢや。では物狂ひと思うたのは、尊い上人しやうにんでゐらせられたのか。
往生絵巻 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
すると上人しやうにんうなづいて、わし中年ちうねんから仰向あふむけにまくらかぬのがくせで、るにも此儘このまゝではあるけれどもだなか/\えてる、きふ寐着ねつかれないのはお前様まへさま同一おんなしであらう。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
例外として、「奉教人ほうけうにんの死」と「きりしとほろ上人しやうにん伝」とがその中に這入はいる。両方とも、文禄ぶんろく慶長けいちやうの頃、天草あまくさ長崎ながさきで出た日本耶蘇やそ会出版の諸書の文体にならつて創作したものである。
風変りな作品に就いて (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
内記ないき上人しやうにんではございませんか? どうして又このやうな所に——」
六の宮の姫君 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)