三井寺みいでら)” の例文
また、戦国の世にはすべて武人多くして、出家の僧侶にいたるまでも干戈かんかを事としたるは、叡山えいざん三井寺みいでら等の古史に徴して知るべし。
徳育如何 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
もしそうするなら、京からは琵琶湖びわこ舟楫しゅうしゅうと陸路の便とを兼ね備えた上に、背後の敵の三井寺みいでらも眼中に入れる要はないのであった——。
比叡 (新字新仮名) / 横光利一(著)
頭のいただきから、山嵐さんらんをゆする三井寺みいでら大梵鐘だいぼんしょうが、ゴウーン……と余韻よいんを長くひいて湖水のはてへうなりこんでいった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
院々といふのは叡山えいざん三井寺みいでらかのやうな感じがするけれど、それでは京の月といふのに当てはまらぬ。あるいは知恩院ちおんいんあたりの景色でもいふのであらうか。
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
何だか、今夜中に三井寺みいでらを過ぎて、滋賀しがの里まではでも辿たどり着くんだなんて、とても張り切ってたよ。
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
それで、もしも映画のトリックによって一人の男が三井寺みいでらの鐘を引きちぎって軽々と片手でさし上げれば、その男は異常な怪力をもっているように見えるのである。
映画の世界像 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
藤太とうだがね三井寺みいでらおさめて、あとの二品ふたしないえにつたえていつまでもゆたかにらしました。
田原藤太 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
その他「清経」シテ、「三井寺みいでら」ツレ等が四五番あったと思うが、ハッキリ記憶しない。
梅津只円翁伝 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
隅田川・桜川・柏崎かしわざき三井寺みいでら等の十数篇の謡曲を始めとして、近くは駿州のうばヶ池、下野足利しもつけあしかが水使みずしの淵、または仙台の小鶴が池の伝説の如く、子を失った親の悲しみを取扱った民間の文芸ほど
三井寺みいでらから迎えられたお坊さんが行き、次に、観音様をせおっている鞍馬くらま夜叉王やしゃおうがつづき、堅田かただの顔丸の丸彦がうしろから見はりをし、そのあとに、堅田の顔長の長彦と、坂の上の朝臣がならび
長彦と丸彦 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
「玉藻のがあすは三井寺みいでら参詣とうけたまわりました」
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
(延元元年正月、官軍三井寺みいでら攻めに)
さッきから三井寺みいでらおかのふもとに立って、かたずをのんで見つめていた伊那丸いなまると、忍剣にんけん龍太郎りゅうたろうの三人は、その巨影きょえいがありありと目前へ近づいたせつなに
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これを過ぐれば左ににおうみ蒼くして漣漪水色縮緬ちりめんを延べたらんごとく、遠山糢糊もことして水の果ても見えず。左に近く大津の町つらなりて、三井寺みいでら木立に見えかくれす。
東上記 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
しかれども春雨はるさめかさ、暮春に女、卯花うのはなに尼、五月雨さみだれに馬、紅葉もみじに滝、暮秋に牛、雪に燈火ともしびこがらしからす、名所には京、嵯峨さが御室おむろ、大原、比叡ひえい三井寺みいでら、瀬田、須磨、奈良、宇津
俳諧大要 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
聞けば、高倉の宮をいただいて、源氏の老強者ふるつわもの三位頼政さんみよりまさが、渡辺党や、三井寺みいでら法師の一類をかたらって、一門宇治平等院びょうどういんにたてこもって、やがて、都押しと聞いた
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
三井寺みいでらや日は午に逼る若かえで
俳人蕪村 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
将軍家義昭よしあきの船も、二十五日、守山から湖水を渡って、三井寺みいでらの下に着いた。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
およそ戦雲のつばさはどんなのりの山だろうがけてはいない。——ついみねの南、大津の三井寺みいでらは、由来ゆらい、叡山とは何事につけても反目していた。幾世にわたって対峙してきた宗門と宗門だった。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
信玄しんげん建立こんりゅうした恵林寺えりんじのなかに、武田たけだの客分、佐々木承禎ささきじょうてい三井寺みいでらの上福院、大和淡路守やまとあわじのかみの三人がかくれていることをつきとめたので、使者をたてて、落人おちゅうどどもをわたせと、いくたびも談判だんぱんにきた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
三井寺みいでらは、その山門も坊舎も、聯合軍の旌旗せいきにつつまれていた。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
登れば逢坂おうさか、西は三井寺みいでら。また一方の道はやなさきの浜辺へ出る。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その夜は三井寺みいでらぼうに一泊し、あくる日、京都へ向った。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)